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Ios essay
http://www.fragment-group.com/kanbara/ 文学者にとって、言葉はつねに具象である。それは一度きりの、... http://www.fragment-group.com/kanbara/ 文学者にとって、言葉はつねに具象である。それは一度きりの、ある時のある場、そこにおける、ただひとつのある物を示すものである。しかし言葉はつねに、抽象性への堕落に脅かされる。言葉を記号と居直ることほど文学者にとって呪わしいことはない。ともすれば抽象のうちに流れ出てゆく言葉を、抜き差しならない力によって唯一のものにとどめおかねばらない。 文学とは、ある思想を言うとき、つねに具象を要求するあり方である。ある思想は、例えば、ある土地の夏の夕暮れの水音を求める。熱を残した暗い水紋にうつる人の顔だちを求める。思想がつねに、そのような具象とともにあるのが文学である。 抽象性から逃れるために、つねに具象の水準にあるために、文学者は「実感」を信ずる。蒙昧な実感を礼賛するのではない。抽象から逃れるためには抽象を知らねばならない。抽象