サクサク読めて、アプリ限定の機能も多数!
トップへ戻る
TGS2024
natgeo.nikkeibp.co.jp
ウミウシに擬態する新種のゴカイ「ケショウシリス」を名古屋大学大学院などの研究グループが発見した。発見場所は三重、和歌山各県と、ベトナムの海域。サンゴの仲間である「ウミトサカ」に共生しているが、なじむような柄ではなく、むしろ目立つ色や形をしていた。同じ海域にすみ毒を持つミノウミウシに似せて外敵から身を守ることが考えられるという。今後、ケショウシリスの生態や擬態の詳しい理由について研究を続ける。 名古屋大学大学院理学研究科附属臨海実験所の自見直人講師(無脊椎動物系統分類学)の研究グループは、サンゴに生息するゴカイについて研究をしてきた。最初は、三重県鳥羽市にある菅島の漁師から、ウミトサカに「ウミウシのような生きものが付いている」と連絡を受け、譲り受けた。和歌山でもダイビング中のダイバーが見つけた。また、同じ生物をマレーシア、ロシア、フランスの共同研究チームがベトナム海域でダイビング中に発見した
鹿児島県の薩摩半島南方にある海底火山「鬼界カルデラ」は約9000年かけてマグマが蓄積した末に約7300年前の巨大噴火を起こしたことが分かったと、海洋研究開発機構(JAMSTEC)と神戸大学の研究グループが発表した。地球深部探査船で海底下100メートル近く掘削して万年単位の火山活動を調べた結果で、完新世(1万1700年前~現在)で世界最大規模とされる巨大噴火に至るマグマ蓄積の過程が明らかになった。 鬼界カルデラは鹿児島市の南約100キロにあり、東西20キロ程度、南北17キロ程度の楕円(だえん)形。約14万年前と約9万5000年前、そして約7300年前と過去3回巨大噴火を起こしたことが分かっている。(参考記事:「7300年前の鬼界カルデラ噴火、過去1万年で世界最大と判明、鹿児島沖」)
定期的なウオーキングには、腰痛を和らげるだけでなく、再発防止の効果もある。オーストラリアの研究チームによる最新の研究成果だ。(Photograph by Gollhardt & Wieland, laif/Redux) 腰痛は体の不調につながる主要な原因のひとつであり、悩まされている人は世界で6億1900万人にのぼると推定されている。多くの場合、腰痛は周期的に現れる。回復したと思っても、実に70%近くの人は1年以内に再発するという。 7月13日付けで医学誌「The Lancet」に発表された論文は、ウオーキングという簡単で比較的コストのかからない方法で、周期的な腰痛を抑えられることを報告した。被験者のうち、定期的なウオーキングを始めた人は、1年以内およびそれ以降に腰痛が再発する確率が低かった。また、腰痛が再発した人でも、定期的にウオーキングをしていた人は、再発までの平均間隔が長かった。 こ
実際、30代後半から40代前半にかけて悩みや不安を抱える「中年の危機」や、50代後半から60代前半にかけて「壮年後期の危機」を経験する人もいることが、研究で明らかになっている。この2つの年代は、今回の研究で老化が急に進むとされた時期と一致している。 つまり、「急な老化は、私たちが生まれつきもっている生物学的な特性によるものではなく、加齢に伴う心理的な変化や生活習慣の変化が原因になっている可能性もあるのです」とシンクレア氏は言う。 急な老化は防げるのか? これらの分子的な変化の背後に何があるにせよ、「老化の根本的な原因は、すでに特定されている可能性が非常に高いと思います」と、2009年にノーベル化学賞を受賞した構造生物学者のベンカトラマン・ラマクリシュナン氏は言い、老化がもたらす望ましくない影響を防ぐために何をするべきかはよくわかっていると考えている。 シェン氏は、40代や60代に近づいたら
ヨーロッパ最古の戦いで使われた矢じりがめり込んだ頭蓋骨の一部。戦場の遺跡から出土した青銅器時代の矢じりは、古代の戦士たちの出身地を探る手がかりとなった。(Photograph by Volker Minkus) 3000年以上前、現在のドイツ北部にあたる場所の渓谷で、ふたつの軍勢が衝突した。知られている限りヨーロッパで最古、かつ当時としては最大規模だったこの戦いに、どのような人々が参加したのかはよくわかっていない。しかし、2024年9月23日付けで学術誌「Antiquity」に発表された論文によると、古代の戦場から発掘された矢の一部は、遠く離れた中央ヨーロッパ南部で製造されたもので、おそらくはその地域の戦士たちが使ったと考えられるという。 過去に行われてきた研究の中には、戦いにかかわったのは地元住民だけと示唆するものもある。しかし、今回の論文は、一部の戦士は他地域からやってきた人々であり、
