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  • ご近所助け合いをする『樹木たちの知られざる生活』 - HONZ

    仲間内で互いに助け合うこともあれば、コミュニケーションもとっている――ドイツの森林管理のプロが長年見てきた樹木の驚愕の生態がここに! 最新のサイエンスの知見で、樹木の持つ驚くべきコミュニケーション能力や社会性を解き明かす。知らないことだらけの森の世界へ、ようこそ。 ドイツで2015年に出版されて以来ベストセラーとなっている書の著者、ペーター・ヴォールレーベンは、1964年ドイツのボン生まれ。ボンといえば旧西ドイツの首都だったくらいだから、都会生まれ都会育ちだ。「だからこそ」自然に興味を持つようになり、大学で林業を専攻したそうな。 卒業後は、ドイツ西南部の州、ラインラント=プファルツ州の営林署で20年以上公務員として森林を管理した。だが、生態を考えない一律的な植林や害虫駆除剤の散布など、人間の都合や採算だけで行われる林業に疑問を感じ、行政官としての限界を感じた彼は独立する。ドイツ公務員

    ご近所助け合いをする『樹木たちの知られざる生活』 - HONZ
  • 『宇宙の覇者 ベゾスvsマスク』アマゾン創業者とテスラ創業者。宇宙ビジネスの覇者になるのは? - HONZ

    アマゾン創業者のジェフ・ベゾスと電気自動車製造会社テスラ創業者のイーロン・マスク。太陽が昇るどこかの惑星(または衛星)を背景に2人が対峙している表紙は鮮烈だ。どちらかがほかの星に降り立つ日も近いことを暗示しているようだ。 それぞれの個人資産は十数兆円と2兆数千億円。政府機関を凌駕する力をもつといわれる55歳と47歳。二人は人類にとってどんな存在になるのだろう。そして人類はどこへ連れて行かれるのだろう。 ジェフ・ベゾスはアメリカ生まれ。SFファンだった少年は、最優秀の成績で高校を卒業し、名門プリンストン大学で物理学を学ぶようになる。コンピュータ科学と電気工学の学位を取得して金融界に飛び込んだ。 いっぽうのイーロン・マスクは南アフリカ生まれ。10歳でプログラミングを習得し、高校を卒業し、その後アメリカのペンシルバニア大学へと進んだ。物理学と経済学の学位を得て卒業し、即座にベンチャービジネスを立

    『宇宙の覇者 ベゾスvsマスク』アマゾン創業者とテスラ創業者。宇宙ビジネスの覇者になるのは? - HONZ
  • 『吃音 伝えられないもどかしさ』吃音者の著者が当事者たちの現実に迫る - HONZ

    思い起こせば何人も「吃音」の人に出会っている。小学校の同級生、部活の仲間、会社の同僚、仕事先の担当者。だからと言って不快になることはなく、会話の仕方に気を付けるだけだった。彼らがこんなに悩んでいたということを全く知らなかった。 マリリン・モンローが吃音であることは、何かで読んだ記憶がある。セクシーなしゃべり方は吃音が関係していた可能性があるという。『英国王のスピーチ』という映画ではジョージ六世の吃音を治そうとする奮闘が描かれている。 吃音の障害を持つ人は国内に100万人いる。会話でのコミュニケーションがうまくいかないことで、自殺を考えるまで追いつめられる人がいることに驚かされた。 吃音者は言葉を発しようとすると喉の当たりが硬直してつっかかるという。「ぼく」と言おうとすると「ぼ、ぼ、ぼく」と一語が繰り返される「連発」、「ぼーーく」と伸ばす「伸発」、「……(ぼ)く」と出だしが出ない「難発」と症

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  • 『日本の「中国人」社会』在日中国人が映し出す 日本の課題と可能性 - HONZ

    73万人。日に住む中国人の数だ。鳥取県、島根県の人口よりも多く、高知県とほぼ同数というから驚きだ。横浜市には全校児童の約4割が中国籍の公立小学校もある。 日常的にも中国人と接する機会は増えている。コンビニエンスストアや居酒屋の店員の多くは中国人だ。 日の大企業が中国籍の大卒社員を積極的に採用し始めて久しい。繁華街でも店員と客の大半が中国人という料理店を目にするようになった。 このように日では急速に中国人社会が形成されているわけだが、彼らは果たしてどのような思いで日に来て生活し、生き抜こうとしているのだろうか。 書に登場する中国人の職業や来日した理由はさまざまだ。通販会社の社長から会社員、マッサージ師、行政書士、アニメの声優、大学生まで多岐にわたる。 ジャーナリストとして中国人コミュニティーと多くの接点を持つ著者は、丹念な取材で彼らの音を炙(あぶ)り出し、等身大の中国人を描き出す

