現在、この国では100万人余りの男性が、介護者として伴侶や親を支えている。つまり、全介護者の3人に1人は男性ということになる。年々増え続ける男性介護者だが、彼らの中には、介護がもたらす環境の変化に耐え切れず、事件を引き起こす人も少なくない。「男たちの介護」の現実や課題についてレポートする。【多●正芳】(【編注】●は木へんに朶) ■介護殺人の加害者の7割が男性 男性介護者の現実を考えるとき、避けては通れないテーマがある。殺人と虐待だ。 介護者が要介護者を殺す「介護殺人」について研究する日本福祉大の湯原悦子准教授が新聞報道を基に実施した調査によれば、介護が原因と思われる殺人や心中は、1998年から2009年の12年間で454件、昨年には46件発生している。そして、その加害者の約7割が男性介護者だったという。 湯原准教授は、「介護殺人」の特徴について、以下のように語る。 「介護殺人の場合、