今年最後の「マガジン航」の記事をお送りします。最近読んだ、二つの本の話題です。ひとつはボイジャーから紙の本と電子書籍として同時に刊行されたクレイグ・モド氏の『ぼくらの時代の本』、もうひとつは新潮社から刊行された山本貴光氏の『文体の科学』。どちらからも、きわめて新鮮な刺激を受けました。大げさではなく、この二冊には「本の未来」を考えるためのたくさんの鍵が隠されている――そう思える理由を、今年を締めくくるにあたり、つらつらと書いてみることにします。 本を「デザイン」と「スタイル」から考える この二冊にはいくつか共通点があります。ひとつは著者のバックグラウンドです。クレイグ・モド氏は紙の本の装丁、スマートフォン用アプリや電子書籍のデザインと設計に携わってきたデザイナー・開発者であり、自身でもPRE/POSTという出版レーベルを主宰するパブリッシャーでもあります。また山本貴光氏はゲーム作家としての経