    『日本の「中国人」社会』在日中国人が映し出す 日本の課題と可能性 - HONZ
  • 柔らかな白い部分に触れる 『イベントの教科書』 - HONZ

    モノ消費よりコト消費。呪文のように、そう言われた時期があった。その切札が「イベント」だった。並べているだけではモノが売れなくなり、イベントなどの体験を売ることでお得意さんやコミュニティを作ることの重要性を説く主張である。 当時、私もそれに大いに共鳴し、50件以上のイベントを企画してきた。ただ、私自身そうだが全体的な勢いは、弱くなってきた印象がある。その真っ只中で汗を流してきた私には、その理由がハッキリとわかる。 イベントの準備には手間がかかる。単体でのコストパフォーマンスは決して高くない。私は幸運なほうだったのだが、満員札止めの大盛況イベントを実施しても会社に戻って褒められる人は少ないのだ。それが、イベント企画の仕事の現状なのである。 これまでのモノサシが使われている限り、イベントの仕事は傍流であり続ける。コト消費という新しい旗を掲げる人がどんなに多くても、それが傍流である限り、後に続く人

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  • 『ソッカの美術解剖学ノート』全クリエイターにおすすめ - HONZ

    韓国では著名なイラストレーターである著者が、31歳から40歳まで9年をかけて完成させたのが書『ソッカの美術解剖学ノート』である。 骨や筋肉や内臓など、人体構造について「なぜ今の形になったのか」に言及されているのがポイントであり、その知識をふまえイラストで絵の描き方を伝えている。書では人体の仕組みを知れるのと同時に、各部位がどう動きその形状になったのかが楽しく理解できる。 この楽しさというのが重要であり、「イラストの図解が付いた、とんでもなく面白い人体」と言ったほうがイメージとして伝わりやすいかもしれない。 一般的には、人体やイラストといえば「このように描きましょう」と、一方的に描き方を説明するものだ。一方で書は、目を描く際は「西洋人のまぶたは薄く、瞳孔がよく見える構造となっています。対照的に東洋人はまぶたが厚く、瞳孔がよく見えないため何を考えているのか難しくなり、神秘的なイメー

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  • 『9つの脳の不思議な物語』脳が脳自身を理解できた日はきっと最高にロマンティック - HONZ

    変だと思われるかもしれないが、評者は自分の人生より他人の人生に興味がある。自分の中では考えもしなかった生き方や着眼点、思考法を知ることにえもいわれぬスリルを感じるのである。読書が好きなのもそういう理由だ。 書の著者も、人々の人生にずっと関心を持ってきた。その好奇心が高じて、イギリスのブリストル大学では脳の研究に没頭し、神経学の学位を取得。卒業後は科学雑誌で編集者を勤め、現在はフリーの科学ジャーナリストとして活躍している。当たり前の話だが、人生と脳は密接な関係にある。なぜなら人間の感覚や動作、経験、記憶、もっと言えば今この文章を読んでいるあなたが見ている世界も抱いている気持ちもすべて、頭蓋骨の中のたった1200~1500グラムほどのブヨブヨした塊が司っているからだ。 書は、著者の最大の興味である「特別な脳」、すなわち普通の人とは違う特殊な能力や体験をもたらす脳を持つ人たちに会うべく世界各

    『9つの脳の不思議な物語』脳が脳自身を理解できた日はきっと最高にロマンティック - HONZ
  • 『京料理人、四百四十年の手間「山ばな 平八茶屋」の仕事』料理とは手間の文化、修業とは手間を学ぶこと。 - HONZ

    四条河原町から京都バスに延々と乗って20番目の停留所。そこが平八前になる。若狭街道、通称、鯖街道は交通量が多く、バスから降りたらすぐに道のわきに寄らないと危ない。 「平八茶屋」の暖簾がはためく大きな家があるのだけど、最初は入り口に戸惑う。向かって左側の蒼とした木の下を通ると、そこから広く「山ばな平八茶屋」のお庭が見通せる。お部屋に通されると、外には高野川が流れている。時間の流れがゆるやかで、時代が違っているような気がする。 著者の園部平八は20代目の当主である。創業は天正4年(1576年)というから440年の歴史を誇る京都の老舗料亭「山ばな平八茶屋」。天正4年は琵琶湖の畔に織田信長が安土城を築城し始めた年だという。安土城によって京都の治安が格段によくなり、平八茶屋の先祖はここに茶屋を開業したのではないかと、当代は推測する。京に入るための七口のひとつ、大原口から一里の場所にある。 山ばな平

