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おみそ汁
news.yahoo.co.jp/byline/kuriharakiyoshi
商標法には、「記述的商標」は登録できないという規定があります。 3条1項 自己の業務に係る商品又は役務について使用をする商標については、次に掲げる商標を除き、商標登録を受けることができる。(略) 三 その商品の産地、販売地、品質、原材料、効能、用途、形状(略)、生産若しくは使用の方法若しくは時期その他の特徴、数量若しくは価格又はその役務の提供の場所、質、提供の用に供する物、効能、用途、態様、提供の方法若しくは時期その他の特徴、数量若しくは価格を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標 (略) 要するに、商品や役務(サービス)を「そのまんま」記述した商標は登録できないということです。これは考えてみれば当たり前で「北海道産」「美味しい」「オレンジ100%」等の言葉を登録商標として特定の企業が独占して他社が使えないなんて状況はあり得ないですよね。 なお、記述的商標であっても、長年の使用
2月16日付けでアップルによる無効審判の審決取消訴訟の判決文が公開されていました。結果は請求棄却です。無効審判の対象である特許3852854号とは、かつてiPodに使用されていたハードウェア式のクリックホイールに関連する特許であり、2015年9月9日に確定した、アップルが3億円強の損害賠償金を個人発明家に支払うよう命じた侵害訴訟で使用されたものです。 正直、2020年12月にこの特許に対して(2回目の)無効審判が請求されていたことすら知りませんでした。侵害訴訟の判決が確定してからだいぶ時間が経っていますし、この特許も2018年1月6日に存続期間満了により権利消滅しているからです(なお、分割出願もすべて権利消滅または拒絶査定となっています)。 一事不再理の規定により、一度無効審判が確定した特許権について、同じ請求人が同じ理由・証拠に基づいて再度無効審判を請求することはできませんが、別の理由・
ツイッターアカウントの”商標審決”経由で知った異議申立の決定に特許庁の興味深い判断がありました。問題の商標は、”macrevive”(登録6468806号)、指定商品は「未記録のハードディスク」等、権利者は深川市海貝利科技有限公司という中国企業、登録日は2021年11月10日です。実際の使用例を調べると、MacBookの換装用SSDに使用されています。古いMacBookをSSDの容量増と高速化で生き返らせる(revive)というイメージを狙っているのだと思います。 当然予測されるように、この登録に対して米アップルが異議申立を請求していました。理由は、商標法4条1項15号(他社の商品との混同)です。意外にもアップルは9類ではMACを商標登録できておらず(もちろん、MACBOOK等では登録できています)、また、仮に登録されていても”MAC”と”macrevive”が類似するかは微妙なのでこうす
「トム ブラウン、スリーストライプスの商標を巡る訴訟でアディダスに勝訴」という記事を読みました。トムブラウン(Thom Browne)とはお笑い芸人ではなくニューヨーク発の高級ブランドです(靴下が2万円くらいするらしいです)。アディダスがこのトムブラウンに対して、有名なスリーストライプスの商標権の侵害訴訟を提起したが陪審員が侵害はないと評決したという話です(まだ一審なので今後どうなるかはわかりません)。 トムブラウンとアディダスは全然似てない(そもそも商品ジャンルが違う)とお考えの方もいると思いますが、訴状から引用したタイトル画像を見ると、トムブラウンがスポーツウェア分野にも進出し、4本線、あるいは、トリコロールの3本線を商標として使用し始めたことをアディダスが問題にしたわけです。気持ちはわからないことはないですが、それでも、この訴訟の陪審員と同様に、私個人としても商標権侵害とするのはちょ
商標法4条1項8号(他人の氏名等を含む商標はその他人の承諾がない限り登録しない)に関連して、有名人の氏名(本名)を含む商標登録について調べていたところ、ちょっと興味深い事例を見付けたので、本記事でご紹介します(4条1項8号に関する記事は別途書きます)。 問題の商標は「棋士・藤井聡太の将棋トレーニング」(登録6286656号)と「棋士・藤井聡太の将トレ」(登録6286657号)です。出願人は公益社団法人日本将棋連盟なので、勝手出願ではなく、藤井聡太棋士の承諾のもとに出願されているのは明らかですが、特許庁の審査としては、規定どおりに、他人(藤井聡太棋士)の承諾を示す書類を提出せよとの拒絶理由通知が出されています。この拒絶理由通知に以下のような補足が書かれていました。 【補足】 承諾書を提出する場合に、承諾者の住所は、居所の記載でも認められます。 特許庁に提出した出願関連書類は、原則誰でも閲覧可
