しかし残念ながら話はそこでは終わりません。つまり、われわれの「本の黄金時代」はたんにピカピカ光り輝いていただけでなかった。じつはその背後に、暗い、ちょっと情けないみたいな一面をも併せもっていたということです。 印刷は「同一コピーの多数同時生産」のための技術である。この新しい技術にささえられて出版は産業になり、本は商品になった。もういちどいうと、それが「書物史」運動のまず最初にあった認識です。そしてこの傾向は産業革命によって加速され、二十世紀にはいって、商品としての本の大量生産、大量宣伝、大量販売方式を確立する。おかげで本の定価が下がり、王侯貴族や官僚や僧侶や大商人ではない一介のサラリーマンまでが、じぶんの家に小さな図書館をもてるようになった。たしかにそれはすばらしいことだったんです。 でも、あえてわかりきったことをいいますが、産業化を前へ前へと推しすすめたエンジンは利潤の追求ですよね。いっ
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