高齢者の病気を予防する鍵は運動にあると考え、約140キロのデッドリフトをする病理学教授のマット・ケーバーライン氏。最新の研究により、私たちの体は40代と60代の2回、分子的に大きく老化することが明らかになった。幸い、老化の影響を和らげる方法はある。(PHOTOGRAPH BY DAVID GUTTENFELDER, NAT GEO IMAGE COLLECTION) 私たちはずっと、老化は一定のペースで徐々に進むものと信じていた。しかし、2024年8月14日付けで学術誌「Nature Aging」に米スタンフォード大学の科学者たちが発表した論文で、老化は40代半ばと60代前半に急激に進むことが明らかになった。 皮膚のシワやたるみ、白髪、筋肉痛や関節痛、ウイルスへの感染しやすさなどの老化の兆候は、あるとき突然現れるように見えるが、その理由は、この2つの時期に起こる分子的な変化によって説明でき
紅海にすむワモンダコ(Octopus cyanea)は、魚たちと協力して効率的に狩りをするという論文が発表された。論文の著者が撮影。(Video by Eduardo Sampaio) タコが複数の種の魚をまとめて狩りをしているという驚きの研究結果が発表された。狩りのチームの多くはタコ1匹と2~10匹ほどの複数の種の魚で構成されていたという。論文は、9月23日付けで学術誌「Nature Ecology & Evolution」に発表された。 研究を率いたのは、ポルトガルにあるリスボン大学とドイツ、マックス・プランク動物行動学研究所の博士研究員であるエドゥアルド・サンパイオ氏だ。氏は2018~2019年に紅海で、タコと複数の種の魚たちが繰り広げる次のような行動を観察し、興味をそそられたという。 狩りはうまく行っている、と思っていたら、1匹のアカハタが勝手な行動を始めた。すると、これに気づいた
18世紀、フランシスコ・デ・ゴヤが魔女たちを描いた『呪文』。魔術やオカルトに対する社会の不安が当時の物語や信仰にどう影響を与えていたかが分かる一例だ。(ARTWORK FROM BRIDGEMAN IMAGES) 古代の森をさまよう黒い影。夢に現れる恐ろしい亡霊。魔女は長い間、人間の空想をかきたててきた。今はカリスマ的な存在として描かれることが多いが、かつて魔女は文化を超えて人々に恐怖と不安を与えてきた。世界の5つの魔女の物語から、彼女たちを生んだ社会が抱えていた恐怖や信念をひも解いていこう。(参考記事:「魔女狩りの恐ろしい歴史、不当な嫌疑で殺された女性たち」) 山姥(やまうば、やまんば) 山奥に暮らす恐ろしい老婆 日本の山奥に暮らす山姥は弱々しい老女だ。しかし、それは最初のうちだけ。 突如、角を生やし、ヘビのような髪を振り乱す恐ろしい姿に変身すると、後頭部にあるもう1つの口で捕らえた獲物
地中海食は、世界で最も健康的な食習慣のひとつとして多くの注目を集めている。そして、その評価は十分に正当なものだ。しかし、地中海食のほかにもうひとつ、非常に健康的でありながら、あまり広く知られていない食習慣が存在する。それが沖縄の伝統的な食事だ。 植物性食品をふんだんに使う沖縄食は、抗炎症作用に優れ、抗酸化物質やファイトケミカル(ポリフェノールやカロテノイドなど植物に含まれる物質)を豊富に含んでいる。実のところ、沖縄の伝統的な食事は、世界のほかの地域の食習慣と比べて、長寿とより深く関係している。 沖縄は、100歳以上の人々の割合が世界でも特に高い「ブルーゾーン」と呼ばれる地域のひとつだ。沖縄の食の利点については、地中海食のそれに比べるとさほど多くの研究があるわけではないが、調査が進むにつれて、この食事がいかに健康に役立つかが明らかになりつつある。 たとえば、2023年7月24日付けで学術誌「
