前回の記事(「大量破壊兵器からウィキリークスへ」)では、ニューヨーク・タイムズ紙上で「イラクに大量破壊兵器がある」と報じた記者ジュディス・ミラーについて「匿名報道の代表選手」と書いた。 日本の新聞報道はどうだろうか。二十年以上前になるが、個人的な体験を振り返ってみたい。情報源を匿名にするどころか、情報の出所さえ示さない報道が残る点では今も昔も変わらない。それと照らし合わせれば、ミラーを「落第生」扱いにするわけにもいかない。 1980年代後半、いわゆる「プラザ合意」を受け、円高が急ピッチで進んでいた。日米首脳会談や先進国首脳会議などの場でも、常に為替相場が主要な議題になっていた。私は当時、日本経済新聞社が発行する英字新聞「英文日経」に所属し、英語で情報発信する立場にあった。 「日米が為替安定化で一致? 事実とちょっと違う。なんでこんな記事になるんだ」---。ある時、日経の英文速報記事にアメリ