親友のH君を夢中にさせた一眼レフカメラ 「ミノルタで決まりさ」と、同級生のH君は得意顔で言った。 「みんなブランドに惑わされてる」 中学2年生の夏、1971年ごろだったと思う。H君は父親に一眼レフを買ってもらえることになり、ここのところ「アサヒカメラ」のレビューページを熟読する毎日だったのだ。100%理系の頭脳を持ったH君にとってはスペックやテストの数値が総ての判断材料であり、その中で群を抜いていたのがミノルタだったらしい。 実機が見たいということで彼は僕を「日本カメラショー」に誘った。そのころのカメラショーは、全国の有名デパートを行脚するのが通例だったのだ。 僕らは土曜の放課後にデパートに立ち寄り、最上階の催事場に向かった。カメラショーは予想どおり大盛況で、ニコン、キヤノンのブースは行列ができていた。今はなきペトリ、ミランダ、コーワなどのメーカーもまだ健在で、活気にあふれていた。 H君は