見えない壁 突き破った2010年9月6日14時54分 印刷 ソーシャルブックマーク 上川あやさん 野宮亜紀さん 心は女なのに、男の体で生まれる人たちがいる。 2003年2月の朝、上川(かみかわ)あや(42)は東京都内の私鉄駅前に立つと、意を決してマイクに声を放った。 「私は女性として暮らしています。でも戸籍は男性です」 世田谷区議選が迫っていた。立候補を決めた上川は35歳、化粧をし、長い髪が赤いスーツの肩にかかっていた。通勤客がちらりと見ては、けげんな顔で改札口に急いでいく。 趣味で女装しているわけではない。小さな頃から心は女だった。兄も弟もボーイスカウト、父は隊長だったが、次男の上川だけは可愛い人形にひかれ、母と台所に立つのを好んだ。 中学生になると、変わる体と声が耐え難かった。鏡に映る裸は自分とは思えない。のど仏が嫌で、人に見られたくないと終始うつむき加減になった。 授業も上の空、でも