日本の伝統芸能で、今も多くの人から愛される歌舞伎。知っている人はもちろん、今からでも楽しめる歌舞伎の魅力を、歌舞伎研究で知られる早稲田大学坪内博士記念演劇博物館館長の児玉竜一さんに指南していただく連載が始まります。第1回は、大河ドラマや『半沢直樹』の活躍でも知られる市川猿之助。ワンピース歌舞伎など、歌舞伎界のイノベーター的存在である彼の凄さとは? 彼の現在を形作るその系譜とは? 市川猿之助のファミリーヒストリーを紹介します。 文=新田由紀子 撮影=市来朋久
ベルリンの壁が崩壊してから25年目となる今年、欧州に革命の喧噪が再び響き渡っている。1989年の壁の崩壊は、東西冷戦の終わりの始まりを告げた。中東欧の国々の大半が旧ソビエト連邦の覇権から抜け出し、欧州連合(EU)に平和裏に加盟していった。 ウクライナの反乱劇はまだ始まったばかりであり、まだ何幕か残っている。だがこれは、叙事詩で語られるようなあの1989年の出来事と比較する場合でも軽視できないほどの、歴史的に重要な出来事だ。ウクライナにとって、そしてEUとロシアにとって非常に大きな好機――そして非常に大きな危機――なのだ。 旧ソ連圏の崩壊後で言えば、「欧州の出番」の到来がこれほど強く予感されるのは、キエフで革命が始まった今回が初めてだ。 マイダン革命と政権転覆が意味すること キエフにおける革命的な事態の進展とビクトル・ヤヌコビッチ大統領の政権の転覆について考えるのであれば、ウクライナという国
世界の先進的な医療を牽引する、米国の国立衛生研究所(NIH: National Institute of Health)をモデルにした日本版NIHを創設し、日本の医療分野の競争力を強化しようという動きが政府内で活発化している。 その中核として独立行政法人日本医療研究開発機構(仮称)を2015年4月に創設し、1382億円の経費を一元化して扱うという方針が昨(2013)年12月に報道された。健康・医療戦略推進法案など2法案が近く閣議決定され、今国会に提出されるという。 この1月には英国のネイチャー誌に日本の若手研究者が新たな万能細胞を作成したという論文を発表し、日本の基礎医学研究のレベルの高さが世界的なニュースとなった(nature)。このような明るい話題の反面で、研究関連の不祥事の報道が相次いでいる。 その後の高血圧治療薬バルサルタン事件 筆頭は、本連載でも過去に取り上げたノバルティスファー
2013年末から2014年の冒頭にかけて、安倍晋三首相の靖国神社参拝が内外に大きな波紋を広げた。この参拝を中国と韓国の政府が公式に激しく非難した。米国のオバマ政権も「失望」を表明した。ロシアやEUも政府や議会のレベルで批判の声明を出した。 日本の主要メディアでは、こうした「点」をつないで、「日本は安倍首相の靖国参拝のために世界で孤立した」(朝日新聞の再三の論調)と断じるような論調が多い。 だが本当にそうだろうか。 太平洋戦争の激戦地、東南アジア諸国の反応は? 靖国神社と一体化して語られる日本の軍事行動の肝心の舞台となった東南アジア諸国はどうだろうか。靖国神社が日本の対外的な軍事行動を象徴すると言うのならば、東南アジアこそ日本の首相の靖国参拝に最も激しく反発するはずだ。 ところがそうではないのである。東南アジア諸国からは、政府レベルでの今回の首相の参拝への非難は1月7日の現在にいたるまでまっ
この歴訪でまた印象づけられたのは、わが日本がアジアの大部分の地域で圧倒的多数の諸国から親近感を抱かれ、頼りにされているという現実だった。日本が憲法を改正しても、閣僚が靖国神社に参拝しても、なにも文句をつけず、むしろ協力を深めようというアジア諸国が大多数なのである。 この現実は、中国と韓国の反日姿勢をアジアでの例外として浮き彫りにすることともなった。「日本がアジアで孤立しつつある」などというのは一部の日本批判勢力の現実を歪めた主張のようなのだ。 アジア諸国は日本に「反発」していない 安倍首相は7月25日からマレーシア、シンガポール、フィリピンの3国を歴訪し、27日夜、東京に戻った。2度目の首相になって以来、1月のベトナム、タイ、インドネシア歴訪、5月のミャンマー訪問に次ぐ3度目の東南アジア訪問だった。 今回の3カ国歴訪でも、各国の日本への友好や期待が強く示された。中国の脅威に対して連帯を強化
