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ブックマーク / honz.jp (21)

  • 『絶海――英国船ウェイジャー号の地獄』訳者あとがき - HONZ

    作者: デイヴィッド・グラン,David Grann 出版社: 早川書房 発売日: 2024/4/23 書『絶海――英国船ウェイジャー号の地獄』は、2023年にダブルデイ社から刊行されたデイヴィッド・グランのノンフィクション、The Wager: A Tale of Shipwreck, Mutiny, and Murder の翻訳である。 原書は、刊行された2023年4月からこれまで40週以上連続でニューヨーク・タイムズのベストセラーリストにランクインしている。オバマ元大統領の2023読書リストに選ばれた他、CBSニュースの番組「60ミニッツ」が書と著者グランの特集番組を制作放映。ウォール・ストリート・ジャーナル、GQ、エコノミスト、ボストン・グローブ、ニューヨーク・タイムズ、トロント・スター、ロサンゼルス・タイムズ、ニューヨーク・マガジン、タイム、グローブ・アンド・メール、エル、

    『絶海――英国船ウェイジャー号の地獄』訳者あとがき - HONZ
  • 「他人の価値」から自分を取り戻す『当事者は嘘をつく』 - HONZ

    すごいが出た。 いきなりであるが、このの最後の文を紹介したい。 でも、その窮屈な型を破って、新しい型を生み出すサバイバーがきっと出てくる。私の語りの型は、誰かの生き延びるための道具となり、破壊され、新しい型の創造の糧になる日を待っている。(200ページ) この締めくくりの文に、このの性格が表されている。性暴力のサバイバーである著者は、さまざまなを読み、勉強し、考えることで生き延びてきた。血まみれになりながら知識を身につけてきたと言えるだろう。そして、彼女だけの創造する力を得てきた。引用のとおり、このは著者の小松原さんが得た力を、また別の人に渡すために書かれたである。 私がの中で驚いた箇所がふたつある。ひとつは、読書のしかただ。文中に、ジャック・デリダの『言葉にのって』の「赦し」に関する部分を小松原さんが読んだときのエピソードが出てくる。小松原さんは、この部分を読んだとき、耐え

    「他人の価値」から自分を取り戻す『当事者は嘘をつく』 - HONZ
    iinalabkojocho
    iinalabkojocho 2022/04/06
    さまざまな語りの中でさまざまな被害が「相手に分かりやすい型」にはめられることはとても良くある。詳細が嘘であってもそうしないと理解されない。被害はわたし独特のもの。この本買ったけど未読。読まねば。
  • 『さよなら、野口健』愛憎入り混じる人間ドラマ。新しい人物ノンフィクションの誕生 - HONZ

    書の書き出しは穏やかではない。なにしろ京都で名高い縁切り神社の話から始まるのだ。そこは「悪縁」を切ることのできる最強の縁切り神社として知られる。訪れた人は、境内にある巨石が参拝者によって糊付けされた形代(白いお札)でびっしりと覆われているのに圧倒されるだろう。 著者は神社のすぐ近くまで足を運びながら、縁が当に切れてしまうことにためらいを覚え、結局行くのをやめてしまった。著者はお札にこう書くつもりだったという。 「野口健との縁が切れますように」と。 野口健は1999年、25歳でエベレストの登頂に成功し、七大陸最高峰世界最年少登頂の記録を樹立したアルピニスト。その後は富士山やエベレストの清掃など、環境活動や社会貢献に積極的に取り組んでいる。メディアではこんなふうに紹介されることが多い。講演の依頼は引きも切らず、1あたり80万円の講演を年間100近くこなすという。 一方で、ある時期からの

    『さよなら、野口健』愛憎入り混じる人間ドラマ。新しい人物ノンフィクションの誕生 - HONZ
    iinalabkojocho
    iinalabkojocho 2022/04/06
    人生をかけて人の人生を(嫌な意味で)変えてしまう人に尽くしたノンフィクションか。わたしは同氏が嫌いなので本書を読もうと思う。その一方で抗いたい魅力があるのも事実だろうしね。DVパートナーのように
  • 『当事者は嘘をつく』性暴力被害の「新しい語り方」を切り拓く - HONZ

