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芥川龍之介 南京の基督
或秋の夜半であつた。南京(ナンキン)奇望街(きばうがい)の或家の一間には、色の蒼(あを)ざめた支... 或秋の夜半であつた。南京(ナンキン)奇望街(きばうがい)の或家の一間には、色の蒼(あを)ざめた支那の少女が一人、古びた卓(テエブル)の上に頬杖をついて、盆に入れた西瓜(すゐくわ)の種を退屈さうに噛み破つてゐた。 卓(テエブル)の上には置きランプが、うす暗い光を放つてゐた。その光は部屋の中を明くすると云ふよりも、寧(むし)ろ一層陰欝な効果を与へるのに力があつた。壁紙の剥(は)げかかつた部屋の隅には、毛布のはみ出した籐(とう)の寝台が、埃臭さうな帷(とばり)を垂らしてゐた。それから卓(テエブル)の向うには、これも古びた椅子が一脚、まるで忘れられたやうに置き捨ててあつた。が、その外は何処を見ても、装飾らしい家具の類なぞは何一つ見当らなかつた。 少女はそれにも関らず、西瓜の種を噛みやめては、時々涼しい眼を挙げて、卓の一方に面した壁をぢつと眺めやる事があつた。見ると成程その壁には、すぐ鼻の先の折れ釘