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雑学
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カテゴリー:感染症とCOVID-19 (2023年) 2023.9.12更新 第9波のCOVID-19流行が収まる気配がありません。今は感染者数も死者数も把握されていませんので、受診した患者数の記録で推測するしかありませんが、モデルナのサイトで公表されるデータに基づけば、現在10万人/日を超える患者数で推移していることがわかります(図1)。ちなみに、本来夏には収束するはずの季節性インフルエンザが今年は下がり切らず、そのまま上昇に転じています。 図1. COVID-19患者数と季節性インフルエンザ患者数の推移(モデルナジャパン「新型コロナ・季節性インフルエンザ リアルタイム流行・疫学情報」より転載). COVIDとインフルエンザで単位(縦軸)が異なることに注意. とはいえ、現在はたとえ症状があったとしても自主的な簡易抗原検査で陰性であれば受診しない人が多いですし、受診しても有料の検査を避ける
カテゴリー:その他の環境問題 はじめに 日本は福島原発事故跡から発生する放射能汚染水の処理水(ALPS処理水)の海洋放出を開始しましたが、この前後において、海外のメディアが盛んに関連記事を配信しています。それらの中には海洋放出に対する海外の科学者の批判や懸念も含まれていますが、日本のマスコミはほとんど取り上げません。中国の禁輸措置も含めた政治的な反発や嫌がらせが、テレビなどで盛んに報道されているのとは対照的です。 このブログ記事では、ナショナルジオグラフィックの記事 [1] とBBCニュースの報道 [2] を取り上げながら、主として海外の科学者の反応を紹介したいと思います。ちなみに、海外メディアで、日本政府が好んで称するALPS処理水をそのまま呼んでいるところはどこにもなく、処理された核廃水(treated nuclear wastewater)、福島廃水(Fukushima waste
2023.8.30更新 カテゴリー:その他の環境問題 カテゴリー:社会・政治・時事問題 はじめに 日本政府と東京電力は、8月24日、福島第一原発事故跡の燃料デブリから生じる放射能汚染水について、その処理水(ALPS処理水)の海洋放出を開始しました。処理水放出が実施されれば、福島および周辺の海産物のブランドイメージを悪化させることが当初から想定されてきたわけですが、予想どおりというか、早くも中国、香港などの禁輸措置と価格低下などの動きが出ているようです。 中国からの嫌がらせの電話、謂れのない噂(いわゆる風評)や暴力的抗議活動 [1] などは論外ですが、処理水放出に伴うイメージ悪化による周辺国の対応と価格低下は当然予想されたことであり、早速これを全面的に「風評被害」と言い換えて責任転嫁する政府の姿勢もいかがなものかと思います。 中国は、政治的行き詰まりを海外との取引措置に替えて凌ぐというのは常
カテゴリー:感染症とCOVID-19(2023年) はじめに COVID-19パンデミックでは、日本は流行波が襲来する度に健康被害と犠牲を大きくしてきたのは周知の事実です(図1)。特にオミクロン波が訪れて以降、感染者数が爆増し、第8波で死者数は最多となりました。これに対して、COVID-19は致死率が下がっているという錯視効果(→コロナ被害の認知的錯覚による誤解)で被害の実態を矮小化する意見や、「死んでいるのは高齢者」「寿命に近い人が後押しされて死んだだけ」という、言わば命の差別的論調も枚挙にいとまがありません。 これらはいずれも、COVID-19がこれまでもたらした、これから及ぼす可能性のある社会への悪影響とその対策を考える上では何の意味もない、むしろ害になる意見です。いまは、急性パンデミックのみならず、COVID-19のより本質であるこれからの社会の集団的障害を考えることが急務なのです
今日(5月8日)、COVID-19の感染症法上の分類が2類相当から5類に引き下げられました。5類になると政府や行政による介入措置が一切なくなります。言い換えれば、委ねられていた政府の責任がなくなるわけです。対策本部も解散されますし、感染状況に関する統計上の追跡もなくなります。 つまり簡単に言えば、5類への引き下げは、COVID感染に関する政府・行政の責任をなくし、疫学・感染情報を遮断するということになります。昨日、今日の厚生労働省のツイートは、「国民の皆様の主体的な選択を尊重し、個人や事業者の判断が基本になります」と言い換えながら、「われ関知せず」と自らの責任放棄を堂々と宣言しています。 明日から5類感染症になります。 新型コロナが5類感染症になると、感染対策はどう変わる? マスク着用を含む感染対策について、法律に基づき行政が様々な要請・関与をしていく仕組みでしたが、国民の皆様の主体的な選