上空から見た夜の米国シカゴ。都市部の照明は年々明るくなり、街灯や店の看板の光は家の中にまで浸透している。(PHOTOGRAPH BY JIM RICHARDSON, NAT GEO IMAGE COLLECTION) 人類の歴史から見ればつい最近まで、夜は闇に包まれていた。夜に細かい仕事をするなら、月明かりや焚き火、灯油ランプの光が頼りだった。現在では世界人口の約80%が、明るい屋外照明から家庭内の電灯やディスプレーまで、夜間に高レベルの光を浴びている。この過剰な光害(ひかりがい)が、睡眠障害から乳がんや脳卒中まで、深刻な健康被害をもたらすおそれがあることがわかり始めている。 この問題の全容も、誰が最も影響を受けやすいかも、まだ明らかになっていない。けれども科学者たちは、夜間の人工的な光が野生生物を混乱させるのと同じように、人間の概日リズムも混乱させることを知っている。(参考記事:「夜の照
鳴き鳥のホオアカアメリカムシクイ(Setophaga tigrina)とマミジロアメリカムシクイ(Leiothlypis peregrina)。写真は縄張り争いの最中だが、これらの渡り鳥は旅の途中で複雑な社会的ネットワークをつくっている可能性がある。(PHOTOGRAPH BY ROLF NUSSBAUMER/NATURE PICTURE LIBRARY) 米国では今まさに、何十億羽もの鳥たちが南の越冬地に向かって羽ばたいている。鳥の渡りは毎年恒例の出来事だが、その範囲と規模があまりに大きく、完全に理解するのは難しい。しかしこのたび、渡り鳥の生態をかつてないほどのぞき見られる最新の研究結果が発表された。 8月13日付けで学術誌「米国科学アカデミー紀要(PNAS)」に発表された研究では、米国北東部と五大湖地域にある渡り鳥の中継地5カ所で集めた標識調査の記録50万点以上を分析したところ、異なる
ブリトニー・デイビスさんの愛犬「ゼウス」は、2023年に死ぬまで、世界一背が高い犬としてギネスの世界記録に認定されていた。(Photograph By © Guinness World Records Limited) ブリトニー・デイビスさんは、かねてから大きなイヌを飼いたいと願っていた。生後8週のグレート・デーンを家に迎え入れたとき、その夢がかなったと思ったのだが、話はそこで終わらなかった。 「ゼウス」と名付けられたデイビスさんの愛犬は、巨大なイヌに成長した。4本足で立ったときの肩までの体高が1メートルを超え、後ろ足だけで立つとデイビスさんの背丈をはるかにしのいだ。ついには、「世界一背が高い犬」としてギネスの世界記録に認定され、地元米テキサス州フォートワースの人気者になった。 ところが、ゼウスがやってきてからわずか4年後に、デイビスさん一家は悲しい別れを経験することになる。大きな体は弱
発がん性など健康への影響が懸念される有機フッ素化合物「PFAS(ピーファス)」が全国の河川や地下水などから相次いで検出されており、検出地点付近の住民の不安も高まっている。政府は事態を重視し、環境省を中心に対応策を進めている。同省では現在、PFASに特化した水道水の汚染状況調査を実施中で、専門家会議では水道水の暫定目標値の見直しに向けた議論を始めた。 PFASは人工的に作られた物質で長く身近な製品にも使われてきた。代表的な物質は既に製造と輸入が禁止されているが、自然環境では分解されにくく、過去に廃棄された分が残留している。米国の環境保護局(EPA)が厳しい飲料水基準を設けるなど、欧米では基準厳格化の流れになっている。「安心・安全な水」は国民にとって重要な生活基盤だ。日本でもPFAS汚染状況についての正確な実態把握と客観的なデータに基づく適切な対策が求められている。
9月15日、タイのカオキアオ動物園で、生後2カ月のメスのコビトカバ、ムーデンが飼育員に水をかけられている。ムーデンは最近、インターネット上で旋風を巻き起こしている。(PHOTOGRAPH BY LILLIAN SUWANRUMPHA/AFP VIA GETTY IMAGES) タイの動物園で夏に生まれた「ムーデン」が、インターネット上で旋風を巻き起こしている。ムーデンは「弾むブタ」「豚肉団子」「叉焼」などの意味で、光沢のあるパープルピンク色のぽっちゃりしたコビトカバだ。 コビトカバ(Choeropsis liberiensis)はカバ科の現生種2種の一つだ。もう一方は、科の名前にもなっているおなじみのカバ(Hippopotamus amphibius)だ。 カバとコビトカバは形も色も似ているが、並べてみると、違いはすぐにわかる。 「主な違いは大きさです」とコビトカバを飼育している米ピッツバ