フィリピン人の英語能力の高さと、人件費の安さを活用し、短期間に安価な費用で英語能力を向上させる。それが「リバースエデュケーション(教育の逆転現象)」だ。 前回の記事に続き、この言葉の提唱者であり、実際にフィリピン・セブ島で日本人向け英語学校「サウスピーク」を起業した柴田浩幸さん(33歳)に、どうすれば英語が苦手な日本人ビジネスパーソンが、リバースエデュケーションを活用して英語能力を向上させることができるのかお聞きしたので、ご紹介したい。 フィリピン人の訛りを気にする前に、自分の英語レベルを省みてほしい ――リバースエデュケーションの基本的な考え方を教えて下さい。 柴田 従来の留学とは、途上国の人が先進国の人に教えを乞うことを指していました。しかし、フィリピン留学ではそれが逆転します。 発展途上国の物価や人件費の安さを利用して現地で集中的に教育を受けます。つまり、先進国の人が途上国の人に教え
化学兵器使用とアメリカの軍事介入への動きによって、日本でも8月下旬からシリア情勢に関する報道が急に増えてきた。しかし、その論調にはおかしなところがいくつもある。 実は筆者は、シリアとはプライベートで長く深く関わってきた。20年前に結婚した元妻がシリア人で、その後、何度もかの国を訪問し、親族や友人を通じてシリア人社会を内側から見てきたのだ。 シリアは北朝鮮と同様の強権体制の独裁国家で、秘密警察が国中に監視網を構築し、不満分子は徹底的に弾圧する恐怖支配が行われている。言論統制も徹底され、もともと外国人記者が自由に取材できるような国ではないうえ、外国人と接する機会のあるシリア人も、秘密警察を恐れて外国人に迂闊にホンネを話すことはない。したがって、なかなかその真の姿が外国人には見えにくい。 筆者のような関わりは希少ケースと言っていいが(シリア人女性と結婚した日本人は筆者が2人目らしい)、そのためシ
安倍政権下では靖国参拝や従軍慰安婦などの「歴史的」な問題が、単に中国と韓国との間だけでなく、米国との間でも微妙な波紋を広げるようになった。 特に日本の政治指導者たちによる靖国神社参拝は、2006年頃の小泉純一郎首相時代とは異なり、米国でも批判的な反応を生むようになった。米国のマスコミや学者たちの間で、日本の閣僚の靖国参拝を「戦争の美化」や「軍国主義の復活」という言葉と結びつける反応が増えてきたのだ。 その種の批判はオバマ政権の内部にさえあるという。ちなみに前ブッシュ政権は日本の首相らの靖国参拝を否定的に捉えるという傾向をまったく見せなかった。 「外国の政府からあれこれ指示されるべき慣行ではない」 さて、そんな背景の中で、6月上旬に訪日した日本近代史研究の専門学者ケビン・ドーク氏が安倍晋三首相とも会い、改めて日本の政治指導者による靖国神社参拝を奨励した。 靖国参拝は日本を守るために戦って、命
(2013年5月16日付 英フィナンシャル・タイムズ紙) スズキの鈴木修社長は、円安への疑問を投げかけた〔AFPBB News〕 日本の円高撃退を設計した人たちが、日本の自動車業界の大御所である鈴木修氏のことを、ちょっと恩知らずではないかと思ったとしても仕方ないかもしれない。 83歳のスズキの社長は先週行われた決算説明会で、自社の利益を50%押し上げる助けになった円安そのものに疑問を投げ掛けた。 「『おい、大丈夫か』と聞きたくなるくらいの円安だ」。鈴木氏はこう述べた後、日本製造業の経済学について、円高撲滅の最高司令官である安倍晋三首相に真っ直ぐに向けられたように見えるミニ講義を一席ぶった。 「我々はインドやタイ、インドネシアに設備投資しているから、にわかに円安になったからと言って(突然日本に)戻ることはできない」 賃上げや雇用拡大への期待は報われるか? 鈴木氏のメッセージは、期待を弱めるた