カテゴリー:社会・政治・時事問題 2023.02.14更新 はじめに 昨年末のイェール大学経済学部の助教授*、成田悠輔氏による「高齢者は集団自決」発言は、世間を騒がせてきました。優生思想にもつながりかねないこの発言は、本人からすれば比喩的なつもりだったとは言え、大いに物議を醸しており、否定的な意見が多く見られます。その一つとして、ジャーナリスト窪田順生氏は、成田氏の発言を批判的に論述しています [1]。 そしてNew York Times(NYT)は、成田氏の集団自決発言を記事にしました [2]。記事の見出しは「イェール大学教授が日本の高齢者に集団自決を勧めたーその意味するところは?」であり、 説明書きとしてとして 「成田氏は、主に日本の年齢階層を見直そうとする動きが活発化していることを指摘したのだという。しかし、彼はこの国の最もホットなボタンを押したのだ」というのがあります(下図)。記事
カテゴリー:感染症とCOVID-19(2023年) 日本で最初のCOVID-19感染者が確認されたのは2020年1月15日です。それからまる3年が経ちました。そして2年前の2月13日に最初の死亡者が出ています。当時のブログを振り返ってみると、国内で千人の感染者が確認されたと記していますが(→国内感染者1,000人を突破)、今から考えればこの数字自体かわいいものです。3年も経って、1日当たりの犠牲者数が最多になろうとは誰が予想したでしょうか。第8波全体としても過去最悪の被害状況になろうとしています。 図1に示すように、ここへきてなぜコロナ死者数が最多になるのか、それは偏に感染者の爆発的拡大によるものです。いまのCOVID-19の致死率は、第1波の約4%から1/40に下がっています。それにもかかわらず死者数が最多になるということは、致死率の低下をはるかに上回るだけの感染者の爆発的増加があるとい
カテゴリー:感染症とCOVID-19(2023年) 2023年を迎えました。新春早々には明るい未来について語りたいものですが、やはり気になるのはパンデミックです。1年前には「2022年を迎えてーパンデミック考」を記しましたが、ここでまたパンデミックについて簡単に考えみたいと思います。昨年の11月には「パンデミックの行方」について書いています。 思えば、1年前の全国の新規COVID-19陽性者は500人台であり、デルタ波以降の急速な減衰により、世の中には「コロナ終わった感」が蔓延していた時期でもあったように思います。しかし、その少し前からSARS-CoV-2の組換え体であるオミクロン変異体がヒタヒタと忍び寄っており、事実年を明けてから爆発的な感染拡大(第6波)となったことは記憶に新しいところです。 昨年夏にはBA.5変異体による第7波が襲来し、第6波を上回る被害(死者数最多更新)を出しました
日本はCOVID-19流行で世界各国とは異なる傾向を示しています。それは、第5波以降、流行ピークが来るたびに、過去最悪の感染者数と死者数を更新していることです。オミクロン変異体になってから、ワクチン接種の効果もあってかCOVID-19の致死率や重症化率(これは定義そのものが病態に合致していない)が低下しているにも関わらず、死者数が第5、6、7波と最多更新されているわけです。そして第8波でまた最悪を迎えようとしています。 私はもう何度となく、本ブログやツイッター上でこの最悪状況を指摘していますが、再々度、日本の犠牲者数の推移を見てみましょう。 図1は主にアジアの国々(主として東アジア諸国)と比べた死者数の推移(7日間移動平均)を示します。図2は同じ期間の死亡率(100万人当たりの死者数)です。日本は人口が多いので死者数も多く、日当り2百人台でアジアトップを走り続けていますが(図1)、人口比死
カテゴリー:感染症とCOVID-19 (2022年) 世界保健機構(WHO)のテドロス事務局長は、9月14日の記者会見において、パンデミックの終わりは見えている("The end is in sight")と述べました [1]。世界におけるCOVID-19の死者数が、流行初期である2020年3月以来の低水準になったことを受けての発言だと思われます。一方で、日本のように、世界の潮流に取り残された国も稀ですが存在します、日本は第7波で過去最多の死者数を記録しようとしています。 世界的に死者数が低水準になったことは歓迎すべきことですが、一方で感染者数がどうなっているかは、もはや統計が意味をなさなくなっているので、現在は実態を掴むことは難しいです。COVID-19の被害は、もちろん犠牲者の数で一義的に表されますが、この病気にはもう一つの脅威である"long COVID"の問題があります。感染者数が
