(平井 和也:翻訳者、海外ニュースライター) 近年、米中対立が激しさを増している中で、国際政治の専門家の間で米中間の「トゥキディデスの罠」という考え方が浮上している。トゥキディデスの罠とは、新興国が覇権国に取って代わろうとするとき、2国間で生じる危険な緊張の結果、戦争が不可避となる状態を指す言葉だ。ハーバード大学のグレアム・アリソン教授が古代ギリシャの歴史家トゥキディデスにちなんで提唱した概念として注目されている。 アリソン教授は、東京新聞のインタビュー記事(2019年12月2日)の中で「トゥキディデスの罠に米中が陥り、全面戦争に発展する可能性は高まっているのか」という問いかけに対して、「もしトゥキディデスが今の米中関係、特に中国の国益を追求する姿を見ていたら、新興国(中国)と覇権国(米国)は、衝突する方向に明らかに加速している、と言うだろう」と答えている。 この米中のトゥキディデスの罠に