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おみそ汁
saunology.hatenablog.com
年末年始は家でゆっくりお風呂に入るという人もいれば、年末年始こそお風呂屋さんに出かけたいという人もいます。行きつけの銭湯の年末年始のスケジュールを確認してから新年を迎えた人も多いのではないでしょうか。昔の銭湯のお正月は、どんな雰囲気だったのでしょうか。今回は、江戸の湯屋のお正月についてまとめてみます。 お正月の湯屋のおひねり 元旦に風呂に入ると福が流れてしまう、元旦ではなく1月2日の朝を初風呂にするべき、というような説もあるようですが、『公衆浴場史』では「元旦に風呂にはいると福がくる」という俚諺が紹介されています*1。解説には次のように書かれています。 「一年の計は元旦にあり」といわれるとおり、元旦早朝に風呂にはいって、過ぎた一年をかえりみ、一年間の計画を考えれば、かならず名案が浮かぶものといわれている*2。 昔の銭湯、江戸の湯屋は年末年始も多くの人が入浴に訪れたようです。「初湯」は1月1
このところ、サウナがブームだと取り上げられることも多くなりました。メディアでも「サウナがブーム」とよく言われます。今の日本のサウナ文化、海外からはどのように見えているのでしょうか。今回は、今の日本の「サウナブーム」について書かれた海外の記事を紹介します。 日本のサウナブーム 海外の記事でも、日本でサウナがブームであることが取り上げられています。例えば、World of Saunaというブログには"Japanese sauna culture"という記事があります。このブログは、フィンランド出身で今はドイツで暮らしている女性が書いているブログだそうです。"Japanese sauna culture"は2021年1月に書かれた記事です。記事の中で、日本のサウナブームについては次のように言及されています。 A real sauna boom has begun in Japan. Young
水風呂の塩素臭について話題になることがあります。塩素の入った水風呂の水を髪にかけたくないので浴槽の外でも頭から水はかぶらないという女性の声も聞いたことがあります。水風呂やお湯の浴槽、プールなどは、消毒のために塩素が使われていることが大半です。塩素消毒とはどのようなものなのか、塩素の臭いの強さは何で変わるのか、今回は塩素について考えてみます。 塩素消毒の仕組み 水風呂や浴槽、プールだけでなく、水道水も含めて水の消毒に塩素が使われることはよく知られています。鈴鹿医療科学大学薬学部の廣森洋平によると、塩素消毒の仕組みは次のようなものです。赤字はもとの記事のままです。 塩素を水に溶かすと、塩素が水と反応して次亜塩素酸(HOCl)とそれがイオン化した次亜塩素酸イオン(OCl-)という物質が生成されます。これらの物質は強い酸化作用を持っており、その作用によって菌体膜を破壊、酵素を失活させ、殺菌作用を示
サウナのマナーについて話題になることが増えました。イラストを使ったり項目をまとめたり、いろいろなものが見受けられます。しかし、公共の浴室でのマナーについての問題は、今に始まったことではなく、長い歴史があるようです。今回は、公共の浴室でのマナーについて考えてみます。 湯屋のマナー問題 (画像出典:熊本県公衆浴場業生活衛生同業組合 HP) 公共の浴室でのマナーについての記述は、銭湯が「湯屋」と呼ばれていた1800年代から見られます。例えば1876年の『読売新聞』には、次のような記述があります。 貴社の新聞にたびたび湯屋のお諭しが出ますが實に御尤も其内にも風呂の中で立ちながら洗ッて居る人が有りますが傍の人に湯がかかッて終には喧嘩口論にも成ましやうしまた湯も早く濁りますから其爲の流しへ出て洗ひたいものまた流し板へ啖唾を吐く人が間々有ります*1。*2 風呂の中で立ったまま洗っている人がいると、他の人
