『第五十回帝国議会治安維持法案議事速記並委員会議録』(社会問題資料研究会編)を読んだ。今国会の重要法案の一つである共謀罪法案について、これを戦前の治安維持法になぞらえる議論があったので、この機会に通読してみたわけだ。 治安維持法の歴史的評価については、もしわが国が共産主義国となっていればその惨禍は計り知れなかったのであり、治安維持法はそれを防ぐ上でそれなりの役割を果たしたのだという肯定的評価と、わが国のファッショ化に道を開き、幾多の無辜を鼎かくに送った天下の悪法だという否定的見解が対立している。私は、治安維持法がなくとも日本の共産化は防げたと思うし、この法律が、戦前の政党政治の衰弱を促進したとも考えている。 治安維持法は、誤解されているように藩閥内閣や軍部の強制によって作られたものではない。政党政治の興隆期に、議会の自由な言論を経て成立したものだ。それ故にこそ、われわれが共謀罪という新たな