日常生活から離れた宇宙や素粒子の研究をしていると、よくあなたのやっていることは何の役に立つのですかと言われます。正直、「またか」と思いつつも、いつものお決まりのセリフを答えます。いつか、理解が広がるように、と願いつつ。 「GPSってあるでしょう。そう、カーナビに使われているやつ。GPSは地球を回っている人工衛星からの信号を使っているので、地球の重力の影響を受けます。だから一般相対性理論の補正をいれないと、1日に数十マイクロ秒ずれていってGPSを正しく運用できないのです」 GPS58年、陽電子47年――科学の実用化は時間がかかる 上記のようなやり取りが実に多いわけですが、GPSに関しては、実用化したのが1973年なので、1915年に一般相対性理論が提案されてから58年後に社会に役立つことに使われたのです。 役に立たないと思われている、基礎のまた基礎理論も、時間が経てば役に立っています。また1