睡眠不足、不眠、眠気、夜勤(交替勤務)、夜間頻尿、睡眠薬、認知症……。 一般向けの講演会では企画側からテーマについて要望をいただくことが多い。上のリストはその一例で、中でも睡眠不足は群を抜いてリクエストが多い。聴講者から事前に質問が送られてくることもあり、その中でも「睡眠不足の悪影響」「睡眠不足の解消法」「短時間睡眠法」などがやはり人気だ。「科学的に証明された短時間睡眠法はありません」と回答して失望を買うこともしばしばだが、せめて睡眠不足を解消するにはどのような眠り方をしなくてはならないかしっかりと勉強して帰宅していただくことにしている。 睡眠不足は英語では「sleep loss」もしくは「sleep debt」と記載されることが多い。後者は日本語では睡眠負債と翻訳され、以前流行語大賞にノミネートされたこともある。負債と表現するのは睡眠不足の悪影響が借金のように蓄積するためである(第9回「
男性型脱毛症は、頭頂部の髪がアンドロゲン(男性ホルモン)に反応することで起こる。しかし、女性型脱毛症については知られていないことが多く、アンドロゲンがどう関係しているのか、または別の何かが関係しているのかもわかっていない。(PHOTOGRAPH BY PETER FINCH, GETTY IMAGES) 脱毛症は命に関わる病気ではないが、人の人生を変えてしまうことはある。髪を失うのは自分自身を失うことにも等しいと思う人は多い。 脱毛症は驚くほど一般的だ。米国脱毛症協会によると、米国人男性の3人に2人が、35歳までに髪が薄くなっていることに気付くという。50歳になると、その割合は85%にまで上昇する。さらに、男性ほど語られはしないものの、女性で薄毛になる人も多く、米国の場合、脱毛症の経験者の約40%が女性だという。 これほど多くの人が経験するというのに、脱毛症についてわかっていることは意外な
2022年の遠征調査中に発見され、後にPristimantis ruidusと同定されたメスガエル2匹のうち1匹。この種が生きた状態で撮影されたのはこれが初めてだ。(PHOTOGRAPH BY JAIME CULEBRAS) 生物学者のフアン・サンチェス・ニビセラ氏率いるチームは2022年、エクアドルのアンデス山脈にあるモレトゥロの森を探検していた。夜、数キロ離れたサンガイ火山が絶え間なく音を立てるなか、研究チームは満月の下で、新種や希少種、行方不明の両生類を探した。 一瞬、火山の音がやみ、月明かりが森の真ん中にある倒木の下を照らし出した。彼らが近づいてみると、その場で識別できない小さなカエルが2匹いた。研究チームは2024年8月13日付けの学術誌「Zoosystematics and Evolution」に論文を発表し、2匹のカエルはPristimantis ruidusという種だと報告
長い間、1日1杯の赤ワインは健康にいいと考えられてきたが、新たな研究により疑問が投げかけられている。専門家によると、赤ワインのどんな恩恵よりも、リスクの方が上回るという。(PHOTOGRAPH BY JBM/VISUM CREATIVE/REDUX) 何千年ものあいだ、人類は酒を飲んできた。長い一日の終わりに友人たちと祝杯をあげたり、ワインやビールを嗜んだりするのは、われわれの文化の一部となっている。しかし実際のところ、アルコールは人間の体にどんな影響を及ぼしているのだろうか。研究からは、適度な量の飲酒でさえ、これまで考えられてきた以上に害があることが明らかになりつつある。 アルコールは、世界保健機関(WHO)傘下の国際がん研究機関(IARC)による分類で「グループ1」(4段階で最も上位)の発がん性物質であり、口、咽頭、喉頭、食道、肝臓、大腸、乳房のがんに関連している。2023年にWHOは
米マイアミのキューバ料理店「ラ・パルマ」では、砂糖をまぶしたチュロスを濃厚なホットチョコレートにつけて食べる。チュロスは古代ペルシャが発祥だという説がある。チュロスのように、世界に広がるうちにさまざまな文化と混ざり合って進化し、変わっていく料理は多い。(Photograph by SCOTT MCINTYRE, The New York Times/Redux) 食べ物の起源を突き止めるのは容易ではないし、論争になりがちな話題だ。ベーグルを例に挙げよう。最初にベーグルが作られたのは1610年のポーランドのクラクフだという説もあれば、17世紀後半のオーストリア、ウィーンが発祥だとする説、さらにはさかのぼって14世紀のドイツで生まれたオブワルザネクではないかとする説もある。(参考記事:「独自の進化を遂げた大人気の朝食パン、ベーグルの知られざる歴史」) ある料理が世界に広がり、進化して名前も変わ
