低迷する日本経済を憂う声は多い。だが、当初は批判的だった世界の経済学者が、「長期停滞」状態にある日本経済は思うより合理的であり、持続可能な状態だと再評価している。その理由とは──。 日本に起きた「不思議な現象」 「もっとも決定的な繁栄の証はどんな国においても、その住民数の増加である」 アダム・スミスは1776年、『国富論』にそう書いた。その後、デヴィッド・リカードとトマス・マルサスは、食糧の供給が追いつくかどうかをめぐって激しく応酬し合った。そして1937年までにはジョン・メイナード・ケインズが「将来の人口減少が経済に悪影響をもたらす」と警告していた。 日本はこの問題における“炭鉱のカナリア”である。1980年代の日本経済の繁栄は世界を震撼させた。しかし1990年代にバブルがはじけると、国の負債がふくらみ、デフレーションが始まった。欧米諸国の多くの人々は、日本は負債を抑え込むことができず、