ブックマーク / kamiyakenkyujo.hatenablog.com (15)

  • 松竹伸幸『慰安婦問題をこれで終わらせる。』 - 紙屋研究所

    このはひとことでいえば、慰安婦問題についての左翼による韓国批判である。日の右派がやる韓国批判では何の新鮮味もないだろうが、左翼、しかも「日帝国主義の植民地支配」と厳しく闘争してきた日共産党の元政策スタッフ(現在は退職している)がやる韓国批判なのだから、一度はのぞいてみたいと思わない方がおかしい。 シロウトの日国民にとっての慰安婦問題 いわゆる「慰安婦」問題は、「難しい」というのが第一印象である。定義やカテゴライズをよく知らないと発言できないような雰囲気がある。 たとえば 政府が発見した資料の中には、軍や官憲によるいわゆる強制連行を直接示すような記述も見当たらなかった という命題は正しいだろうか、正しくないだろうか。 「正しくない」が正解である。 なぜなら、インドネシアのジャワ島でのいわゆるスマラン事件中国・桂林での事件では、日側の公文書はなかったが、外国側の公文書(バタビア臨

    松竹伸幸『慰安婦問題をこれで終わらせる。』 - 紙屋研究所
  • 鈴木大介『最貧困女子』 - 紙屋研究所

    九州の地方都市住まいのぼく。 家の近くにある公園が、階上にあるぼくの家から見える。 つれあいによれば、その公衆トイレの前で深夜に20代くらいの女性が立って、男性といっしょにトイレに入り、一定時間たつとまた別の男性とトイレに入っていくのが見えた。 あれは買売春の現場ではなかろうか。 書に出てくる「最貧困女子」とは、裏表紙にその定義が簡潔に書いてある。 働く単身女性の3分の1が年収114万円未満。中でも10〜20代女性を特に「貧困女子」と呼んでいる。しかし、さらに目も当てられないような地獄でもがき苦しむ女性たちがいる。それが、家族・地域・制度(社会保障制度(という三つの縁をなくし、セックスワーク(売春や性風俗)で日銭を稼ぐしかない「最貧困女子」だ。 ロジカルなルポ 読んで思ったことは二つ。 一つは、とてもロジカルなルポだということ。どういう意味か。 このはとても「自己責任」論を強く意識して

    鈴木大介『最貧困女子』 - 紙屋研究所
  • 竜田一人『いちえふ 福島第一原子力発電所労働記』 - 紙屋研究所

    「週刊プレイボーイ」のマンガ評「この漫画がパネェ!!!」で竜田一人『いちえふ 福島第一原子力発電所労働記』(講談社)について書いた。書のオビでも(小さく、だけど)紹介されている。*1 記録マンガとしてすぐれている ぼくは、『いちえふ』について、基的には記録マンガとしての素晴らしさを評価した。これはすでに多くの人が指摘している通りである。 映像=絵としての記録、というシンプルな意味である。 文字で読んだ原発のルポでは、空間的な認識をどうしても起こしにくい。30年以上前のルポである堀江邦夫『原発ジプシー』(現代書館)は後述するが大変すぐれた潜入ルポである。しかし、文字によって得られる空間イメージはやはりかなり制限される。ところどころ、作業の写真が載っているのだが、昔の写真であるためか、全体的に黒っぽくてわかりにくい。増補版p.164の写真など何がなんだかわからない。 竜田『いちえふ』では、

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  • 適菜収『キリスト教は邪教です! 現代語訳『アンチクリスト』』 - 紙屋研究所

    適菜収によるニーチェ『アンチクリスト』の現代語訳『キリスト教は邪教です!』を読んだ。 ニーチェが言いたいのは、イエス人はまあまだいいとしても、そのあとを受けたパウロが、そのイエスの考えをイエスと似ても似つかぬものにつくりかえてしまい、それが西洋文明を覆い、やがて近代文明のベースにまでなっちゃったってことだ。 それはキリスト教攻撃というよりも、弱者がルサンチマンをためこんで「平等」とか「愛」をふりかざし、力の強い高貴なものを束になって襲いかかっていることを批判している。 つまり民主主義とか社会主義とか革命といった原理を、ふるえあがるほど嫌っているということだ。そういうことがベース。石原慎太郎みたい。 その中身はともかくとして、適菜による「現代語訳」は面白かった。 一節を紹介しよう。こんな調子。 『新約聖書』を読んだ後では、どんなもすがすがしく感じます。 要するに、彼らは正真正銘のバカなの