昨年の5月に「”童貞を殺すセーター”は商標登録され得るか」という記事を書きました。セクシーなセーターを表わすネットミームとして定着している言葉をある企業が商標登録出願したという話です。 先日チェックしたら、上記記事での予測どおり、昨年の12月23日付けで商標法3条1項6号(需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができない商標)を根拠に拒絶理由通知が出ていました(まだ出願人からの応答はありません)。記事中では審査官へのヒントとして情報提供(刊行物等提出)を行うこともできると書きましたが、そうするまでもなく、審査官は拒絶理由を出したことになります。一般論ですが、3条1項6号への反論は、「需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識している」ことを立証しなければいけないのでよほど周知商標化していない限り困難です。 拒絶理由通知には以下のように淡々と書かれています
個人的には「メタバース」の話題を聞いても以前ほどときめかなくなってしまいました。現在のフォームファクターのHMDが必要とされる限り、キャズムは越えないのではと思ったりもします。とは言え、VTuberのように仮想空間の中で現実世界とは違う自分を表現する行為が広がりつつある中、長い目で見れば「メタバース的」なトレンドは続いていくものとも思います。 さて、昨年の12月にJASRACが「メタバースでの音楽利用について」というリリースを出しています。メタバースで行うバーチャルライブなどでの音楽利用についての問い合わせが増えていることに応えたとのことです。 基本的な考え方としては、「メタバース」だから何か特別な要素があるというわけではなく、通常のネット上でのストリーミング配信における音楽利用と同じであり、それに準じた著作権許諾の処理と利用料金の支払いが必要ということになります。 JASRACのリリース
「”海賊版”賠償額の上乗せを 著作権法改正案、来年提出へ 文化審」、「著作権侵害の賠償額上乗せ 文化審報告素案、法改正へ」というニュースがありました。いずれも「漫画村」等に代表される大規模な著作権侵害において、侵害者のやり得(損害賠償金を払っても儲けが出ている状態)を避けるために、著作権法の損害賠償の算定規定を改正する予定であるというお話です。 上記記事だけだと具体的な内容はよくわかりませんが、文化庁のサイトに載っている元資料の17ページ目から23ページ目に書かれています。 現在の著作権法における損害額の算定規定(114条)は大雑把に言うと以下のようになっています。 1項:個数×本来なら権利者が得られていた利益(ただし、権利者の販売能力の範囲内) 2項:侵害者が得ている利益(推定) 3項:個数×ライセンス料相当額 これを、1項と3項を併せて請求できるようにする(今までは併せて請求できるかど
先日書いた「”鬼滅の刃”便乗グッズ販売会社社長、不正競争防止法違反で起訴、商標権侵害はどうなのか」という記事で触れた、炭治郎の衣装の柄の市松模様の商標登録出願(商願2020-078058)ですが、集英社側の主張が認められず、9月24日付けで拒絶査定が出ていました。 昨年書いた記事「”鬼滅の刃”由来の地模様は商標登録されるか?」でも書いたように、一般に、地模様と認識される商標登録出願に対しては、「需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができない商標」(商標法3条1項6号)の拒絶理由が通知されることが、特許庁の審査基準に明記されています。 この昨年の記事でも書いたように、アパレル・ブランドのポール・スチュアートは、自社のスーツ等で使用されている地模様について、十分な周知性を獲得しているので消費者は単なる地模様として認識することはないと不服審判で主張し、無事登録にこぎつけ
