現在の日本社会は、新型コロナという未知のウイルスだけでなく、デマや歪んだ思想も蔓延している。国民がデマや歪んだ思想に惑わされないためには、良質な思想に触れて“免疫力”を高める必要があるのだ。 ここでは、評論家・中野剛志氏と作家・適菜収氏の共著『思想の免疫力 賢者はいかにして危機を乗り越えたか』(ベストセラーズ)から一部を抜粋。昭和の批評家・小林秀雄の思想について語る中野氏と適菜氏の対談を紹介する。(全2回の1回目/後編に続く) ◆◆◆ 言葉の限界について 適菜 中野さんが2021年3月に出した『小林秀雄の政治学』を読みましたが、非常に面白かったです。この本はいろいろな読み方ができますが、私は「新型コロナ論」にも見えました。未知の事態、新しい事態が発生したときに、人間は、どのように考え、どのように動くのか。小林秀雄(1902-83)に見えていたものは、凡人や似非インテリの目には映っていません