久しぶりに恩師の家に皆で集まった。その時あがった話題の一つが、2年後の日本はどうなっているかということだった。いわば未来予測である。この種のマクロの未来予測はなかなか難しい。考えるべき事柄やパラメータが多岐にわたって、どれに焦点を当てるかが問題だからだ。そもそも、未来は科学的に予測できるものなのだろうか? 誰もが気になるのは景気の動向だろう。電力価格の高騰による製造業の海外移転と空洞化を心配した人もいた。原発の事故を念頭においてのことだったかもしれない。しかしわたしは疑わしいと思った。というのも、一般に製造業の製造原価において、電力料金の占める比率はかなり小さいからだ。化学プラントなどのように電力消費の大きい産業は、すでに自ら発電装置をつくるなどして自衛している。 もしも製造業の空洞化が進行するとしたら、それはむしろ円高のためだろう。過去10年間の工場の海外移転はもっぱらこの理由によるもの