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  • 児童マンガとしての『よつばと!』 - 紙屋研究所

    うちの娘は5歳になる。この年齢は、なんと、あずまきよひこ『よつばと!』の主人公・小岩井よつばと同じだ。よつばは、ひらがなとカタカナが読めるようであるが、うちの娘もどうにか仮名は読めるようになった。だから、ふりがながふってある『よつばと!』は読めてしまうのである。 よつばと!(11) (電撃コミックス) 作者:あずま きよひこKADOKAWAAmazon そして、ハマった。 いや、こんなにハマるものかというくらいハマっている。 マンガの早期英才教育……などというわけではないが、ためしに与えてみたら、面白いくらいに夢中になっている。娘がいれこんでいるのは『ドラえもん』『モジャ公』(以上、藤子・F・不二雄)、そしてこの『よつばと!』である。保育園から帰ってくるなり、リュックサックを投げ捨てて、この3冊のどれかを熱心に読んでいる。『じょしらく』とか『演劇部5分前』みたいなマンガもぼくがポイと床にお

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  • 「おおかみこどもの雨と雪」 - 紙屋研究所

    帰省中に娘が寝た後、つれあいといっしょに映画「おおかみこどもの雨と雪」を観に行った。人間であり狼である狼男と結婚した、大学生・花(ハナ)が狼男の子どもである雪(ユキ)と雨(アメ)を生み育てる物語である。 以下はネタバレをする。結末がわかってもいいという人だけ読んでほしい。 ハナの視点で観る つれあいもぼくも、この映画をハナの視点で観た。 子どもたちが生まれるとほどなく狼男は事故で死んでしまい、ハナはシングルマザーとして苦労しながら2人の子どもたちを育てる。「おおかみこども」であることを人々に気取られないようにするので、母子はほとんど社会と隔絶して生きねばならない。医療も社会支援も一切得られない都会のアパートで生活し、ビクビクしながら時たま外を散歩するというほどである。 ぼくらは小さな子どもを持つ親として、働き手である夫を失い、自身は幼子を抱えて働きにも出られない、まさにハナの子育ての苦労に

    「おおかみこどもの雨と雪」 - 紙屋研究所
    hasetaq
    hasetaq 2012/08/18
    「おおかみこども」という存在をどう解釈するかという事と、この映画全体が「花からの伝聞と雪の回想を雪が語る」という信用出来ない語り手要素を理解しているか、という2つのハードルがあるのかなと思った
  • 「頭がいい」とはどういうことか──貧困、学歴、無料塾 - 紙屋研究所

    ネット上で生活保護をめぐる話から親と子の関係の話に話題がとび、さらに「頭のよさ」についての話題にもなっているので、ぼくもちょっと書いてみる。 DQNの教育問題について、またはわたしもDQNであるということ - はてなの鴨澤 環境という足枷 - G.A.W. 「頭がいい」とはどういうことか。 これはちまたで「勉強できるやつが頭がいいとは限らない」という言葉で、「勉強ができる≠ 頭がいい」というふうに認識されている。ぼくもよく言われたよ。「あんた大学出てるのに、そんなこともできないの(知らないの)」。 じゃあ「頭がいい」って一体なんなんだ、ということになる。 二つの「頭のよさ」──(1)「学者的に頭がいい」 「頭がいい」には二つある。 一つは「学者的に頭がいい」ということ。 もう一つは「うちのオヤジ的に頭がいい」ということ。 結論から先にいえば、前者は概念を体系化できる能力であり、後者は目的を

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  • 架空インタビュー2.0 『一般意志2.0』ふたたび - 紙屋研究所

