北朝鮮の「核」に対抗するために、日本も「核」を以てすべきである、と説く議論は、過去4半世紀の間、北朝鮮情勢が緊迫化する局面で、間欠泉のように噴き上がっていた。 北朝鮮の核開発がいよいよ成就しつつあるそうだ。この現在の情勢下では、「『日本の核』が日本の国家としての独立や威信を担保する」という民族主義的な議論も、「『日本の核』を考えること自体が不道徳の極みである」という平和主義心情に沿った議論も、どちらも、あまり役に立つものではない。 実際、ドナルド・J・トランプ・米国大統領は、大統領選挙の最中に、北朝鮮情勢対応の方策として日韓両国の核武装に言及した。これを一例として、特に米国国内で日本の核武装を展望する声が頻繁に聞かれるようになっている。こうした声は、一面では、「唯一の被爆国」としての日本の事情に対する理解の浅さを表しているといえる。けれども、それを嘆かわしいものとして一蹴するわけにはいかな