エントリーの編集
エントリーの編集は全ユーザーに共通の機能です。
必ずガイドラインを一読の上ご利用ください。
【小説】あじさい荘の怪異(翻案 浅茅が宿) - まゆびらき日記
記事へのコメント0件
- 注目コメント
- 新着コメント
このエントリーにコメントしてみましょう。
注目コメント算出アルゴリズムの一部にLINEヤフー株式会社の「建設的コメント順位付けモデルAPI」を使用しています
- バナー広告なし
- ミュート機能あり
- ダークモード搭載
関連記事
【小説】あじさい荘の怪異(翻案 浅茅が宿) - まゆびらき日記
霧雨の方が濡れるといつか宮奈が言った。彼女は雨が嫌いだった。どんなに弱い雨の日でも、必ず傘をさし... 霧雨の方が濡れるといつか宮奈が言った。彼女は雨が嫌いだった。どんなに弱い雨の日でも、必ず傘をさして歩いたし、本降りの日はしょっちゅう寝込んだ。雨が降ると、窓に落ちる水音を聴きながら、彼女はいかにもしんどそうに布団の中で丸まって、いつまでも出てこなかった。外に出て濡れたわけでもないのに、そういう時の彼女のからだはいつも冷え切っていた。 駅から十数分歩くうちに、勝海のポニーテールに結った明るい茶の髪はじっとりと湿り、薄青のパーカーのフードは雨を吸って重く背に垂れ下がった。フランスでは少しの雨なら皆、傘を差さない。十年の生活でその環境に慣れていたはずなのに、日本では雨がやけに冷たく感じる。 キャリーバッグを引き摺りながら住宅街を更に数分歩くと、目的地が見えてくる。勝海は、目を疑った。小規模な学校のような角張ったシルエットは、確かに自分のかつて住んでいたあのマンションだった。だが、妙に古びている。