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  • 『宇宙の果てまで離れていても、つながっている 量子の非局所性から「空間のない最新宇宙像」へ』 - HONZ

    『宇宙の果てまで離れていても、つながっている 量子の非局所性から「空間のない最新宇宙像」へ』編集部解説 この世界から<空間>が消えたなら? 想像してみよう。「もし、この世界から<空間>が消えてしまったら?」・・・。空間がなければ、距離もない。こちらもあちらもない世界ーーあらゆるものは宇宙の果てまで離れていても、つながっているだろう。当然、あなたとわたしもなく、モノ固有の境界も性質もなくなる。光速の壁は超えられて、時間すら反転可能かも知れない。ごった煮の超高エネルギーの闇鍋のような世界だ。 こんな恐るべき「無-空」が、じつは私たちのすぐ身近に、いたるところにあるとしたら? 最新の宇宙論は、こうした認識のほうがリアルであると示唆する。いったいどういうことだろう。 物質・エネルギーの最小レベルは、「量子」と呼ばれる。私たちの身体から宇宙の星々まで、あらゆるものは突き詰めれば量子から成っている。こ

    『宇宙の果てまで離れていても、つながっている 量子の非局所性から「空間のない最新宇宙像」へ』 - HONZ
  • 進化の方向性を支配してきた「移動運動」というテーマ──『脚・ひれ・翼はなぜ進化したのか: 生き物の「動き」と「形」の40億年』 - HONZ

    進化の方向性を支配してきた「移動運動」というテーマ──『脚・ひれ・翼はなぜ進化したのか: 生き物の「動き」と「形」の40億年』 今年読んだノンフィクションの中で最高の一冊だ。人間は、鳥は、魚は、なぜ今のような形をしているのか? 偶発的な進化の賜物であって、非機能的で意味をなさない機能の集積が大多数を占めているのか? スティーヴン・ジェイ・グールドは、仮に進化の過程を再現したならば、今とは異なる生物界が現れるだろうと断言したが、当にそうなのか? 今の生物世界は、進化の偶然性に支配された一回限りのものなのか? 否、そうではない! 物理学と運動器官の繋がりから生物を捉え直すことによって、そこには歴史的な流れと明確な帰結が存在しているのだ。 生物とはつまるところ身体という物質だ。そして動き回っているときには、ニュートンの万有引力の法則、てこの原理や流体挙動の法則といった諸々の規則の支配下におかれ

    進化の方向性を支配してきた「移動運動」というテーマ──『脚・ひれ・翼はなぜ進化したのか: 生き物の「動き」と「形」の40億年』 - HONZ
  • 『YouTubeの時代 動画は世界をどう変えるか』 - HONZ

    書は2018年1月に出版された、Videocracy: How YouTube Is Changing the World . . . with Double Rainbows, Singing Foxes, and Other Trends We Can’t Stop Watching(ビデオクラシー:ユーチューブはいかに世界を変えようとしているか……二重の虹と歌うキツネ、その他の見ずにいられない流行と共に)の邦訳である。 著者のケヴィン・アロッカは、ユーチューブ社内で「カルチャー&トレンド」というチームのトップを務める人物。このチームの仕事内容については、ある求人サイト上で、「データを駆使してトレンドを追跡し、YouTube のストーリーやコンテンツを、年間数百万人ものユーザーの皆様とつなぐ」役割を果たすと解説されている。 アロッカは2010年9月にトレンドマネージャーに就任して以降

    『YouTubeの時代 動画は世界をどう変えるか』 - HONZ
  • 『西洋の自死 移民・アイデンティティ・イスラム』欧州社会を覆いつくす「欧州疲労」とは何か - HONZ

    書は、西洋社会の行く末を悲観的に予測してベストセラーとなった『The Strange Death of Europe』の邦訳である。 ここには、いま西洋社会が直面する「奇妙な死」について書かれている。 ここでいう「死」には、2つの意味が込められている。 1つは、欧州が大量の移民を受け入れたことにより、各地で西洋固有の文化的・歴史的な風景が失われ、いくつかの町や都市は、まるで中東やアフリカのような風景になってしまったこと。 もう1つが、寛容を旨とするリベラリズム(自由主義)や多文化主義の理念の下に、基的人権、法の支配、言論の自由といった中核となる価値観を共有しない人々を招き入れることによって、西洋的な価値観が失われてしまうことである。 つまり近い将来、われわれがイメージする西洋という文化そのものがなくなってしまうのである。そして、こうした奇妙な死をもたらしているのは、ほかならぬ欧州のリー

