3月2日の朝、シドニーのウェスティンホテルの会議室で、熊維平は中国アルミの役員たちとともにオーストラリアの主要メディアの記者たちと向き合っていた。 記者たちは、用意された朝食にはほとんど関心がなかった。彼らの視線は、テーブルの向かい側に座る中国アルミの新任総経理(社長に相当)―― 熊維平に集中していた。 2月17日、中国の国有アルミ最大手、中国アルミの総経理に任命されたばかりの熊維平は、着任早々困難な仕事を引き継いだ。オーストラリアの資源大手、リオ・ティントに対する195億ドル(約1兆9500億円)の出資計画である。この計画は、リオ・ティントの株主による反発と豪政府の審査という試練に直面している。 記者たちとの質疑応答は通訳を介して行われた。英語のできる熊維平は、質問の意図をきちんと理解できたはずだが、通訳の中国語を最後まで聞いたうえで、言葉を選びながら慎重に回答した。 ロビー活動で株主と