出典:特許6518878号公報 理化学研究所に所属する研究者の方によるこのようなツイートがありました。 以下、このツイートからつながる一連のツイートをそのまま引用します。 この度、理研の我々の研究室で共同研究の名の下に開発されたRPE作成法の特許について、理研、ヘリオスらを相手に経済産業大臣に対して裁定を請求しました(事件番号:2021年裁定請求第1号)。特許法93条2項に基づいた、初の「公共の利益のための通常実施権」の実施を認める裁定請求です。 我々を含むグループが世界初のiPS細胞由来RPE細胞の移植に成功してから8年近く経ちます。その間治験が行われないまま特許の独占交渉権を持つ株式会社ヘリオスに対して何度も協議を求めましたが一切応じませんでした。そのため、やむを得ず、公共の利益のために裁定を請求するに至りました。 産学連携の共同研究の結果生じた発明の場合、公的研究機関が企業に対して安
「林家木久扇が”木久蔵ラーメン”で訴えられた! 4000万超の損害賠償請求に徹底抗戦」というニュースがありました。 「林家木久蔵ラーメン」を製造販売する福岡の食品会社が、木久扇の事務所を相手取り、約4200万円の損害賠償請求訴訟を起こした。 訴状によると同社は2005年、事務所と1食5円の対価支払い契約を締結。今年になり商標権の期限切れが判明したため、対価支払いの停止を求めた。ところが事務所から一方的に契約解除を通告され、出荷停止や在庫処分などの損害を受けたという。 ということだそうです。 問題となった登録商標は「林家木久蔵」(4867275号)と思われます(「木久蔵」を含む登録商標で最近に権利抹消になったものはこれしかありません)。権利者は、林家木久扇(当時、林家木久蔵)さんのマネジメント事務所です。ラーメンやスープ等の飲食料品類を幅広くカバーしています。2005年5月に登録されましたが
Zoomと言えば多くの人が米国のビデオ会議サービス事業者(Zoom Video Communications, Inc.)を思い浮かべるでしょう。しかし、ミュージシャンや音楽が趣味の人にとってはZoomというブランドはエフェクターやレコーダーなどの音楽用電子機器メーカー(株式会社ズーム)のブランドとして長きにわたり有名でした(私も結構な数の同社製品を所有しています)。ちょっとややこしいので、以下、前者をビデオ会議のZoom、後者を音楽機器のZoomと呼ぶことにします。 音楽機器のZoomは1983年創業で、ビデオ会議のZoomよりもはるかに歴史が長いです。両社の事業分野はけっこうかぶっているので、ビデオ会議のZoomが日本で有名になり始めた頃、結構ややこしいことになるなと思っていました。実際、昨年には、ビデオ会議のZoomと間違えられて音楽機器のZoomの株価が高騰するといった事件がありま
#JASRACの中の人と話した結果、正確には著作権の「復活」ではない(もともと権利としては存続していた)ので「管理再開」であるとの指摘を受けました。しかし、実質的には「復活」に近いイメージなので、タイトルはカッコ付けとすることに致しました。なお、著作権法の規定では権利期間満了により消滅していた著作権が後で復活することはありません(ベルヌ条約の縛りです)。 ### ジャズ・スタンダードと呼ばれる、ジャズの演奏において頻繁に使用される楽曲群があります。その中でも古い曲(正確に言えば、作曲家が昔に亡くなった曲)は、作曲家の死後50年(または、延長後の70年)を経過しているため、戦時加算を考慮してもパブリックドメイン(著作権保護期間満了)(以下、PD)となっています。 作品がPDになっている有名なジャズ・スタンダード作曲家と言えば、ジェローム・カーン、ビクター・ヤング等がいますが、代表的なのはジョ
今年の3月に、いくつかの有名YouTubeチャンネル名が関係ない第三者によって商標登録出願されたケースが弁理士界隈でちょっと話題になりました。この中の1つの「くまクッキング」の出願が8月20日付で登録査定となってしまいました。登録料が納付されればこのまま登録になってしまいます。指定役務は41類の「技芸・スポーツ又は知識の教授、セミナーの企画・運営又は開催、電子出版物の提供,教育・文化・娯楽・スポーツ用ビデオの制作」等です。 この出願には刊行物等提出(情報提供)がされています。内容はウェブからでは見られないですが、4条1項10号(未登録周知商標と類似・同一)により拒絶にすべきという主張が中心になっているものと思われます。しかし、審査官はそれにもかかわらず、拒絶理由通知を行うことなく登録査定を出しました(情報提供はあくまでも参考情報であり審査官はそれに拘束されません)。おそらくは、「くまクッキ
