ソ連が西側のエージェントを使って米国の政治動向をコントロールする。冷戦時代にそんな小説が書かれていたら、とんでもなく陳腐なストーリーと思われたことただろう。しかし、現在は違う。ロシアがケンブリッジ・アナリティカ(CA)という会社を使って、トランプの大統領選に大きな影響を与えたのである。 そんなもの陰謀論のたぐいではないかという人にこそこの本を読んでほしい。ぶっちぎりのリアリズムだ。なにしろ、知らず知らずにそのプロジェクトに巻き込まれ、命懸けでそのことを内部告発したクリストファー・ワイリーが著者なのだから。 ピンク色の髪に鼻ピアスといういでたちのワイリーは先天性の疾患で肢体が不自由、そしてゲイのカナダ人だ。そういった出自がCAの仕事に携わり、内部告発するにいたったことに大きな影響を与えたという。 CAをウィキペディアで調べると「かつて存在したデータマイニングとデータ分析を手法とする選挙コンサ