「分人」というコンセプトにもとづき、人間の生死について語った小説。これすばらしい作品です。小説なので読書メモはあまり相容れないのですが、個人的に残しておきたいと強く思ったのでご共有。 「分人主義」という救い ・「死は傲慢に、人生を染めます。私たちは、自分の人生を彩るための様々なインク壷を持っています。丹念にいろんな色を重ねていきます。たまたま、最後に倒してしまったインク壷の色が、全部を一色に染めてしまう。そんなことは、間違ってます。」 ・「どんな人生でも、死に方さえ立派であれば、立派な人生だ。—それは、人を破滅させるしそうです。戦争になると、政治家はこの考え方を徹底させます。たとえこれまでの人生が不遇であっても、最後に国家のために戦って死ねば、国家は立派な人間として、あなたの人生を全面的に肯定する、と。恐ろしい、卑怯な嗾しです。」 ・「自分を隅々まで掌握して、或る人格を拵えたりするなんてこ