今年の4月に「自作の曲を演奏できなかった作曲家、JASRACに敗訴」というニュースの解説記事を書いています。「(シンガーソングライターののぶよしじゅんこさんが)東京・八王子市にあったライブハウス"X.Y.Z.→A"でライブを開催するため、自分で作詞・作曲したオリジナル曲を含む12の楽曲の利用をJASRACに申し込んだ。 しかし、"X.Y.Z.→A"との間で、著作物の使用料相当額の清算ができていないとして、JASRACに利用申し込みの受付を拒否された。のぶよしさんは2018年、ライブが開催できず、精神的苦痛を受けたとして、約220万円の支払いをもとめて提訴した」という裁判でJASRACが勝訴したという話です。その後、控訴したという話は聞きませんので、判決としては確定したものと思います(修正:ご本人のfacebookによれば控訴されたようです)。 当時、裁判所のサイトに判決文が載らなかったので
根強いファンがいるラーメン二郎、正規ののれん分け店とは別に、さまざまな類似店(インスパイア系)があるのは周知かと思います。インスパイア系の店には二郎を多少連想させはするものの独自のブランドを確立しているものもあれば、一線を越えて本家二郎との誤認混同を招きかねないようなものがあります。 後者の例とも言える宅配専門ラーメン店「宅二郎」と本家二郎との争いについて、昨年末に記事を書いています。 現在は、「宅二郎」の権利者はラーメン宅配の店名を変更(なぜか、おにぎりの宅配についてのみ使用)していますので、両社の争いは一応解決しているのですが、この争いの過程においてラーメン二郎側が「宅二郎」の商標登録(6280422号)に対して請求した異議申立の決定が5月に出ていましたので、ここでご紹介します。 異議申立の理由はいくつか挙げられていますが、ポイントとなるのは商標法4条1項10号(周知商標と類似)、また
ちょっと前になりますが、ゲームアプリ「白猫プロジェクト」による特許権侵害で任天堂がコロプラを訴えていた訴訟が和解で決着しました(参照ニュース)。コロプラのプレスリリースには、「法令規則上の義務による開示を除き、本件訴訟に係るその他の和解条件については、秘密保持義務により公表できません」と書いてありますが、IR情報の方には「当社が任天堂に対して今後のライセンスを含めた本件訴訟の和解金として総額 33 億円を支払い、任天堂が 本件訴訟の訴えを取り下げることを内容としております」と書いてありますので、33億円の一括支払いで決着したのは確かでしょう。和解条件にコロプラの特許の任天堂へのクロスライセンスが入っているかどうかが気になりますが、特許のライセンス(通常実施権)は通常登録(登記)されることはないので外部からは知りようがありません。 この訴訟で争点になった特許については、以下の過去記事で解説し
全体的にはあまり評判が芳しくなかった五輪開会式において、高い評価を得た演し物としては、ドローンによる五輪エンブレムの空中ディスプレイがあったでしょう。SNSで「日本の技術力すげー」と書いている人もいました(私も一瞬そう思いました)が、あれは、米インテルが一般向けに提供しているサービスであり、金と画像データだけ渡せばやってくれるもので、平昌五輪やスーパーボウル等でも既に使用されており、「日本の技術力」はあまり関係ありませんでした。 さて、このような照明を備えた多数のドローンを制御することで実現するライトショー関連の特許について調べてみました。容易に予測できるようにインテルは最近になりこの分野で多くの特許を出願しています(別記事でご紹介しようと思います)が、その審査経過情報を見ると、「ドローンを使ったライトショー」のアイデアをほぼそのままで権利化できている基本特許に行き当たります。 それが、意
「ルイ・ヴィトン社、日本の市松模様を商標権侵害として訴え敗訴→”もともと市松模様から作られたのに”ヴィトン社の世代交代が原因?」なるtogetter記事を読みました。 「商標権侵害として訴えて敗訴」の部分は正確ではなく、ルイ・ヴィトンの警告書によりウェブ販売サイトから商品を削除せざるを得なくなった神戸珠数店という企業が、商標権侵害の判定を特許庁に請求し、4月14日に、特許庁は侵害がない(問題の商品は商標権の効力の範囲に属さない)という結論を出したというのが話の流れです。裁判所において訴訟が行なわれたわけではありません。 ここで言う「判定」とは特許庁が特許や商標の権利範囲についての判断を示す制度であり、法律的な意味を持った言葉です。判定の結果は裁判所を拘束するわけではないですが、専門家の意見として重視されます。 商標権や特許権の侵害の警告書を受けた場合の対抗措置には、非侵害の確認訴訟を提起す
