愛をテーマにした米紙「ニューヨーク・タイムズ」の人気コラム「モダン・ラブ」。読者が寄稿した物語を、毎週日曜日にお届けします。 犬を飼うということは、命の責任を持つということだ。その責任を面倒だと思っていたはずなのに、妙な縁から保護犬を飼うことになった書き手は、地味だけどかけがえのない人生の哀歓を共に味わい──。 殺されそうな犬との出会い よく行くテキサス州オースティン都心のランニングコースの近くに、地域の動物保護施設がある。そこに入ったとき、その犬は僕の左隣に置かれたケージのなかで座っていた。それが彼との最初の出会いだった。犬の里親になるつもりはなかった。ただ水を飲むために立ち寄っただけだった。 僕が走るのは健康のためではなく体型を維持するためで、最近はストレスを解消するためだ。当時の僕は婚約中だったが、フィアンセとの関係は冷めはじめていて、しょっちゅう言い争いをしていた。 動物保護施設の