本稿は、サークル「Rhetorica」の発行する雑誌『Rhetorica#04』に寄稿したエッセイを編集部の許可を得て転載したものです。『Rethorica#04』の特設サイトはこちら。 大学に入学した2007年、僕は決定的な一作に出会った。京都アニメーション制作によるアニメ作品『CLANNAD』である。原作はゲームブランド・Keyによる2004年発売のアドベンチャーゲーム。感動作という評判とともに、タイトル自体はアニメ版の視聴以前から耳にしていた。それでも頑なに避けてきたのは、ひとえに原作のジャンルが「恋愛アドベンチャー」というものだったからである。複数の「攻略ヒロイン」が存在し、そのすべてと恋愛関係になれるという形式に眉をひそめただけではない。そもそも「恋愛」というものに対して懐疑的な気持ちがあったのだ。 僕は小4の1学期まで親の仕事の都合でドイツに住んでいて、私立の日本人学校に通って