    東浩紀が『一般意志2.0』についてインタビューを受けている。 「一般意志2.0」が橋下市長の“独裁”を止める?―現代思想家、東浩紀インタビュー(BLOGOS編集部) - BLOGOS(ブロゴス) 全体に「言い訳解説」的になっているのは、誤解というか攻撃というか、マイナスの風がものすごいから、一言言っとくか、という感じなのだろう。知らないけど。 そのなかで明らかにぼくの記事に対する反論もある。 東浩紀『一般意志2.0 ルソー、フロイト、グーグル』 - 紙屋研究所 「しょぼい」という批判にたいして「しょぼくない」と言ってるわけだが、「具体構想がしょぼい」といったのはぼくだから、ぼくの記事への批判だろう。違うの。 んでもって、誰もインタビューしてくれないので、架空のインタビューをしてみた。 東の具体構想の二つの問題点 ――東さんが“しょぼいというが、お前の想像力が足りないんじゃねーの”と批判して

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  • 篠原ウミハル『図書館の主』 - 紙屋研究所

    『モジャ公』を与える 4歳の娘に「マンガの英才教育」を施そうと、全集版で出た藤子・F・不二雄の『モジャ公』を買い与えた。この寒いのに、「早くフロに入りなさい」という親の忠告もそっちのけで、脱衣場で裸になったまま『モジャ公』を広げて読みふけっている。 母親であるつれあいは、マンガに夢中になる娘にイヤな顔である。絵を読まなくなったらどうしよう、というわけだ。 そういえば、保育園の先生たちはどう思うんだろう、と考えた。 連絡ノートに「昨日、娘にYouTubeでSMAPの『ベスト・フレンド』を聴かせていると…」と書くと「電子音はまだ早いので、大きくなってからの楽しみにとっておきましょう」と書いてくるほど、「発達段階にふさわしい保育」への強烈なこだわりがある。もちろんわが娘の担任だけでなく、園全体の方針だ。 「文集ではテレビやアニメキャラクターの話題は書かないでください」とか「歯ブラシやコップには

    篠原ウミハル『図書館の主』 - 紙屋研究所
  • 東浩紀『一般意志2.0 ルソー、フロイト、グーグル』 - 紙屋研究所

    「オルタ」という雑誌で東浩紀の「民主主義2.0」について書いたことがある(2009年11-12月号「メディアから時代を読む #9」)。 そのときまだ茫洋としていた問題について、ぼくは批判や疑問を書き連ねたが、定義づけや具体案をふくめ、これらのぼやけていたものは東の近著『一般意志2.0』で一定の輪郭を与えられることになった。 先にぼく流にざっくりと中身をまとめてみよう。 ルソーの「一般意志」は、あるアルゴリズムにしたがって生まれてくるグーグルのページランクみたいなもので、人々の無意識のデータベース*1から抽出されてくる数学的な結論のようなものである。*2 しかしそのような一般意志は大衆の欲望の集積であり(グーグル型民主主義)、それで政治を運営するのは危険。専門家や政治家たちの熟議(ミクシィ型民主主義)と相補的に用いるべき。民主主義2.0(=ツイッター型民主主義=グーグル型民主主義+ミクシィ型

    東浩紀『一般意志2.0 ルソー、フロイト、グーグル』 - 紙屋研究所
  • 安藤健二『パチンコがアニメだらけになった理由(わけ)』 - 紙屋研究所

    パチンコ屋の前を通り過ぎると確かにやたらアニメとのタイアップが目に入り、気になっていた。だけど一番気になり出したのは、やっぱりテレビCMでこのタイアップが激増したことだ。 参考:ヲチモノ- アニメのパチンコ・スロットがどれだけあるのか集めてみた http://watchmonoblog.blog71.fc2.com/blog-entry-479.html ただし、それはアニメに限らない。「加山雄三」であったり「ウルトラセブン」であったり。 この現象に注目した最初はやはり「冬のソナタ」とのタイアップだった。*1パチンコという、サラ金と似たようなダークイメージのものに、こんなメジャーな作品がよくタイアップを許したものだという驚愕を覚えたし、「はあー、すると中高年のオバサンたちがずいぶんパチンコにハマっているわけね」という、そこから「読み取れる」情報があったからだ。 いま、「冬のソナタ」というパ