コンマゲネ王国のアンティオコス1世の霊廟でかつて立っていた巨像の頭部は現在、自身の体の前に置かれている。トルコのネムルト山にある遺跡の東側テラスにて。(Yasin Akgul/Getty Images) トルコ東部のネムルト山の頂上には「世界八番目の不思議」がある。もちろん、その候補のひとつということだが、標高2000メートルを超える山の頂にあるのは、古代の王の墓とされる塚(マウンド)を10体の巨大な像が囲む孤高の聖域だ。古代のギリシャとペルシャ両方の遺産を受け継いだ壮大な石の建造物には、その宗教と埋葬の慣習が色濃く表れている。 現在のトルコ南東部の山岳地帯に位置するコンマゲネは、ヘレニズム時代はシリア王国(セレウコス朝)の属州だった。ヘレニズム時代をもたらしたアレクサンドロス大王が紀元前323年に死去すると、マケドニア軍の将軍セレウコス1世ニカトールがこの地域を支配する。(参考記事:「ア
50年生きることもあるイタヤラ(Epinephelus itajara)も、米フロリダ・キーズ諸島で奇妙な円を描いて回転しているところが目撃された。(Photograph By David Doubilet, Nat Geo Image collection) 数カ月にわたる根気強いデータ収集と検査の結果、科学者は米フロリダ沖で魚がぐるぐると回りながら死ぬ原因を突き止めた。有毒な藻類の組み合わせが原因だったのだ。 2023年11月、フロリダ・キーズ諸島の住民が、絶滅危惧種であるノコギリエイ科のスモールトゥース・ソーフィッシュ(Pristis pectinata)などの魚が円を描いて泳ぎ、その後死んでしまうことに気づき始めた。科学者は後に、ブダイの仲間やオオメジロザメ(Carcharhinus leucas)、イタヤラ(Epinephelus itajara)など、80種類以上の魚でこの現象
薬剤師が抗がん剤のドキソルビシンを点滴バッグに注入しているところ。この薬は腫瘍細胞のような急速に分裂する細胞を破壊する有毒な化学物質であるため、薬剤師は防護服を着用し、密閉容器を使って作業を行っている。(PHOTOGRAPH BY COLIN CUTHBERT, SCIENCE PHOTO LIBRARY) 英ウィリアム皇太子の妻キャサリン妃は2024年3月末、がんを患っていることを公表して世界を驚かせた。がんの種類やステージについては明らかにしなかった一方、キャサリン妃は、自身が「予防化学療法」を受けていると言及した。 ケイト・ミドルトンとの呼称でも知られるキャサリン妃は、2024年1月、事前に録画された動画で、当時はがんではないとされていた症状で腹部の手術を受けたと公表した。しかし、その後の検査によってがんが見つかり、医療チームが「予防化学療法(preventative chemoth
大半の金は石英の鉱床から採掘されるが、大きな金塊が具体的にどのように石英の中に形成されるのかは、これまで謎のままだった。(PHOTOGRAPH BY COLIN HAWKINS/GETTY IMAGES) 歴史上、人々はいつも懸命に金を追い求めてきた。しかし今では、金塊を探し出すのはそう難しくない。世界中の金塊の多くは、石英(水晶)の天然鉱脈から見つかるからだ。ただし、そもそも金塊がどのようにして石英の中に閉じ込められたのかという地質学的なプロセスは、謎のまま残されていた。 2024年9月2日付けで学術誌「Nature Geoscience」に発表された新たな研究により、この謎に対する驚くべき、かつ説得力のある一つの解答がもたらされた。その答えとは、電気と地震、それも、たくさんの地震だ。 金塊が石英の中に存在するのは、石英が電気的に奇妙な性質をもつためだ。圧縮されたり、揺らされたりすると、
ナイルの港湾都市だったトロニス=ヘラクレイオンの遺跡で見つかった巨大な像。(Christoph Gerigk. © /Franck Goddio/Hilti Foundation) 海に沈んだ古代の都市は、神話の物語ではない。古代の世界では、実際に多くの沿岸の都市が押し寄せる波に飲まれ、家も街路も神殿もすべて道連れにして、海の底に消えていった。だが、海底に沈んだために誰もかつての都市にたどり着けず、何千年もの間に伝説が渦巻き、いつしか幻と化した。 しかし、20世紀に入ると、海洋学や海洋科学の目覚ましい進歩によって、水中考古学への扉が開かれる。現代の考古学者たちは、音波探知機、ロボット工学、3Dスキャン、水中カメラといった最新のテクノロジーを駆使して、古代の海底遺跡を見つけ、調査している。おかげで、海底遺跡の地図が新たに作成され、遺物が回収され、古代の都市の物語が再び現実となった。ここでは、
