ここ数年、電力・ガス・水道や鉄道・交通といった人々の生活を支える重要社会インフラである制御システムにおいて、セキュリティの脅威が増大している。これまで閉じられた環境で構築、運用されていたため安全であると信じられてきた制御システムで、多くのセキュリティインシデント(事件)が発生しているのである。 この特集では、制御システムを取り巻く環境と脅威事例を紹介した後、制御システム特有のセキュリティ要件を情報システムとの相対比較によって導出し、今後のセキュリティ対策の方向性を検討してみたい。 原発のクローズドネットワークに侵入 2010年7月、イランのブシェール原子力発電所が不正プログラム「Stuxnet」(スタクスネット)による攻撃を受けていたことが判明した。原子力発電所の稼働を妨害する目的があったと見られている。このセキュリティインシデントは、明確に制御システムを狙ったサイバー攻撃として世界に衝撃