    傷跡から血が滲み出ているような一冊だ。 読み終えた後もずっと「凄いものを読んだ」という余韻が消えない。早くも今年のベスト級の一冊に出会ってしまった。書は当事者ノンフィクションの傑作である。 著者は「修復的司法」の研究者である。修復的司法というのは、1970年代に欧米を中心に広まった紛争解決のアプローチで、従来の刑事司法では、国家が犯罪者を処罰することで問題を解決しようとするのに対し、修復的司法は、被害者と加害者の対話を中心に置き問題解決を目指す。 著者には性暴力の被害にあった過去がある。修復的司法の研究者を志したのも、自らの被害体験と深くつながっているからだった。そして、これがとても重要かつ繊細な機微をはらんだポイントなのだが、被害者だからこそ、加害者との対話に興味を持った。 だが当事者であることを著者はずっと明かせなかった。なぜならカミングアウトすれば「加害者との対話を望む被害者」と単

    『当事者は嘘をつく』性暴力被害の「新しい語り方」を切り拓く - HONZ
    iinalabkojocho
    iinalabkojocho 2022/02/17
    買おうと思います。買って読む中で「ことば」が自分の中で何なのか。罪や赦しが何なのか。起こっているのは何なのか。起こっていることは何なのか。言語化可能なのか考えたいと思います。
  • 『帰還兵の戦争が終わるとき 歩き続けたアメリカ大陸2700マイル』イラクで負った心の傷 終わらない戦争と癒やし - HONZ

    帰還兵、復員軍人の精神面の問題は古くて新しいテーマだ。戦中、戦後は日でも問題視されたし、現代ではイラクに派遣された自衛官の中にもPTSD(心的外傷後ストレス障害)を発症し苦しんでいる人たちがいる。 9.11米国同時多発テロ事件以降、10年以上にわたりアフガニスタン、イラクとの非対称戦争を行ってきた米国には、かなりの数の帰還兵、復員軍人が存在する。そして彼らの多くがPTSDなどの精神疾患を抱えているのだ。 米国では戦争従軍者の精神面のケア不足が社会問題となっている。この問題に関する書籍としては『帰還兵はなぜ自殺するのか』という名著が日語に翻訳されている。 書も彼ら帰還兵の問題を扱ったものだ。ただ、復員軍人当人の著作である点が前述のとの違いだろう。 著者トム・ヴォスは代々奉仕家の家系に生まれた。父母も祖父母も社会貢献を旨とした。トムは、陸軍に入隊し国に貢献することが、それに続く道だと思

    『帰還兵の戦争が終わるとき 歩き続けたアメリカ大陸2700マイル』イラクで負った心の傷 終わらない戦争と癒やし - HONZ
  • 『保身 積水ハウス、クーデターの深層』変われないこの国を描く骨太の経済ルポ - HONZ

    読み終えた途端、深いため息が出た。かつて「全員悪人」というキャッチコピーの映画があったが、さしずめ書は「登場人物、全員小物」といったところだ。だが、小物ばかり出てくるのにページをめくる手が止まらない。それはこの小物が私の中にも棲んでいるからかもしれない。このにはまぎれもなく私たちの姿が描かれている。 そのクーデターが起きたのは、2018年1月24日のことだった。住宅メーカーのリーディングカンパニー積水ハウスの取締役会で、会長職にあった和田勇が、社長の阿部俊則が提出した動議によって事実上の解任に追い込まれたのだ。 これは実に奇妙なクーデターだった。取締役会に先立つ2017年6月、積水ハウスは地面師詐欺に遭い、55億5900万円を騙し取られていた。事件をきっかけに立ち上げられた調査対策委員会は、経緯をつぶさに検証した結果、来「騙されるはずがなかった事件」だとして、社長の阿部に経営上の重い

    『保身 積水ハウス、クーデターの深層』変われないこの国を描く骨太の経済ルポ - HONZ
  • 『令和元年のテロリズム』令和日本のいびつな自画像 - HONZ

    ひとつの犯罪が時代を象徴することがある。 令和元年(2019年)5月28日、朝7時40分頃、小田急線とJR南武線が交差する登戸駅近くで、男がスクールバスを待っていた児童や保護者らを次々と包丁で刺した。男は終始無言で凶行に及び、20メートルほど走って逃げた後、突然自らの首を掻き切り絶命した。この間わずか十数秒だった。 犯人によって小学6年生の女の子と39歳の保護者の男性が命を奪われた。また17名の児童と保護者1名が切りつけられ、このうち女児2名と保護者は重傷を負った。これが令和の幕開けに社会を震撼させた「川崎殺傷事件」(川崎市登戸通り魔事件)である。 この事件が「令和元年」を象徴しているというと驚く人がいるかもしれない。わずか2年前のことなのに事件は早くも世間の記憶から薄れつつあるようにみえるからだ。そもそもあなたはこの事件の犯人の名前を覚えているだろうか?また当時、著名人がメディアで発した