はじめに オミクロン変異体BA.5亜系統による第7波流行は、不幸にして急拡大し、犠牲者を増やし続けています。これは、ウィズコロナ戦略における不平等リスクが、政府、為政者の不作為によって、そして担当専門家による認知バイアスによって顕著化した結果と考えられます。このブログ記事でそれを説明しながら、現況を考察したいと思います。 1. 不平等リスクとは ウィズコロナの不平等リスクとは、一つ目が個人の経済面での不平等、二つ目は病気が社会に及ぼす影響の偏り、そして三つ目として病気が個人に及ぼす影響の偏りを含むものです。つまり、COVID-19はすべての人たち、社会分野、業種などに均等に悪影響を及ぼしているのではなく、経済的弱者や病気の面での脆弱者により集中的に悪影響を及ぼしているということです。 英国の健康財団(Health Foundation)のデビッド・フィンチ(David Finch)は、ウイ
カテゴリー:感染症とCOVID-19 (2022年) はじめに 現在、ウィズコロナ(living with the coronavirus)という言葉はすっかり定着した感がありますが、誤解も多い言葉です。英国で生まれたこのフレーズ [1] に、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染制御の上で何らかの戦略があるような印象を持っている人が多いと思いますが、全くそんなことはありません。簡単に言えば、感染対策としてのあらゆる非医薬的介入(non-pharmaceutical intervention, NPI)を行なわない、その上である程度の犠牲が出るのは仕方がないというのがウィズコロナの考え方です。 上記の考え方は「犠牲の最小化」というフレーズで言い換えられていますが、公衆衛生上のアドバイスを通じてより安全な行動を奨励するという表現はあるものの、定量的、あるいは具体的な目標は掲げられ
はじめに 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、いま急拡大中です。先月、第7波流行を予測、危惧しましたが(→この夏の第7波?流行)、残念ながらそのとおりの展開になってしまいました。流行の主体として置き換わりが進んでいるオミクロン変異体の亜系統BA.5ウイルスの伝播力(→COVID-19パンデミックにBA.4/BA.5変異体がもたらすもの)、検疫・感染対策の緩和、国民の気の緩み、参議院選挙活動の影響を考えれば、当然の結果でしょう。医療ひっ迫と第6波並みあるいはそれ以上の被害拡大は目前です。 ここへきて、また専門家筋からCOVID-19の感染症法上の扱いを5類相当へ移行しようという動きが出てきました。このブログで少しまとめたいと思います。 1. 政府と専門家の発言 政府は、先日の記者会見で、COVID-19の感染症法上の扱いを、季節性インフルエンザと同じ「5類」に引き下げることについ
日本では、ここにきて、にわかに脱マスク論が盛んになってきました。脱マスクに「メリハリをつけて」という言葉も添えられています。海外のように、マスク着用を義務化、時間が経ったら義務化を解除、というならメリハリのあるわかりやすい話ですが、日本は推奨はされてはいても、元々義務化されてはいませんので、メリハリも何もないでしょう。みなさん、自主的に着用しているわけです。 専門家の説明も、対人距離が十分にとれる場合や会話が少なければマスクをしなくともよいという、いずれも定性的な曖昧な表現です。もっと定量的で具体的な説明にしてほしいところです。 なぜ、このタイミングで脱マスクなのか、はっきり言ってよく分かりません。ワクチン接種が進んだとは言え、感染状況をみても、オミクロン流行で過去最多の感染者数と死者数を記録し、今なお3万人前後の新規陽性者数と数十人の死亡者を毎日出しています。この感染者の統計情報もはっき