汚染された肉、特に鶏肉は、尿路感染症を引き起こす大腸菌を広めるおそれがある。畜産での抗生物質の過剰な使用も問題のひとつだ。(PHOTOGRAPH BY WILLIAM WIDMER, THE NEW YORK TIMES/REDUX) 近年、尿の通り道に起こる感染症(尿路感染症)になる人が増えている。研究によれば、世界ではここ数年、毎年4億人以上が尿路感染症にかかり、20万人以上が死亡している。尿路感染症によって失われた健康な年数(障害調整生命年、DALY)は、1990年から2019年の間に68.9%も増えた。 尿路感染症は、健康な人なら治療をしなくてもそのうちに自然に治るが、高齢者や複数の疾患を抱えている人では、抗生物質での治療が必要だ。しかし、尿路感染症を引き起こす細菌は、一般的な抗生物質への耐性を獲得しつつある。 「尿路感染症は米国の医療システムにとって非常に大きな負担となっていて、
水面に立つ孵化したばかりの蚊。蚊はこのような水のある場所で育ち、多くの病気を媒介し、毎年70万人近い死者を出している。この蚊を根絶できたとしたら、人類には利益となるのだろうか?(Photograph By Ingo Arndt/Nature Picture Library) 米国では今、蚊が大きな話題になっている。8月下旬、米国東部で東部ウマ脳炎ウイルスの人への感染が確認され、米マサチューセッツ州オックスフォード一帯に、夜間の外出を控える勧告が出された。米国立アレルギー感染症研究所の元所長であるアンソニー・ファウチ氏も、ウエストナイルウイルスに感染して入院してニュースになった。いずれも蚊が媒介する致死的な感染症の病原体だ。 蚊が媒介する病気が話題になると、決まって注目されることがある。魔法のように蚊を消し去ることができるとしたら、いったいどうなるのだろう? 生態系や私たちにはどんな影響が生
クレーコートでの試合中、サーブするテニス選手。(PHOTOGRAPH BY WUNDERVISUALS, GETTY IMAGES) 今年もテニスの全米オープンが行われ、観客動員数の最高記録が再び塗り替えられた。11世紀から続くこのスポーツに、2024年も多くの人が感嘆した。(参考記事:「全米オープンだけでも10万個、使用済テニスボールの意外な末路」) 「テニスは人間の力、優雅さ、知性、機知、バランス、スピード、喜び、悲しみ、強い意志を見せてくれます」と神経学者のブライアン・ハインライン氏は語る。ハインライン氏は全米テニス協会の会長で、全米大学体育協会(NCAA)の最高医療責任者だった経歴を持つ。 テニスは見る者をくぎ付けにし、プレーするのも楽しいだけでなく、心身の健康にも良い。 「テニスがこれほど長く続いているのは、あえて仲間との交流を楽しむ『ソーシャルダブルス』から競技性の高いシングル
2024年7月11日、国際宇宙ステーション(ISS)で撮影されたNASA宇宙飛行士のチーム写真。(下から時計回りに)マシュー・ドミニク氏、ジャネット・エップス氏、スニタ・ウィリアムズ氏、マイク・バラット氏、トレイシー・ダイソン氏、バリー・ウィルモア氏。(Photograph by NASA) ボーイング社の新型宇宙船「スターライナー」の技術的な問題により、宇宙飛行士のスニタ・ウィリアムズ氏とバリー・ウィルモア氏は、予定を大幅に超えて国際宇宙ステーション(ISS)に長期滞在することになった。しかし、宇宙に「取り残された」宇宙飛行士は、この2人が初めてではない。また、同じようなことはこれからも起こりうる。 地政学的な理由や自然がもたらすリスクなど、様々な理由で飛行士の宇宙滞在が予定よりも長引くことはたまにある。そして、宇宙飛行士も宇宙機関も、このような事態を想定して準備をしている。 乗って帰る
次のページ
このページを最初にブックマークしてみませんか?
『ナショナルジオグラフィック日本版サイト』の新着エントリーを見る
j次のブックマーク
k前のブックマーク
lあとで読む
eコメント一覧を開く
oページを開く