妖術の歴史は、おそらく、人類の歴史とともに古い。のちに、世界宗教と称される普遍的宗教が成立した後も、妖術の地下水脈は決して涸れたことはない。むしろ、民衆の意識に深く根ざしたこの信仰を、世界宗教は利用しこそすれ、これと正面切って事を構えるような真似はしなかった。 13世紀、ローマ・カトリック教会は異端審問会を設置し、南フランスのアルビ派、次いでバルド派などを異端とし、血祭りにあげてゆく。すさまじい弾圧を受けた異端派は、アルプス山中に身を隠した。しかし、いかに追及の手をのばそうとも、ついに異端派を根絶することはできなかったのである。 しかし、異端審問会による異端派に対する弾圧がいかにすさまじかろうと、所詮、それはカトリック教会内部の争いにすぎなかった。 ところが、主だった異端派を弾圧しつくし、異端審問官の仕事もなくなったかに見えた1484年(この年代に注目! 15世紀も終わりである!)、時の教