なぜ、還暦を過ぎた白髪姿の男は見知らぬ若者を背後からレンガ入りのバッグで殴りつけたのか-。新聞配達員の男性に暴行を加え現金を奪ったとして、強盗の罪に問われた無職男(62)の裁判が6月、東京地裁であった。職を失いネットカフェで寝泊まりの生活を続けていた男。知人の支援でようやくアパートに入居するもすぐさま家賃の支払いに困り、犯行を決意したという。懲役3年執行猶予5年の有罪判決を受けた男を、そこまで追い詰めたものは何だったのか。(太田明広) 競馬などで借金140万 今月1日。東京地裁529号法廷の証言台に立った白髪姿の男は、起訴状に対する認否を裁判官から問われると、「間違いございません」と直立姿勢のままはっきりした口調で認めた。薄い灰色の長袖シャツをグレーのパンツの中に入れた姿。実際の犯行を想像できないほどのきゃしゃな体格が印象的だった。 起訴状などによると、男は今年4月3日午後4時45分ごろ、