東京電力福島第1原発事故から2カ月後、政府の資金援助を受けて東電が被災者に賠償を進める枠組みが構築された。震災直後から内閣官房で原子力損害賠償支援機構法(現在の原子力損害賠償・廃炉等支援機構法=原賠機構法)の制定に関わった元経済産業省官僚の北川慎介氏(62)に、賠償スキームの検討過程や東電の破綻処理の是非について聞いた。 ――2011年4月、東京電力の損害賠償や経営支援について検討する「原子力発電所事故による経済被害対応室」が新設され、室長に任命されました。 賠償できるか否か ◆チームの仕事は、損害賠償の仕組みと、誰にいくら支払うかの基準を作ることだった。もともと原子力事業者の賠償責任を定めた「原子力損害賠償法(原賠法)」があるが、「異常に巨大な天災地変」が原因の場合は電力会社が免責になるという例外規定は適用しない方針が既に決まっていた。かといって巨額の賠償を負う東電が破綻したら、賠償自体