サウナの「ヌシ」については、おもしろおかしく語られたり、女性サウナあるあるとして取り上げられたりします。女性のサウナ好きのみなさんは、黙認したり、避けたり、静かな戦いを繰り広げたり、日頃からいわゆる「ヌシ」と何らかの形で付き合っているのではないでしょうか。今回は、そんな「ヌシ」について考えてみました。 常連の心理 「ヌシ」という言葉は、単純にいつ行っても見かける常連という意味で使われることもありますが、常連の中でもそこのルールのような、いつもいて、場合によってはあれこれこちらの利用の仕方にコメントをしてくるような存在のことを言う場合が多いようです。常連が必ずしも「ヌシ」と呼ばれるわけではないですが、「ヌシ」の条件として、いつもいる常連である、ということはあげられるでしょう。 (画像出典:『湯遊ワンダーランド』) 常連という存在は、お店にとっては基本的にありがたい存在だと考えられます。例えば
「子どものサウナ浴①」では、サウナ浴による子どもの身体の変化に関する実験を2つ紹介し、体温調節が大人より難しいことなど、子どもがサウナに入ることのリスクについて紹介しました。しかし、フィンランドでは子どもも小さい頃からサウナに入っています。今回は、子どものサウナ浴の可能性について更に見ていきます。 フィンランドの子どものサウナ浴 「子どものサウナ浴①」で取り上げたEero Jokinenらの論文では、"About 80% of Finnish children have a sauna bath once a week with their parents*1"(約80%のフィンランドの子どもが週に1回、親とサウナに入っています)と指摘されています。また、サウナに入る年齢について、"Finnish children are acquainted with sauna bathing fro
日本の高温でカラカラのサウナは間違っている、フィンランド式の中温高湿のサウナこそが正しい、という発言について、いろいろと意見が交わされています。「間違っている」という価値判断を伴う言葉の強さからつい感情的になってしまいがちですが、そもそもどうして日本では高温カラカラのサウナが定着してきたのでしょうか。今回は、日本の高温カラカラのサウナについて考えてみます。 熱で温まるか湿度で温まるか 「サウナと湿度 絶対湿度の算出~男性サウナ室~」で絶対湿度と座面の温度をもとに10施設をマッピングした時にも、高温低湿、つまり高温カラカラのサウナが少なくないことを紹介しました。 そして、これはフィンランド式の中温高湿のサウナ室とは確かに違うけれど、フィンランドのようにゆっくりサウナ室に入る時間的余裕が日本人にはなく、短時間でがっと汗をかけるサウナ室が求められてローカライズされてきたのでは、という考察をしまし
スーパー銭湯やサウナ施設では「入れ墨・タトゥーお断り」の掲示があることも多く、入れ墨やタトゥーが入っていると行けるサウナは限られます。オリンピックを目前に、この「入れ墨・タトゥーお断り」の是非について議論されたりしています。今の時代に合わない、禁止する法的根拠はない、といったことが取り上げられながらも、変えるのが難しい文化・伝統のように言われることもあります。しかしこの禁止の歴史はそれほど長くはないようです。今回は、入れ墨・タトゥーについて考えてみます。 そもそも入れ墨とは 「入れ墨」は辞書では次のように定義されています。 肌に針や刃物で傷をつけ、墨汁・朱・ベンガラ・緑青などの色素をすり込んで、文字・紋様・絵柄を描き出すこと*1。 日本には、このいわゆる「イレズミ」を表す単語が「入れ墨」以外にもいろいろあります。基本的に同じものを指しますが、言葉によってニュアンスが少し違ってきます。長吉秀
