行政として、法律や制度を改正して社会を変えたいと思うとき、時代の半歩先を目指すことが必要だと思う。ゼロ歩では意味がないし、一歩先では進みすぎて実現が難しいからだ。 私がかつて担当した育児・介護休業法の改正。3歳までの子を持つ労働者に対して短時間勤務制度を設けることの義務化や、子の看護休暇制度の拡大、介護休暇制度の創設など、改正内容は多岐にわたるが、労使間での調整が一番難航したのが男性の育休促進(妻が専業主婦でも一歳まで育休が取れる等)だった。 育児に伴って女性が利用できる休業・休暇制度は、実は、多くの大企業で既に法律を上回る社内制度が実施されていた。短時間勤務制度はもちろん、3歳まで育休が取れる、という制度を設けている企業も少なくない。ところが、男性が育休を取るという習慣は、大企業も含めてまだほとんど普及していない。だから、女性の権利を拡大するよりも、男性の権利を拡大する方が、企業にとって