    『令和元年のテロリズム』令和日本のいびつな自画像 - HONZ
  • 誰もが当事者として考えるべきであるという問題提議 『ルポ 「命の選別」誰が弱者を切り捨てるのか?』 - HONZ

    命の選別。重く響く言葉である。そして、その現実は暗くて深い。『ルポ「命の選別」 誰が弱者を切り捨てるのか?』では、「優生社会」のさまざまな問題点が明らかにされていく。 優生思想など過去の遺物と思われるかもしれないが、それは間違えている。国家が強制したトップダウンの優生学ではなく、リベラル優生学とも呼ばれる、個人が望むボトムアップの新しい優生学が横行し始めているからだ。 その要因は大きく2つある。ひとつは生命科学の大きな進歩。もうひとつは、ゆがんだ社会観とでも呼ぶべきものから生み出される誤った考え方。 前者には、出生前診断(特に妊婦の血液検査で簡単に染色体異常がわかる新型出生前診断)、受精後の早い段階で胚の遺伝子異常を調べる着床前診断、そして、2020年のノーベル化学賞を受賞したゲノム編集技術の3つがある。 このような先端技術を用いて、先天的な異常のある子供を「淘汰」できるようになっている。

    誰もが当事者として考えるべきであるという問題提議 『ルポ 「命の選別」誰が弱者を切り捨てるのか?』 - HONZ
    iinalabkojocho
    iinalabkojocho 2021/01/06
    反出生主義、の前に生命全般にある不寛容の独特さがこの国にあるのではないかという疑問。しかし過去において子どもというものの命の価値は低かった(生存率も)という疑念。生命はどこから?という根源
  • 『エデュケーション 大学は私の人生を変えた』 ターニングポイントは親との決別 - HONZ

    著者のタラ・ウェストーバーは1986年生まれの34歳。現在ハーバード大学公共政策大学院上級研究員で歴史家。エッセイストでもある。 彼女はアイダホ州クリフトンで父親の思想が強く反映された反政府主義を貫くサバイバリストのモルモン教徒の両親のもと、7人兄弟の末っ子として生まれた。 公立学校へは通わせてもらえず、家庭内で科学や医療を否定した偏った教育を受けて育った。父の事業の廃品回収とスクラップの仕事を手伝わされ、危険な作業を強いられた。 母は薬草のオイルや軟膏を使った民間療法による助産婦として徐々にその地域の信頼を獲得していく。 一人の兄が親を捨てて大学に入学したことでタラも勉学に対する強い欲求が芽生える。猛勉強のもと自宅学習者(ホームスクーラー)を受け入れるブリガム・ヤング大学へ入学が叶った。だがどの授業も初めて聞く話ばかり。最初は勉強の仕方もわからなかったタラが目を瞠るような変貌を遂げていく

    『エデュケーション 大学は私の人生を変えた』 ターニングポイントは親との決別 - HONZ
  • 『出版翻訳家なんてなるんじゃなかった日記 こうして私は職業的な「死」を迎えた』げに恐ろしき、出版界の裏事情を綴る真摯な暴露本 - HONZ

    『出版翻訳家なんてなるんじゃなかった日記 こうして私は職業的な「死」を迎えた』げに恐ろしき、出版界の裏事情を綴る真摯な暴露 このをここで紹介していいものか迷ったが、著者の真摯な姿勢に心を動かされたので、おもねらずにレビューしてみたい。 書は、ベストセラー『7つの習慣 最優先事項』の訳で一躍売れっ子翻訳家になった著者が、出版社との様々なトラブルを経て業界に背を向けるまでの顛末を綴った、げに恐ろしきドキュメントだ。 驚くことに、名前こそ伏せてあるが、理不尽な目に遭わされた出版社のプロフィールが文や帯でずらずら書かれている(業界歴の長い人ならすぐにわかるのではないか)。著者の名前をネットで調べれば翻訳を担当した書籍がばんばん出てくるし、もはや告発書、暴露と言っても過言ではない。 まずは著者が経験した「天国」から。 出版翻訳家を夢見たのは21歳のとき。大学卒業後は大学事務員、英会話講師、