「200の法則~男性サウナ室~」では、「200の法則」を紹介して、男性サウナ10施設について温度(華氏F)と相対湿度(%)の合計値を算出し、200との差を見てみました。今回は、女性サウナ10施設の数値を算出してみます。 200の法則 「200の法則」とは、温度(華氏)と相対湿度(%)の合計が200になる時、サウナ室は多くの人にとって理想的であるとする法則でした。 sometime referred to as the “Rule of 200” where the ideal environment for a sauna is when the % humidity + the temperature in Fahrenheit equals 200. *1 (「200の法則」とも呼ばれますが、これはサウナ室の理想的な環境は湿度(%)と温度(華氏F)の合計が200になる時であるというもの
「良いサウナ室の条件とは①」では、Niilo Teeriの論文"The Climatic Conditions of the Sauna"について、Teeriの挙げる良いサウナ室の条件を考える上で重要な4つの要素のうちの2つ、温度と、ロウリュと湿度の2つを見てきました。今回は残りの2つ、熱輻射と換気について見てみます。 良いサウナ室の条件 Teeriはサウナ室内のコンディションを構成する要素は次の4つであるとしています*1。 Teeriは、この 4つ全てが最適の状態にある時、サウナ室内は理想的な環境であるとしています。 熱輻射 Teeriの考えるサウナ室を構成する要素の3つ目は熱輻射です。Teeriは、サウナ室内の熱輻射は重要な要素であるにも関らずあまり注目されてこなかったと言います*2。Teeriによると、濡れた人の肌は熱を非常に吸収しやすく、真っ黒い物体と同じくらいの熱吸収をすると言い
サウナ室にはいろいろなバリエーションがあります。熱いサウナが好き、湿度が高いサウナが好きなど、個人の好みも様々で、何が良いサウナ室か、とは一言では言えません。好みは人それぞれである、という前提のもと、良いサウナの条件について考察した論文が1976年に書かれています。Niilo Teeriの"The Climatic Conditions of the Sauna"(1976)です。今回と次回は、この論文の内容を紹介したいと思います。 Sauna Studies この論文はSauna Studiesという本に掲載されています。Sauna Studiesは1974年に開催された第6回 International Sauna Congressで発表された内容をまとめたものです。 Congressが1974年、本の刊行が1976年と、古い資料になりますが、今読んでも興味深い内容が多く、最近の論文で
「サウナと熱 サウナ室の中の熱」ではサウナ室を3つのタイプに分けて考えた時、私たちがどこから何熱を受け取っていると考えらえれるのか、考察してみました。今回は、その違いについて更に詳しく考察してみます。 3種類のサウナ室と熱の動き サウナ室の熱源やヒーターにはいろいろなものがありますので、また別の記事でまとめる予定ですが、前回は遠赤外線ヒーターのサウナ室、ストーンを使ったサウナ室、ヒーター格納式のサウナ室の3つについて、熱の動きを考えてみました。 遠赤外線ヒーターのサウナ室 ストーンを使ったサウナ室 ヒーター格納式のサウナ室 このように、サウナ室では様々な種類の熱が私たちの身体に届いていると考えられます。どこまでが何による何熱、ということは区別できませんが、ヒーターの種類によってどれが強めかということはある程度予想できます。遠赤外線ヒーターのサウナ室であれば、ヒーターからの輻射熱が主であり、