2022.04.22: 18:24更新 今朝、日本経済新聞のウェブ版に目を通していたら、オミクロン変異体によるCOVID-19後遺症が若年層ほど重く 仕事と治療の両立の課題があることが記事になっていました [1]。そして、ツイッター上に、コロナ後遺症専門外来のあるヒラハタクリニック平畑医師の引用ツイートがありました。 新型コロナ: オミクロン後遺症、若年層重く 仕事と治療両立課題: 日本経済新聞 https://t.co/fW3hXmL4mg — 平畑光一 (@k_hirahata) 2022年4月20日 当該記事 [1] によれば、を今年1~3月に訪れたオミクロン患者258人のうち、年代別では30代の29%と最多であり、次いで20代と40代がいずれも24%だったということです。主な症状としては強い倦怠感、息切れ、ブレイン・フォグなどであり、仕事を週半分以上休まなければならないほど重い人も
COVID-19パンデミックにおいて防疫対策の基本の一つにになるのが検査です。今はマルチプレックス TaqMan PCR(プローブRT-PCR)という非常に高精度、高感度の分子技法が、SARS-CoV-2を検出する標準検査法として世界的に用いられています。検査の意義は以前のブログ記事(→国が主導する検査抑制策)で示したとおりです。 残念ながら、日本では当初から厚生労働省や周辺の感染症コミュニティによるPCR検査抑制論があり、パンデミックが始まってから3年目に突入した現在の感染対策においてもそれが尾を引いています。日本の検査脆弱性の状況は数字にも現れていて、今日(4月14日)時点での累計感染者数では世界16位なのに、累計検査数になると23位に後退します。ちなみに100万人当たりの検査数で言えば世界132位です。 検査の充実度は検査陽性率に現れます。G7諸国の中で、日本はいま人口比で5番目の新
はじめにーTVでのワクチン副作用特集 今朝(2月21日)のNHK「あさイチ」では、COVID-19ワクチンの副作用(副反応)を特集していました。mRNAワクチン接種後の心筋炎、心膜炎が話題として出てきました。しかし、もうこれはれっきとした病気なので、これを副反応というのも何か変です。日本では当たり前のように使っていますが、副反応って何?という感じですね。 英語では"side effects"(副作用)という一語でまとめられていますが、日本ではわざわざワクチン用に副反応という言葉を設けたところに、何やら怪しさを感じます。副反応と分けて言う合理性はまったくないです。 すでに、ファイザー社「コミナティ筋注」の添付文書も改訂されていて、「重大な副反応」として心筋炎・心膜炎が追加されています。 番組では心筋炎や心膜炎などの重大な副作用を紹介した上で、複数の専門家による見解を紹介していました。基本的に
はじめに オミクロン変異体(オミクロン型、Omicron variant)による新型コロナウイルス感染症は、従来のデルタ変異体などに比べて重症化しにくいことがすでに明らかにされています。私たちにとってはこれ自体は朗報ですが、ウイルスの伝播力の強さと免疫回避(ワクチン逃避)の性質は憂慮、警戒すべきことです。 ところがメディアなどで(専門家の間でさえも)、オミクロンの重症化率の低さや症状の軽さが強調されるあまり、被害の実態がわかりにくくなっているのではないかと思われます。オミクロンは風邪みたいなものと感じたり、デルタの時と比べて被害は大したことはないと多くの人が勘違いしているかもしれません。 オミクロン型流行による社会混乱はすでに顕著になっていますが、果たして、従来のデルタ型流行などと比べて被害の程度はどの程度なのか、まずは実態を直視する必要があります。 1. 重症者数 では実際に、被害の一つ
はじめに 私は以前のブログ記事で、SARS-CoV-2の全スパイクタンパク質をコードするmRNAワクチンは安全性の面で問題があること、mRNAドラッグプラットフォームのワクチン応用自体が健康人には馴染まないことを述べました(→ワクチンとしてのスパイクの設計プログラムの可否)。そして、COVID-19 mRNAワクチンについては、少なくとも以下の6点がクリアされなければならないと指摘しました(→核酸ワクチンへの疑問ーマローン博士の主張を考える)。 ・抗原となるタンパク量を制御できること ・生成したタンパクが注射部位の細胞に留まること ・スパイクタンパク質自身に毒性がないこと ・変異したタンパクができないこと ・mRNAやスパイクタンパク質が長時間残留しないこと ・mRNAを包むポリエチレングリコールの安全性 残念ながら、上記の課題はほとんどすべてが検証されないまま、mRNAワクチンは緊急使用
