「国家の命運は金融にあり」(上・下) [著]板谷敏彦 「コレキヨ」さん、やはり面白かった。読み進めるうち、やがて楽しく、そして哀(かな)しい気分になった。経済人が書いた伝記小説で読みやすい。色々なことに携わったコレキヨの多面性を、エコノミスト連載の形で一つ一つわかりやすく取り上げる。どこからでも気軽に読めるのだ。 実はコレキヨの理解を難しくしているのは、『高橋是清自伝』という口述本(これが抱腹絶倒の面白本)があるからだ。著者も注意深く指摘しているように、コレキヨ自らの語りの中に、我々は手もなくうっちゃられてしまうからだ。生まれてこの方、コレキヨは英語に取りつかれ、若いころにアメリカにやられる。これ自体まっとうではない。 「帰国して教師、落ちぶれて芸者のヒモ、相場師」と著者が述べるように、若くしてロクなものじゃない人生を送る。やがて後の特許庁の役人となり、日本の特許制度を作り上げる。何と相場