ロウリュの熱さについていろいろ考察してきましたが、サウナ室ではまずヒーターの熱による熱さが前提です。熱にも伝わり方等によって種類があります。「ここは輻射熱が強くて良かった!」なんて感想を言うこともありますよね。しかし、熱の種類についてしっかりと定義を確認したことがある人は少ないかもしれません。今回は、熱の種類について見ていきます。 そもそも熱とは 熱は『ブリタニカ国際大百科事典』では以下のように定義されています。 物体に出入りしてその温度を変化させるエネルギー。たとえば,温度の異なる2物体を接触させ,高温物体が冷えて低温物体が暖まるときに,前者から後者へ移るエネルギーが熱である。*1 また、『デジタル大辞泉』には「熱」の5つ目の意味として以下のような説明があります。 5 物体の温度差の原因となるもの。高温の物体から低温の物体へ移動するエネルギーの流れ。分子や原子の運動に関連するエネルギーの
サウナ・水風呂に加えて、外気浴もサウナの楽しみの一つです。サウナ・水風呂後の休憩で、とりわけ外に出て休む外気浴は気持ち良いという人も多いのではないでしょうか。今回は外気浴について考察してみます。 外気浴が気持ち良い理由は以下の4つがあると考えられます。 温熱的快適感 サウナに入らない人も、露天風呂が好きだという人は多いのではないでしょうか。露天風呂がどうして気持ち良いのか、文献では「温熱的な快適感」について指摘されています。 菅屋潤壹は「体温が高いときは皮膚温が低いほど快適感が強いことがわかっている」*1と言います。つまり身体の中の温度である体温が高い時は、表面の皮膚温度が低ければ低いほど心地良く感じるということです。これは水風呂の気持ち良さとも関係ありそうです。体温が上がっているサウナ後に、皮膚温が水風呂によって下がることで強い快適感を得られるということでしょう。 露天風呂で湯ぶねに浸か
「サウナのロウリュが熱い仕組み②」では、ロウリュが熱い仕組みの1つは皮膚表面での結露により発生する潜熱だと紹介しました。「サウナと結露・潜熱に関する論文」ではフィンランドのサウナ室で結露が起こっていることを検証した論文を紹介しました。では、サウナ室での結露は実際どのくらいの量発生しているのでしょうか。今回は結露する量について考えてみます。 サウナ室の結露と潜熱 「サウナと結露・潜熱に関する論文」では1つ目の、本場フィンランドのサウナ室の結露について考察している論文を見てみました。結露は起こっている、ということが論文からもわかったわけですが、今回は2つ目の疑問、ではどのくらい結露しているのかについて考察します。 汗か結露か? 通常サウナ室にいる時以上に、ロウリュの後にはどばっと汗が出ます。日本でも、ロウリュの後の大量の水分は汗だけではなく湿度の上昇によって結露が生じた結果のものであるという考
サウナと言えばサウナ・水風呂ですが、「サウナ飯」という言葉があるように、サウナ後のごはんもサウナの楽しみの一部と思っている人は少なくないでしょう。サウナの後のごはんはどうして美味しく感じるのか、今回はサウナ飯が美味しい仕組みについて考えます。 そもそも味覚とは 私たちが味を感じる感覚を「味覚」と言いますが、これは唾液に溶けた化学物質が舌などを刺激することによって起こります*1。味を感じる味受容器は、舌の他に、口の中の粘膜や喉の粘膜にもあります*2。味覚は基本的に甘味・酸味・塩味・苦味・旨味の5つです*3。 ちなみにこれらの味覚、舌のどの部分で感じているか、分布図を見たことがある人もいるかもしれません。しかし、あれは誤りで、舌全体で味を感じているということが最近ではわかっています。 味を感じる味受容器は「味蕾」と呼ばれ、舌の上で唾液によって溶けた物質はこの味蕾に入り、味蕾の中にある味細胞に刺
「サウナと汗 デトックスは都市伝説」では、発汗にデトックス効果は期待できないと考察しました。基本的に汗は体温調節のために身体の水分を犠牲にしているものということでしたが、では発汗をすることにメリットはないのでしょうか。今回は、サウナ浴による発汗のメリットについて考えてみます。その前に、もう少し発汗に関する誤解についても見てみましょう。 サウナで酒が抜ける? サウナ好きにはあまりいないかもしれませんが、サウナで汗をかくことでアルコールが抜ける、と考えている人もいます。しかしこれはデトックス効果と同じく誤解です。 お酒を飲み過ぎた時、頭が痛くなる、吐き気がするなどの症状が見られますが、これはアルコールが分解されてできたアセトアルデヒドが原因です。サウナでたくさん汗をかいて酒を抜く、という考えは、アルコールやアセトアルデヒドが汗によって身体の外へ排出されるのでは、と思うからでしょう。しかし、汗腺