2010年、米国のDVDレンタル業界の最大手、ブロックバスターと、業界第2位だったムービーギャラリーが相次いで経営破綻した。その結果、1980年代から米国人の生活の一部となっていたビデオやDVDのレンタルショップは、町からすっかり姿を消してしまった。 レンタル業界が急速に落ち目になったのは、映像ストリーミングサービスの台頭が原因だ。米国では「DVDはすでに古い」というイメージになりつつある。 現在ストリーミングサービスの最大手会社はネットフリックスである。米国内だけでも2700万人が利用している。ネット通販サイトのアマゾンも、映像ストリーミングサービスを開始した。他にも、急成長しつつあるストリーミング業界に参入しようとしている会社は数社ある。 この2月、ストリーミング業界の先頭を走るネットフリックスが、ある試みを行った。この出来事が、「テレビ界に挑戦状を叩きつけた」としてメディア業界で大き
3.11当時の原子力安全委員会委員長だった班目春樹氏(元東大教授)にインタビューした。直接のきっかけは、2012年11月、3.11当時を振り返った回顧録『証言 班目春樹』(新潮社)が出版されたことである。新潮社の説明によると、この本は班目氏の話を教え子である岡本孝司・東大大学院工学系研究科教授ら数人が聞いてまとめたものだ。著者は岡本教授になっている。 本を一読して、政府中枢で福島第一原発事故対応に関わったキーパーソンの証言として、非常に貴重な内容が含まれていることが分かった。当時官邸にいた人間の中で、班目教授は数少ない原子力の専門家である。そして原子力安全委員長(内閣への助言機関)という重要なポジションにいた。事故対応で、班目氏が分からなかったことは、他の官僚や政治家も分からなかったと考えることができる。 原発事故や住民避難対応の失敗について、班目氏にはバッシングに近い激しい非難が加えられ
(2013年1月19/20日付 英フィナンシャル・タイムズ紙) バブル崩壊後、世界の投資家にとってどうでもいい存在になっていた日本市場が息を吹き返してきた〔AFPBB News〕 日本が再び重要な国になっている。実に二十数年ぶりのことだ。 1990年代に入った頃の東京には世界最大の株式市場があり、日本の銀行や輸出業者、不動産開発業者は世界を支配していた。 それ以降、多くの投資家に関する限りは、すさまじい下落相場のせいで日本はどうでもいい存在になっていった。 ここ数年、日本の名前が出てくるのは注意が喚起される時だけになっていた。日本の教訓は、デフレが定着し、金融政策が効果を発揮しなくなり、銀行がゾンビになった時にどんなことが起こり得るかを教えてくれる。 実際、2008年の信用危機以降、欧米の中央銀行は日本の二の舞いになるのを必死になって避けようとしてきた。 投資家に見放されていた日本市場が一
ただ、前の会社で編集長になったとき、できる秘書がついたためにスケジュールをことごとく管理され、東京都内で最も人気の人間ドックに予約を入れられて、仕方なく健診に行かざるを得なくなったことがあった。 すでに40代の半ばにして、バリウムというものを飲んだのはこのときの1回だけである。 神様の思し召しか、しばらくしてこの美人秘書が結婚。彼女の夫のニューヨーク転勤で会社を辞めてしまったので、人間ドックや定期健診から再び逃れることができるようになった。 恐らく生まれながらに天邪鬼の性を両親から授かったのだろう。これが常識だと言われると間髪を入れずに反発したくなる。村社会の日本でははぐれ者だという認識は強い。 でも、そんなはぐれ者にも温かい日本は何て素晴らしいのだろうともこの歳になってつくづく思う。いまの日本には問題が山積みだけれども、決して悪いことばかりではない。 必ず解決策を提示してくれる人が現れる
(英エコノミスト誌 2012年12月8日号) 英国は大して変化のない国になった。 変化のない国になった英国の未来は・・・(写真はロンドン市内)〔AFPBB News〕 イギリス英語には、「どうしてる?」と聞かれた時に答える決まり文句がある。「別に変わりないよ(nothing much)」というものだ。 これは、面白くなりそうな会話を終わらせる方法であるか、それを生きる人にとってさえ変わり映えしないように見える人生のとっさの評価であるか、どちらかだ。 この言葉に慣れている英国人にとっても、困惑する外国人にとっても同じように難しいのは、どちらの意味が当てはまるのかを知ることだ。 現在の議会が中間点に差しかかった時点で、英国では何が起きているのだろうか? ある意味では、別に変わりがない。経済面では、一部の生物学者が進化の跳躍の間に横たわる長たらしく退屈な期間と呼ぶ静止状態にある。 本誌(英エコノ
