ぼくらとサルの違いのひとつは、生息地域です。霊長類は200~300種いますが、どれも限られた地域にしかいません。でも、ホモ・サピエンスは1種で全世界にいます。ぼくらは世界中に人間がいるのはあたり前だと思っているけれど、生物学的にいうと全然あたり前じゃないんです。なぜそうなったかというのが、ぼくのひとつの大きな疑問です。 15万年前の世界を見てみると、ホモ・サピエンスはアフリカだけにいて、ユーラシアにネアンデルタール人(旧人)がいて、中国に旧人がいて、インドネシアには原人がまだ存在していました。その時人類は多様だったんです。これは生きものとしては普通の状態です。では、どのようにして今のような地理分布になったのでしょうか。 185万年ぐらい前に、原人のグループがアフリカの外に出たことがわかっています。この人たちがジャワ原人や北京原人になっていき、またフローレス島などにも到達しました。こうして人