「サウナと汗 発汗の仕組み①」と「サウナと汗 発汗の仕組み②」では、発汗の基本についてまとめました。サウナ室での汗の出方を思い出してみると、1セット目ではまんべんなくじんわりとかいていた汗が、2セット目から玉のような汗になる、という経験のある人は少なくないかもしれません。こうした汗の変化はどういう仕組みで起こっているのでしょうか。今回はサウナ室でかく汗について考えていきます。 見える汗と見えない汗 私たちが「汗をかいている」 と思って見ている汗以外に、実は私たちは目に見えない汗をかいているのです。 高温環境に入ると、体温調節のために汗腺が働き始めます。すると、汗が皮膚表面から排出されますが、すぐに蒸発して私たちの目には見えません*1。目に見えないため、汗をかいていると認識できませんが、実際には発汗が始まっているのです。出てきた瞬間蒸発し、気化熱によって皮膚表面の熱を奪い、体温調節をしている
「サウナにおけるロウリュと湿度」ではロウリュをしながら入ることが一般的なフィンランドのサウナ室の湿度についてまとめました。日本のサウナ室でロウリュをする前とした後とでは、どのくらい湿度が変わるでしょうか。今回は、実測結果をまとめます。 湿度計測の条件 ・過去の記事(「サウナと湿度 計測~男性サウナ室~」「サウナと湿度 計測~女性サウナ室~」など)で使用した湿度計と同じものを使用。 ・2018年11月~2019年4月にかけて計測を試みた施設のうち、セルフロウリュが出来る施設5つ、施設側によるロウリュサービスが実施されている施設5つの、計10施設のサウナ室を選定。 ・計測位置はサウナ室の最上段の背中から腰の間。 ・ロウリュ前については湿度計の針が安定するまでの20~30分程度計測した値を採用し、ロウリュ後についてはロウリュ実施直後の値を採用。 実測したサウナ施設 ロウリュをする前と後で湿度計測
2023-01-03 冊子オンライン販売のお知らせ 告知 先日、東急ハンズで販売したSaunologyの冊子第3弾、『サウナのさまざまな謎』をオンラインで販売いたします。 第3弾『サウナのさまざまな謎』のみの販売と、第1弾『サウナの湿度の謎』と第2弾『サウナの熱の謎』との3冊セットの販売です。第1弾・第2弾もこの… サウナ 2022-09-09 冊子本第三弾『サウナのさまざまな謎』発売と第一弾・第二弾再販のお知らせ 告知 Saunologyの冊子第三弾『サウナのさまざまな謎』を発売します。東急ハンズで開催される「全国サウナ物産展」にて、販売いたします。第三弾の発売に伴い、第一弾『サウナの湿度の謎』、第二弾『サウナの熱の謎』も再販いたします。 2022-05-04 硬度と肌感覚 水風呂 今回は、硬度と肌感覚について考えてみます。 2022-03-19 pHと肌感覚 水風呂 今回は、pHと肌感
サウナ室の湿度 サウナ室での身体のあたたまり方や汗のかき方には温度だけでなく湿度も大きく関係していると考えられます。サウナ室の湿度について、私たちはどのように判断しているでしょうか。 例えば、息を吸って鼻の中が痛くなったり汗が出にくいと感じる時、「乾いている(湿度が低い)」と判断し、息苦しかったり汗が出やすいと感じる時、「湿っている(湿度が高い)」と判断している人もいるかもしれません。口を開けてサウナ室内の空気を吸い込んで判断する人もいるかもしれませんし、肌で感じるという人もいるかもしれません。湿度を感じる方法は人それぞれと言えそうです。 実際にそのサウナ室の湿度がどのくらいなのか確かめようにもサウナ室に湿度計が設置されていることは稀で、温度に比べてわかりやすい指標もなく、はっきりとはわかりません。身体のあたたまり方や汗のかき方に大きく関連する要素でありながら、サウナ室の湿度には謎が多いと
