東日本大震災とそれに続いて起こった福島における東電の原発事故は、これまで当然視されていた前提をいくつも覆し、見過ごされていた様々な問題を改めて暴きだした。日本にいる大多数の人たちはそれらの問題に関心を持たざるを得ないし、それはおそらく自然であると同時に、必要でさえもあるだろう。科学技術社会論(以下、STSと書く)とよばれる分野の人たちも例外ではない。現在の状況に直面し、何かをしなければという衝動を強く感じているこの分野人たちは少なくはないはずである。だが、それは一方で、機会に乗じて研究のネタを得て、名前を売る行為になってしまうべきでないし、他方で、多大の犠牲を払って得られた経験から教訓を学ぶ機会を逸し、その結果将来同じ過ちを犯すようなことをすべきではない。STSの分野は、その特色の一つである反省性(relfexivity)を生かして、一体どのような問いを問うべきなのかを批判的に検討すべきだ