父の前歯がヤニ色だったけどいつもキラキラしてたことを思い出した。そういえばあの歯は継歯だったのだ。本人によれば池袋ですったもんだの喧嘩をした時に折れたもので、母の両親(私の祖父母だが)に結婚したい旨挨拶しに行ったその日に折れたままであったところのその歯なのであった。たぶん。いかにも村上春樹を読んでいそうな世代のやることだと思う。もちろんその折れた歯の事実は祖父母の顰蹙を買った。 旦那が私のあご骨の形が自分のと全然違うと言って感心していた。「健康そう」なあご骨の形らしい。それ自体は全然よくわからない言い草だが、我々もこのようにしてお互いの骨格などを覚えていくんだと思った。子供の時父の歯を見た以上に、吸い込む気持ちで旦那の色々を覚えることができるだろうか。そしていつか死んで、誰も自分を覚えている人はいなくなり、この記憶もこの世からは無くなるのだと。 いつか子供ができて、消えるはずの骨格の記憶な