前回「サウナと歴史 日本の蒸気浴の歴史~近世から近代①~」で見たように、近世は蒸し風呂から湯風呂への移行期となっています。戸棚風呂や石榴風呂などが登場する一方で、湯風呂もあらわれてきます。今回は、湯風呂が登場し、蒸し風呂中心から湯風呂中心に移り変わる過程を見てみましょう。 湯風呂の登場 蒸し風呂にいろいろな工夫がされる一方で、湯に浸かるタイプの風呂も登場します。その一つに、「据え風呂」があります。これは移動式の風呂桶で、後により熱効率の良い「鉄砲風呂」や「五右衛門風呂」に発展していきます。 これらの湯に浸かる風呂も、近世の文献にはあらわれ始めます。十返舎一九の『東海道中膝栗毛』(享和2年~文化6年、1802年~1809年)では、弥二郎と喜多八が小田原宿で五右衛門風呂に入る場面があります。 土をもつてかまをつきたて、そのうへゝ、もちやのどらやきをやくごときの、うすぺらなるなべをかけて、それに
「サウナと歴史 日本の蒸気浴の歴史」で見たように、近世は蒸し風呂から湯風呂への移行期と言えます。蒸気浴が中心であったと考えられる日本の沐浴は、半分蒸気浴・半分温湯浴という時期を経て、温湯浴中心に移りかわっていきます。メインだった蒸気浴が廃れて温湯浴にとってかわる、というのではなく「蒸し風呂の装置自体が温湯浴用へ変化した」*1と言われています。どういうことなのか、今回と次回は近世から近代までの沐浴について詳しく見てみましょう。 風呂の東西 江戸に最初にあらわれた銭湯も、蒸気浴風呂でした。江戸初期の見聞記、『慶長見聞集』*2(慶長19年、1614年刊とされている)*3には、江戸で最初の銭湯だと思われる銭湯*4についての記述があります。 見しはむかし、江戸繁昌のはじめ天正十九卯年夏の比かとよ。伊勢與市といひしもの、錢瓶橋の邊りにせんとう風呂を一つ立る。風呂錢は永樂一錢なり。みな人めづらしきものか
「サウナと歴史 日本の蒸気浴の歴史」で見たように、中世については風呂の形式についての資料もあり、この頃には広く蒸気浴が行われていたことがわかっています。今回は中世の蒸気浴について詳しく見てみましょう。 蒸し風呂形式の「フロ」の定着 平安時代末期から文献にあらわれ始めた「フロ」ですが、鎌倉時代になると様々な資料に登場するようになります。そして、この時代の「フロ」は確実に蒸し風呂形式であったと考えられています*1。例えば、鎌倉時代の宮廷医、惟宗具俊による医学随筆集『医談抄』の「風呂事」という項目には次のような記載があります。 遊戯沈酔ノ人ノ所為ナリ、湊理ヲムシアケテ冷水ヲカケアラハヾ、ヒサシク雑談シテ風ヲ引ナルヘシ*2 「湊理」は皮膚のことです。皮膚を蒸し上げて冷水をかけて洗う、という内容で蒸気浴を行っていた記録の一つということになります。 また、室町時代になると公家の日記に「風呂」という言葉
『枕草子』の塩風呂の謎 『枕草子』に石を使った塩風呂が出てくる、だから平安時代には石を使った蒸気浴が一般的だったのだ、という文献をいくつか見かけました。『枕草子』に出てくるらしいという塩風呂の記述とは、以下の文章です。 塩風呂等に入ると同しく、その所にてたつるやうと聞きしに、小屋あって、其の中に石を多く置き、之を焚きて水を注ぎて湯気を立て、その上に竹の簀を設けてこれに入るよしなり、大方村村にあるなり 石に水をかけて湯気を立てる蒸気浴、それが村ごとにあったという記述です。これが事実なら平安時代の日本ではセルフロウリュが一般的だったということになります。しかしながらこの記述、実際に『枕草子』に出てくるものではなさそうです。 塩風呂という言葉 『枕草子』に塩風呂という言葉が出てくるということですが、「サウナと歴史 日本の蒸気浴の歴史~中古~」で見たように、「フロ」という言葉が文献上に初めて登場す
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