「バンクシーの商標権認めず ”正体不明”あだに―EU機関」というニュースがありました。 欧州知的財産庁(EUIPO)に登録されていたバンクシーの「花束を投げる人」(タイトル画像参照)(Flower Thrower, Flower Bomber)のイラストの登録商標が第三者からの無効審判により無効になったという話です。問題の商標は012575155号、権利者はPest Control Office Ltd(という名前の会社)です(実質的にバンクシーの版権管理会社と考えてよいでしょう)。区分は、2(塗料関連)、9(コンピューター関連)、16(印刷物)、18(かばん類)、19(建築材料)、24(織物)、25(衣類)、27(絨毯)、28(玩具)、41(教育娯楽サービス)、42(デジタルサービス)と広範に指定されています。無効審判の請求人は、Full Colour Black Ltdというロンドンの
前澤友作氏が「お金配りおじさん」を商標登録出願した件については過去記事で触れました。その出願が最近になり公開されました(出願から公開までは数週間程度のタイムラグがあり、さらに特許情報プラットフォームで検索可能になるまでにもタイムラグがあります)。「お金配りおじさん」を出願するのはご本人の自由ですが、指定商品・役務を何にしたのかがちょっと気になっていました。 出願は、商願2020-079359と商願2020-81245の2件あります。前者の指定役務は35類(広告、真マーケティング関係)と36類(金融サービス関係)、後者の指定商品は25類(衣服関連)です。前者の出願日が2020年6月26日、後者の出願日が2020年7月1日なので、後で思いついて衣服関連を追加したのでしょう。 上記リンク先を見ればわかりますが、結構な数の商品・役務が指定されています(日本の商標制度では多めに商品・役務を指定してお
先日、記事を書いた、リツイートが著作者人格権を侵害し得るということが最高裁で確定した件ですが、事案が比較的複雑で一般メディアも完全に説明しきれていない感があり、かつ、私も(知財高裁判決と最高裁判決で)記事を分けて書いてしまったため、世間に多少の誤解が見られるようです(たとえば、「リツイートされるのがいやならツイッター使うな」というのは状況をまったく理解していない意見です)。 わかりやすくするために、この記事1本で重要ポイントだけをまとめてみました。 関係者 職業写真家A:ウェブサイトでサンプルを公開して写真を売っています。この方はツイッターユーザーではありません。ブログ(直リンは貼りません)を見るとわかりますが、著作権には大変厳しい方のようでこれ以外にも数多くの侵害訴訟を提起しています。 ツイート者B:職業写真家Aのサンプル写真を勝手に使ってツイートをしたユーザーです(実際には複数います)
「100日後に死ぬワニ」、自分も最初から見ていましたが、こんなに話題になるとは思いませんでした。死というものを考えさせてくれる深い作品だったと思っています。 連載が終わってすぐ、グッズ展開、書籍化、映画化といったビジネス系の話が出てきたので「電通案件」という噂(本当に電通が絡んでいるかどうかは真偽不明)が立ち、反感を持ったネット民もいるようです。しかし、注目度が高まったキャラクターでビジネスすること自体は問題があるとは思えません(むしろ、このように注目度が高い作品を生み出したクリエイターにはそれなりの見返りがあって当然です)。しかし、連載終了(=ワニの死)直後に、間をおかず商売の話が始まってしまったことへの批判はあってもしょうがないでしょう。また、私見ではありますが、この連載のポイントは何の変哲もない日常とクライマックスのない死をみんなで見守るという、映画や連載マンガではできない表現形態だ
昨年末の紅白で公開された「AI美空ひばり」が賛否両論となっています。山下達郎さんは「冒涜」と切り捨てています。素晴らしい技術ではあるものの違和感が残り「不気味の谷」を完全に超えていないのでアウトという考え方もありますし、仮に今後CGと音声合成技術が進化して本人の実演とまったく区別がつかない(いわば、「壁なしチューリングテスト」に合格した)状況でも、故人の実演の勝手な再現はアウトという考え方もあるでしょう。さらに、歌唱だけならまだしも「おひさしぶりです...」と勝手に「故人」にあいさつさせてしまってよいのかという問題もあります(たとえば、あいさつだけでなく、もっと微妙な政治的発言を「故人」にさせてしまったらどうなるのでしょうか?)。 今回のケースは、遺族の承諾の下に行なっているとのことなので、いずれにせよ法律的に禁止するのは困難と思います(もちろん、ファンとして「冒涜なのでやめて欲しい」と意