    『西洋の自死 移民・アイデンティティ・イスラム』欧州社会を覆いつくす「欧州疲労」とは何か - HONZ
  • ビジネスと恋愛って似てる?『ブスのマーケティング戦略』 - HONZ

    このはブスの自虐エッセイではない。れっきとした実用書である。 という前書きから始まるこのを私はビジネス書コーナーでみつけた。『ブスのマーケティング戦略』完全にタイトル買いだ。帯には入山章栄氏推薦との文字もあり興味を引いた。入山氏は2016年に『ビジネススクールでは学べない 世界最先端の経営学』でベスト経営書を受賞している。ブスのマーケティングとはいったいどんななのだろう? このがめざしているのは下記の2つである。 1. ブスの幸せな結婚 2. ブスの経済的な自立 ブスだと自覚をした著者が幸せな結婚を掴むために、様々なマーケティング手法を用いていく話だ。面白おかしく書かれた個人の体験談が中心のため、マーケティングを学ぶためにこのを読んでもあまり役には立たないだろう。ただモテるためにマーケティングの手法を用いるというのは確かにありかもしれないと思わされる1冊だった。 まずはプロダクト

    ビジネスと恋愛って似てる?『ブスのマーケティング戦略』 - HONZ
  • 完璧なるガイドブック『ニッポン47都道府県 正直観光案内』を片手に旅に出よう! - HONZ

    これまで隠していたが、ガイドブックを読むのがうまいと自負している。多くの人は、旅行に出かける前と旅行中に読むだけだろう。わたしの場合は違う。旅行から帰ってきて、再度、必ずガイドプックを熟読する。 そうすることによって、ガイドブックに書かれていた怪しげな情報がわかる。それ以上に、自分が発見した、ガイドブックに載っていなかったことが浮き彫りになる。この経験を繰り返すことによって、自称ガイドブック読みの達人になったのである。 では、どのようなガイドブックが優れているか。まずは、見るべき場所がたくさん載っていることが必要だ。知らない場所に行くのである。何があるかわからない。たいがいの場合は時間に限りがある。となると、できるだけ多くのことを揚げてもらって、そこから選ぶ必要がある。 つぎに、あまり説明されすぎていないこと。美しい写真がいっぱいあって、見どころが詳細に書かれていると、いざ行った時に感動が

    完璧なるガイドブック『ニッポン47都道府県 正直観光案内』を片手に旅に出よう! - HONZ
  • 齢90を超えてなお新しい作品を生み出し続けた芸術家の人生──『スタン・リー: マーベル・ヒーローを創った男』 - HONZ

    映画『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』の後編『アベンジャーズ/エンドゲーム』公開が間近に迫り、今か今かと待ちわびている昨今。そんな現在も活躍するマーベル・ヒーローの多くの生みの親であり、基盤を作り上げてきたスタン・リーの伝記が書『スタン・リー: マーベル・ヒーローを創った男』である。昨年11月に95歳で亡くなったスタンリーだが、その年齢が示すとおりに生まれは1922年のこと。第二次世界大戦を経験し、数多くの貧困や恐慌を経験し、コミックは有害図書だと大衆から叩かれてきた逆境を乗り越え、齢90を超えてなお旺盛な創作意欲に突き動かされ、時代のうねりと共に生きてきた偉大な男の人生が凝縮された一冊である。 ざっと紹介する スタンリーが生まれた1922年のアメリカはまだ第一次世界大戦の混乱からは抜けておらず、経済は停滞を続けていた時代である。年齢から考えれば当然なのだが、つい最近までマーベル

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  • 『天才を殺す凡人』会社を舞台装置にした物語論としての面白さ - HONZ

    天才について書かれたを読むことにはもどかしさが伴う。天才とは何かがわかるという理解と引き換えに、自分が天才ではないという事実も受け入れなければならないからだ。 しかし書はセンセーショナルなタイトルとはうらはらに、このセンシティブな部分のさばき方が非常にうまい。 この世界は天才と秀才と凡人で出来ているという語り口から始まるのだが、その3つの「人格」を、「創造性」「再現性」「共感性」という才能に置換し、最終的には誰の中にも潜む1つの成分として着地させていくのだ。 著者は、「凡人が、天才を殺すことがある理由。」のブログ記事を昨年2月に公開。その深い洞察で、公開後に大きな話題を呼んだ。書はその論考をさらに深め、誰もが才能を活かせる状態を作るためには何が必要であるかを、ストーリー形式で解説した一冊である。 天才は創造性を、秀才は再現性を、凡人は共感性を武器にする。そして、この3者間に、感情のジ