2021.11.05:20:05更新 はじめに 今回の総選挙で日本維新の会が躍進しました。事前の世論調査では維新の好調は伝えられていましたが、これほどの議席増(約4倍)とは、大方の人は予想していなかったのではないでしょうか。 この党の幹部が常日頃口にするのが、「身を切る改革」、「是々非々」というフレーズです。この宣伝が効いているのか、大阪の知人に訊いてみたところ、維新には自民党にはない、政策実行力のある改革の政党としてのイメージがあるという答えが返ってきました。 自民党では問題がありすぎて不満、かと言って野党第一党の立憲民主党になるともう政権批判ばかりで実行力がない、論外という感覚なのでしょう。今回の選挙で言えば、野党共闘に対して共産主義(=中国共産党、旧東側諸国の独裁国家のイメージ)強調や「左に寄り過ぎ」などのネティヴキャンペーンも見られたので、多少なりとも維新の有利になったことは間違い
総選挙がおわり、与党第1党である自民党の安定多数の議席確保と野党第1党の立憲民主党の大幅議席減という結果に終わりました。その中でも日本維新の会の選挙前議席の4倍にも上る獲得議席は目立ちます。 日本の大手新聞は早速この選挙結果について報じていますが、野党共闘の是非に関するものが多く、今ひとつピンと来ない論調も見られ、問題が矮小化されている感もあります。一方、海外のメディアも選挙結果を一斉に報じており、日本のメディアにない視点も見られます。そこでこれらの中で、維新の躍進を報じた英国ガーディアン紙の記事 [1]を取り上げ、全翻訳で紹介したいと思います。 当該記事は"Japan election: rightwings populists sweep vote in Osaka"(日本の選挙、右翼のポピュリストが大阪の票を総ざらいする)というタイトルが付けられており、海外メディアが今回の選挙結果と
カテゴリー:感染症とCOVID-19 はじめに 国立遺伝学研究所と新潟大学の共同研究チームは、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)のnsp14遺伝子が変異することが、第5派流行の減衰に繋がった可能性があるという研究成果を日本人類遺伝学会で発表しました。メディアは早速これを紹介しています [1]。 私はこの研究や学会発表の詳細を知りませんので、メディアの報道で類推するしかありませんが、どうやら、ゲノム複製のエラーをチェックし修復する酵素の遺伝子であるnsp14が変異し、ゲノム上の変異が蓄積して修復できず、ウイルスが死滅したということらしいです(図1)。 図1. メディアが報道した研究チームが考える酵素の変化がウイルスに与える影響([1]からの転載). 私はこの報道を見ていて違和感を感じました。もし報道どおりだとしたら、「変異して死滅するものが集団内で現存していた」ということ自体が生物や
はじめに 第5波のCOVID-19流行は大きな被害をもたらしていますが、東京や周辺の県での新規陽性者数はピークを過ぎて減衰に入ったように思われます。全国的にもやや遅れて減衰するか高止まりになっているようです。 政府は7月12日に緊急事態宣言を東京都に発出し、8月2日には6都府県へ拡大しました。それ以降23都府県に拡大されています。しかし、これといった新たな感染防止対策は施していません。それにもかかわらず、少なくとも東京や周囲を含めた首都圏では減衰に向かっている理由は何なのでしょうか。テレビやウェブ記事を通して専門家のコメントも聞こえてきますが、どれも決め手がありません。はっきり言って理由はわからないというところでしょう。 第5波以前の4回の流行も、第1波の大規模接触削減策の効果を除いては、なぜ減衰したのかわからないのが実状です。専門家による検証も行なわれていないように思います。ただ感染伝播
はじめに 新型コロナウイルスウイルスSARS-CoV-2の感染については、飛沫感染、接触感染、エアロゾル感染の三つの感染様式があると言われてきました。1年以上も前、このブログでもそれらを取り上げました(→新型コロナウイルスの感染様式とマスクの効果)。しかし、この1年間の研究調査データから、研究者は一つの事実を明らかにしつつあります。それは主要感染経路が空気感染(airborne transmission)であるということです。それも新しい概念の空気感染です。 空気感染については、特に感染力が高い変異型ウイルスへの対策として考慮すべきであり、マスクの着用の仕方も強化すべきことだと思われます(→感染力を増した変異ウイルスと空気感染のリスク)。しかし、科学論文上はもとより、さまざまなウェブ記事、SNS上でも空気感染という言葉について混乱があります。このブログ記事で、あらためて空気感染とは何かにつ