AIテクノロジーの進化により、あたかも生きているような会話や動作を行なえる人形が増えていくでしょう。それ自体は楽しいことですが、あまりにものめり込みすぎることで精神的な問題を発生するケースも増えそうです。そのような問題を解決するための特許をIBMが取得しました(先に書いておきますがそれほどすごい話ではないので、小ネタとしてお楽しみください)。 特許番号は、US10441892号、発明の名称は"Pseudo-sentient doll override system, method, and recording medium for pseudo-sentient doll override"(疑似意識を持つ人形のオーバライドのためのシステム、方法、プログラム記憶媒体)、登録日は2019年10月15日、出願日は2016年7月28日です。 背景技術にはおおよそ以下のような内容が書かれています。
「『UCCミルクコーヒー』の“色彩”が商標登録。食品業界初」というニュースがありました。 登録番号は6201646号です(タイトル画像参照)。自動販売機での購入というシナリオを考えると、商品名をよく確認せずに缶の色合いが似た偽物を買ってしまう可能性は高そうなので、色(の組み合わせ)のみで商標登録して他社の摸倣を排除することには大きな意義があるでしょう。 色彩のみの商標登録では、使用による識別性(セカンダリミーニング)、すなわち、ほとんどの消費者が「あの色はあの商品」と思うくらいの認知度を獲得していることが求められます。UCCの缶コーヒーの色合いはこのような認知度を獲得していることが特許庁に認められたことになります。これには私も同意します。 缶コーヒーの色合いと言えば、サントリーがBOSSレインボーマウンテンブレンドの色(下図参照)を出願しており、現在、まさに認知度の立証を行なう段階です。個
「“無印良品“商標訴訟で本家・良品計画が中国企業に敗訴確定。賠償金1000万円支払い命じる判決」というニュースがありました。 無印良品を展開する良品計画(東京)が、中国で現地企業と「無印良品」の商標権を巡って争っている問題で、二審の北京市高級人民法院(日本の高裁に相当)は、良品計画の訴えを退け、中国で無印良品の商標権を保有する「北京棉田紡績品有限公司」に賠償金など約1000万円を支払うよう命じる判決を下した。 ということです。この事件については、過去にちょっとだけ書きました(「中国企業が“無印良品”商標にしたことをやり返したらどうなるか」)。中国企業が、日本の周知商標を(まだ中国では有名でないことをよいことに)中国で抜け駆け出願し、登録、本家に権利行使というよくあるパターンです。この過去記事を書いたタイミング(2018年12月)では、一審敗訴で良品計画が控訴するという状況だったのですが、今
ツイッター等で「JASRACのせいで町から音楽が消えた」という意見が聞かれることがあります(個別ツイートのリンクを書くとコメントスクラムで迷惑がかかりそうなのでやめておきます)。そもそも、本当に「町から音楽が消えている」でしょうか? 東京在住の私の感覚ではとてもそうは思えません。多くの人がイヤホン/ヘッドホンを着けて自分の好きな音楽を楽しんでいます。町には数多くのライブハウスがあります(統計データ上もライブ公演の数は順調に伸びているようです)。居酒屋に行けば(おそらくは有線放送により)センスの良い古いジャズがかかっていることが多いです。 「町から」と言っているのでストリート・ミュージシャンのことを言っているのでしょうか?確かに路上ライブの数は減ったような気もします。ただ、JASRACの支払を理由に路上ライブをやめたという話は寡聞にして知りません(そもそも、非営利、無料、無報酬の演奏なので演
#特許の内容なので有料記事にしようと思いましたが、あまりたいした特許ではなかったので通常記事として公開することにしました。 iPhone(というよりもハイエンドスマホ全般)が高額化する中で(特に米国における)盗難のリスクが増しています。これに対抗できるアイデアをアップルが特許化していました。2019年3月5日に登録された米国特許10223553号です。発明の名称は、"Wireless device security system"(無線デバイスのセキュリティ・システム)です。 この特許の話、元々はPatently Appleの記事で知ったのですが、なぜか当該記事に載っている番号は上記特許の分割出願の公開番号(未登録)になっています。本記事で上に書いた番号が正しいです。 この発明のアイデアはシンプルで、電子デバイスの位置を測定し、セキュリティ・エリア(典型的はApple Store店内)から
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