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  • 『最後の頭取 北海道拓殖銀行破綻20年後の真実』銀行の本分 - HONZ

    2008年の世界的な金融危機、いわゆるリーマンショックから10年が過ぎ、その記憶も風化し始めている中、今から20年前の1997年から1998年にかけて我が国で起きた未曾有の金融危機を覚えている人はどれだけいるだろうか。 今や、大蔵省銀行局・証券局、長期信用銀行(興銀、長銀、日債銀)、北海道拓殖銀行(拓銀)という組織があったことさえ知らない若者も多い。 1997年11月17日に拓銀が経営破綻した。その「最後の頭取」となった書の著者、河谷禎昌元頭取は、特別背任罪で懲役2年6ヵ月の実刑判決を受け、2009年12月7日、札幌刑務所に収監された。 バブル崩壊後、多くの破綻した金融機関の経営トップが不正融資や不良貸付に絡んで刑事責任を問われ、1995年の東京協和信用組合と安全信用組合に始まり、2003年までに経営陣が逮捕された金融機関は40近くに及んだ。 特に、1997年末から1998年までの一年間

    『最後の頭取 北海道拓殖銀行破綻20年後の真実』銀行の本分 - HONZ
  • 『お金の流れで読む日本と世界の未来』歴史は少しずつ形を変えながら、似たような形で反復する - HONZ

    ジム・ロジャーズは言う。 私は常に、歴史の流れを踏まえながら、数年先を見るようにしている。歴史の流れは、先を読む力、とりわけお金がどう動くかという未来を教えてくれる。 成功したければ、将来を予測しなければならい。 ロジャーズは、「イングランド銀行を潰した男」の異名を持つ、かの有名なジョージ・ソロスのかつてのビジネスパートナーであり、ソロスと共にクォンタム・ファンドを立ち上げた、世界的に有名な投資家である。 今は子供の教育のため、特に中国語をマスターさせるためにシンガポールに移住し、そこを拠点に世界中に自己資金を投資している。 1973年から運用を開始したクォンタム・ファンドは、10年間で40倍以上のリターンを出したと言われる伝説のヘッジファンドで、その投資手法は「グローバル・マクロ」と呼ばれる、世界各国の経済状況や金融市場の動向をマクロ的な視点で分析し、株式や債券を始めとする様々な金融商品

    『お金の流れで読む日本と世界の未来』歴史は少しずつ形を変えながら、似たような形で反復する - HONZ
  • 原爆投下の決断者は『まさかの大統領』だった - HONZ

    誰一人として、こんな普通の男が大統領になるなどとは思っていなかった。はおろか、人さえも。しかし、それが現実になった。1945年4月12日、フランクリン・ルーズベルトの急逝に伴い、副大統領から大統領に昇任した『まさかの大統領』ハリー・トルーマンがその人だ。 貧しい農家に生まれ育ったトルーマン、若い頃は失敗の連続だった。しかし、40歳を前にして、地元のボスの支援を受けて郡の判事になった頃から運気が向いてくる。紆余曲折がありながらもミズーリ州の上院議員を経て、60歳の時に副大統領に任命される。 人が強く望んで出世していったのではない。周囲の思惑や状況の中、消去法としてそうなっていっただけのことだ。副大統領に指名したルーズベルトですらトルーマンのことをよく知らなかったというのは驚きだ。 ルーズベルトはトルーマンを見下していたという。だから、副大統領とはいえ国家の重要事項は知らされておらず、そ

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  • 『宇宙の覇者 ベゾスvsマスク』歴史を加速させる男たちの熱いストーリー - HONZ

    アポロ計画から50年ほどたった今、宇宙開発は明らかに停滞している。 アポロ11号の月面着陸ミッション当時のNASA管制室スタッフの平均年齢は26歳。恐れ知らずの若者たちが活躍する活気ある組織であった。しかし、今の平均年齢は50歳ほどで、リスクを避けようとする傾向が強く、官僚気質の組織へと変貌している。 加えて、ロッキード・マーティンとボーイングの2社が政府からの受注を独占、技術革新は停滞し、複雑怪奇な契約システムにより、開発コストが異常なほど高くなっている。それが宇宙開発の停滞している原因だという。 このような状況に業を煮やした大富豪が2人いた。1人は電子決済システム「ペイパル」で富を築いたイーロン・マスク、もう1人はネット通販会社「Amazon」の創設者ジェフ・ベゾスだ。 書は急速に発展する民間による宇宙産業の姿を、2人の富豪に焦点を絞って描く。 マスクとベゾス。同じロケット開発にしの

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