手元に1冊の本がある。『カプセル1972―20222 中銀カプセルタワービル全戸図録』(中銀カプセルタワービルA606 プロジェクト)。建築家の黒川紀章(1934~2007)のメタボリズム建築《中銀カプセルタワービル》(1972)の実測調査を行い、住居カプセル140戸の図面と写真を収めた記録集だ。ページをめくると、猛烈ビジネスマン向けに作られた当初の内装デザインが残るカプセルが幾つもあり、胸をつかれた。中銀カプセルタワービルは今春から取り壊されたが、メタボリズムのみならず経済成長を走った時代精神を象徴する建築だったとあらためて思う。