サイモン・クーパー●文 text by Simon Kuper 森田浩之●訳 translation by Morita Hiroyuki photo by Getty Images 【サイモン・クーパーのフットボール・オンライン】アーセン・ベンゲルの凋落(前編) 1988年、モナコの監督だったアーセン・ベンゲルは、カメルーンでプレイする若いリベリア人選手に目をつけていた。その名はジョージ・ウェア。ベンゲルは毎週、彼について大いに気をそそられる報告を受けていた。とうとうベンゲルはスタッフを現地に送り込み、ウェアのプレイを視察させた。「まず悪いニュースですが、ウェアは腕を骨折しました」と、スタッフは電話で言った。「いいほうのニュースは、彼はそれでもプレイしたということです」 ベンゲルは気に入った。ウェアはさっそくモナコにやって来て契約書にサインしたが、なぜか冴えない表情で座っていた。だって