「博物館行き」という言葉にみられるように、現代では「博物学」とか「博物学者」と呼ばれるのは、あまり名誉なことではないかもしれません。しかし、自然史(ナチュラルヒストリー/natural history)を研究している学者を、ダーウィンやウォーレスの流れをくんでいる者として敬意をこめて「博物学者」と呼びたいところです。 特に、ダーウィンやウォーレスは、野外で観察したデータや文献情報に基づいて、さまざまな理論(仮説)を提唱してきました。このような研究スタイルは、何も19世紀の博物学者に限ったものではありません。ヴァーメイ博士(Geerat J. Vermeij)もこのようなアプローチを行う研究者の一人です。例えば、彼は高緯度海域よりも熱帯海域に生息する貝類の殻が硬くその殻口が複雑に入り組んでいることに注目しました。博物館の貝殻標本を丹念に調査し、貝殻に残された傷跡が熱帯域では多いことを発見しま