    安藤健二『パチンコがアニメだらけになった理由(わけ)』 - 紙屋研究所
  • 東京都の青少年条例について思う - 紙屋研究所

    西日新聞の投書 先日(2010年12月9日付)の西日新聞の投書欄に「過激な性表現 規制やむなし」という70歳の人の投書が載った。もちろん東京都の青少年条例の件だ。 投書は、表現の自由という主張に一定の理解を示しつつも、規制はある程度はやむを得ないとする。 私には最近の性に対する感覚は異常に映る。一昔前なら非難された「できちゃった婚」や「援助交際」という名の売春。言葉にも意識にもモラルや罪の意識が薄い。それらが規律を乱していないか。 性観念の紊乱や崩壊が起きている、という指摘である。この文章の後に、教師や知識人の性的頽廃を嘆くくだりが続く。社会の自浄作用として善導を期待されている人々がその体たらくだから、行政が乗り出すのもしょうがないじゃん、というロジック構成だ。 この種の年配者の発言には、条例の内容などを早とちりするものが多いが、この投書は立法の内容を基的に正確におさえ、性的刺戟など

    東京都の青少年条例について思う - 紙屋研究所
  • 古市憲寿『希望難民ご一行様』 - 紙屋研究所

    わー、不快なだなー。胸くそ悪い・オブ・ザ・イヤーに決定。 冒頭に著者が 書は、読む人にとっては不快なである。 と断り書きしている通りだよ。 つれあいが新聞の書評欄か広告で見つけて、買ってきてぼくに読め読めと押しつけたものである。 ぼくはコミュニティや居場所を作り出すことは現代において社会運動の重要な機能であるとこの「紙屋研究所」でくり返しのべてきた。それは左翼運動にかかわる若い人たちとの交流の結果得たものだし、様々な読書体験を通じて得た結論でもあった。 ところが、書では、「ピースボート」の乗船体験やそこでのアンケート・インタビューをもとにして、その結論を否定する。このサイトでいろいろ論じているような、あるいはぼくが読んできたような論者や運動関係者を俎上にあげ、批判し、サブタイトルにあるような「承認の共同体」というものは幻想なのだとして、社会運動への悲観を述べて終わるのだ(必ずしもそ

    古市憲寿『希望難民ご一行様』 - 紙屋研究所
  • 子供を叱る若い母親に「お母さん、それは無理です」と言いたいお父さんに言いたい、「無理じゃないです」 - 紙屋研究所

    この記事を読んで。 子供を叱る若い母親に言いたい、「お母さん、それは無理です」  JBpress(日ビジネスプレス) http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/4149 お盆前に反論記事を書きかけたのだが、間に合わずに帰省してしまった。ゆえにすっかり気の抜けた記事になってしまったが。 この記事の核心部分は、2〜3歳の子どもは約束を守る力がまだないのだから、「約束した」ということ一辺倒で子どもを責め倒すのは無理がありすぎる、ということだろう。 子供は忘れっぽいのだし、おかあさんが赤ちゃんばかりをかまうので、自分のことも見てもらいたくて、つい余計なことをしてしまうんです。それに、叱り方はもっとシンプルにして、最後にはちゃんと許してあげないと・・・。 記事を書いた佐川光晴は家族カウンセラーの中尾英司の次の言葉を引く。 子は親に認めてもらいたいと常に思っている。ま

    子供を叱る若い母親に「お母さん、それは無理です」と言いたいお父さんに言いたい、「無理じゃないです」 - 紙屋研究所
  • 尾田栄一郎『ONE PIECE』 - 紙屋研究所

    『ONE PIECE』は言うまでもなく最も売れているマンガである。まわりに「何のマンガが好き?」と聞いてもたいていのやつは『ONE PIECE』と答える。 そもそもぼくは『ONE PIECE』と相性がよくない。人気マンガというので数年前に読み始めたのだが、途中で挫折した。はっきり言って全然面白くないからである。「それでもまあ人気マンガだから」と今回再度がんばったのだが、27巻でくじけた。 少年マンガの感性についていけなくなっただけか 少年マンガだからお前の感性がついてけなくなったのだろう、とお前ら言うつもりだろう。まあ半分くらいはそうなんだろうよ。でもなあ、『NARUTO』や『銀魂』はそれなりに楽しく読めるんだよ。『バクマン。』や『いぬまるだしっ』はかなり愉快に読める。なのに、『ONE PIECE』は……ちっとも面白くならないのである。ぼくにとって。 「50巻くらいまで読まんと真価はわから

    尾田栄一郎『ONE PIECE』 - 紙屋研究所
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