(2012年12月12日付 英フィナンシャル・タイムズ紙) 安倍晋三氏の政治的なカムバックは、近年の日本の政治の入り組んだ歴史でもかなり奇妙な展開だ。5年前、今から数えて5代前の首相だった安倍氏が、不名誉な1年を経て突如辞任した時、同氏の返り咲きを予想した人はいなかったろう。 当時、戦時中の国の歴史を恥じない「美しい日本」を創るという安倍氏の使命は、持続的な経済停滞を気にかける国民の意識とはズレていた。 安倍氏に有利な3つの要素 それ以来、状況は大きく変わった。最も重要なのは、以前より強硬に日本の支配下にある尖閣諸島(中国名・釣魚島)を取り戻そうとする中国の姿勢だ。中国各地で暴力的な反日デモを引き起こした直近の「尖閣ショック」で、多くの日本人は新たに台頭した中国は恐れるべき存在だと確信した。 この流れは、日本は陸軍や海軍の保有を禁じる平和憲法を破棄すべきだと主張する安倍氏に有利に働く。安倍
国会論戦の席で「明後日解散する」と明言した首相は、おそらく憲政史上例がないことだろう。解散を求めていた自民党や公明党も予想だにしていなかった。民主党内でも、事前に知っていたのは岡田克也副総理、藤村修官房長官ら、ごく少数だったと言われている。輿石東幹事長ですら、当日聞かされたという。 大した決断である。「嘘つき」などという低レベルの批判は、これで一気に吹き飛んだ。自民党の安倍晋三総裁は、受けて立つとかろうじて見得を切ってみせたが、心の動揺はテレビ画面からも伝わってきた。 私の手元に、複数の閣僚経験もある自民党衆議院議員の政治資金集めのパーティーの案内状がある。日にちは12月17日で場所は都内のホテルとなっている。とぼけた案内状になってしまった。まさか12月16日の投票日の翌日に開くことはないので、中止になることは確実だ。 年内解散をあれだけ強く迫っていた自民党だが、実は腹の中では想定していな
「日本人やめたい」──昨今の政治情勢や停滞の続く経済状況から、そんなことを冗談めかして口にする人がいる。もちろん実行することはないし、実際に日本国籍から離脱することは簡単なことではない。 しかし、簡単に市民権を放棄できる国がある。米国だ。そして今年、米国の市民権を放棄する人の数が、史上最高となると予想されている。 「非国民」扱いされたフェイスブックの共同設立者 2000年以来、年間200人台から多い年でも700人台だった米国籍離脱者および永住権放棄者の数は、2011年におよそ1800人となった。2012年はそれを上回る勢いで増えているという(内国歳入庁)。 数としてはさほど多いように感じないかもしれないが、米国が二重国籍を認めていること、そしてこれまで世界で最も人気のあった国籍だったことを考えると、この変化を軽く見ることはできない。 突然この問題が脚光を浴びたのは、ある若き億万長者が「節税
その1つは、米国内に限ってのことだが昨年の夏頃から、「フェイスブックのピークは過ぎた」という言説が出回っていた。 今年1月から4月までの1カ月平均の利用者数は、昨年下半期の平均と比較してすでに減少し、「熱が冷めた」との意見もある。 そして米国で取材を続けると、フェイスブックに対する悲観論を口にする人は1人や2人ではなかった。 「パーティーは終わった」という表現を使う人もいる。米国以外の各国では依然として利用者数は増え続けているが、本家ではすでに「飽きた」という声が多数聞かれた。 2つめは投資銀行アイアンファイア・キャピタルの創業者エリック・ジャクソン氏の消滅論だった。 あと5~8年で消滅する 「フェイスブックは今後5年から8年で完全に消滅すると思う。それはIT業界の流転の速さによるもので、フェイスブックは完全に飲み込まれる」 IT業界に通じた氏は、業界の将来を見据えるだけでなく、売り上げの
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