米国のニューヨーク・タイムズ紙は、7月20日、「東京五輪を支える見えざる手」"The invisible hand behind the Tokyo Olympic"と題した記事を掲載しました [1]。見えざる手とは日本の広告会社電通のことです。 記事の冒頭に「電通は、日本の主要な機関に深く食い込む広告会社であり、今年の大会で日本最大の勝者となるはずだった。しかし、パンデミックはその計画を台無しにしてしまった」と書かれています。このブログでは、こので記事の筆者による全翻訳を載せたいと思います。 以下、筆者による全訳です。 -------------------- 電通は、東京五輪の公式スポンサーではない。今週を待ち望んでいる何百万人もの視聴者には見えないままの存在だ。しかし、電通がなければ、東京大会は実現しなかった。 オリンピックの幕引きをしているのは、日本では神話的レベルの権力と影響力を
まえがき 昨日(7月8日)、菅義偉首相は、東京都に4度目の緊急事態宣言を発出することを表明しました。東京はCOVID-19の第5波に見舞われつつありますが、前回の宣言解除から3週間も経たたないなかでの宣言になります。新聞報道によれば、東京五輪の開催を最優先した菅政権の対応に、不備はなかったのか、首相の政治責任が大きく問われるとしています [1]。 それはともかく、緊急事態宣言に伴って、まともや感染対策に飲食店がやり玉に挙げられ、酒類提供停止が要請されるようです。この政府の動きに対して、私は疑問を抱かざるを得ません。ここでは、その理由を挙げながら、感染拡大抑制策について考えてみたいと思います。 1. メディアの報道 今朝のテレビ朝日の「モーニングショー」では、早速、飲食店の酒類提供の一律停止について伝えていました(図1)。菅首相は、昨日の記者会見において、酒類停止は感染防止に大きな成果を上げ
はじめに COVID-19-mRNAワクチンについては、主として安全性の面から、ツイッターなどのSNS上でさまざまな懸念や噂が広がっています。また、根拠のない明らかなデマと思われる情報までが飛び交っています。国や専門家は当然ながらこれらの噂やデマを否定し、ワクチン接種を推奨しています。河野担当大臣もデマ情報を打ち消す見解を自身のブログで示しました [1, 2]。 しかし、ツイッターやブログ上での安全性への懸念のコメントは相変わらずです。新しいワクチンに対する懸念やデマはいつもあることですが、今回のmRNAワクチンは緊急使用許可された前例のないワクチンということで特別だと言えるでしょう。とくに、細胞がワクチンの生産工場となるプロセスに対する安全性の審査が行なわれないまま、接種が推奨されているということが手続き上問題だと言えます。いわば、今まさに世界中で人体実験中なわけです。 そして日本で言え
はじめに いま日本でも遅ればせながら、急速に新型コロナウイルス感染症COVID-19のワクチン接種が進められています。ワクチンと言っても、従来のような病原体を不活化させたものあるいはその一部を接種するというやり方ではなく、SARS-CoV-2のスパイクタンパク質(Sタンパク)をコードする遺伝子(mRNA)を"ワクチン"として接種するというものです。 このブログでは、昨年3月にmRNAワクチンと集団免疫とmRNAワクチンに触れましたが(→集団免疫とワクチンーCOVID-19抑制へ向けての潮流)、約1年で実現できたことには驚きを隠し得ません。mRNAワクチンはファイザー/ビオンテック社やモデルナ社のものに代表されますが、アストロゼネカ社のようにアデノウイルスベクターを使ったDNAワクチンもあります。DNAワクチンもmRNAワクチンも人類史上前例のないワクチンということになります。 最近、mRN
2020.05.22更新 はじめに 私は日頃から新型コロナウイルスSARS-CoV-2やCOVID-19に関連する論文を注視していますが、最近、三つの論文がとくに目を引きました。そのうち二つは、SARS-CoV-2のRNAがヒト細胞のDNAの中に逆転写によって組み込まれるという可能性を述べた論文 [1, 2] であり、残りの一つは、この論文の一つ [1] も引用しながら、mRNAワクチンの長期的な負の影響の可能性を考えた論説です [3]。 最初の論文 [1] は、米国ホワイトヘッド生物医学研究所/マサチューセッツ工科大学(MIT)の研究グループによって米国科学アカデミー紀要(PNAS)に掲載されたもので(プレプリントは昨年12月のバイオアーカイヴ [4])、ウイルスRNAのゲノムDNAへの組み込みに長鎖散在反復配列(long interspersed nuclear element, LI
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