    『出版翻訳家なんてなるんじゃなかった日記 こうして私は職業的な「死」を迎えた』げに恐ろしき、出版界の裏事情を綴る真摯な暴露本 - HONZ
    iinalabkojocho
    iinalabkojocho 2020/12/09
    “『出版翻訳家なんてなるんじゃなかった日記 こうして私は職業的な「死」を迎えた』げに恐ろしき、出版界の裏事情を綴る真摯な暴露本” 恐ろしい。
  • 『<脳と文明>の暗号 言語と音楽、驚異の起源』文化と人間の「共進化」 - HONZ

    書は、Harnessed: How Language and Music Mimicked Nature and Transformed Ape to Man(BenBella Books, 2011)の全訳である。著者のマーク・チャンギージーは、カリフォルニア工科大学、レンスラー工科大学でキャリアを積んだ理論神経科学者。しかし彼の活動はアカデミズムの枠にとどまらず、科学者として得た知見を製品開発につなげる起業家としての顔も持つほか、小説を出版したり、展覧会をキュレーションしたり、テレビ番組に出演したりと、実に多彩な顔を持っている。 書の原題、ポイントは「Harness」という言葉が持つニュアンスだ。この語は名詞だと「馬具」や「革ひも」を意味するが、動詞では「The dam harnesses water power」といった使い方をする。日語に直すと「ダムは水力を利用している」とし

    『<脳と文明>の暗号 言語と音楽、驚異の起源』文化と人間の「共進化」 - HONZ
    iinalabkojocho
    iinalabkojocho 2020/12/04
    “『<脳と文明>の暗号 言語と音楽、驚異の起源』文化と人間の「共進化」 文庫解説 by 伊藤 亜紗”
  • アメリカのいまが見えてくるMUSIC『ディス・イズ・アメリカ』 - HONZ

    『ディス・イズ・アメリカ』はTBSラジオの「ジェーン・スー生活は踊る」「アフター6ジャンクション」「荻上チキSession-22」などで放送した音楽特集から、アメリカ政治的・社会的トピックに関連する解説を抜粋し、さらに音楽メディアに寄稿したコラムや評論などをまとめただ。激動する近年のアメリカ社会の中でポップミュージックが何をうたってきたのか?を「グラミー賞」を軸にしてまとめている。 新時代の女性のエンパワメントアンセムを歌うアリアナ・グランデ。美しさの価値や基準は自分で決めるボディポジティブ運動のシンボルになっているリゾ。LGBTQをテーマにした曲を発表したテイラー・スウィフト。地球温暖化について歌うビリー・アイリッシュなど、書を読むと、音楽を通してアメリカのいまが見えてくる。 また、グラミー賞における黒人差別問題も書を読んで知った。2000年以降で、最優秀アルバム賞を取った黒人の

    アメリカのいまが見えてくるMUSIC『ディス・イズ・アメリカ』 - HONZ
  • 『闇の脳科学「完全な人間」をつくる』 その先駆者の栄光と悲劇、そして「脳操作」の現在と未来 - HONZ

    同性愛の「治療」を受ける男。娼婦を相手に性的興奮を得ることができれば成功だ。男の頭には電極が差し込まれており、後頭部から4のコードが隣の部屋まで延びている。その部屋では、研究者たちが電極から送られてくる計測値を見ながら、男の快楽中枢に適切な電気刺激を与える。 まるでSFだ。しかし、未来の話としてはおかしいと思われないだろうか。現在の状況を考えると、LGBTが治療対象となる未来などやってくるはずがなかろう。未来物語でもなければ架空のストーリーでもない。米国で実際におこなわれた人体実験なのである。 書『闇の脳科学 「完全な人間」をつくる』の冒頭シーンがこれだ。いったいどんな内容のなのか。意識せずとも期待感が広がっていく。まるで脳のどこかに電気刺激が与えられたかのように。 この実験をおこなったのは、精神科医ロバート・ガルブレイス・ヒース。統合失調症病などさまざまな精神疾患に対して、患者

    『闇の脳科学「完全な人間」をつくる』 その先駆者の栄光と悲劇、そして「脳操作」の現在と未来 - HONZ
    iinalabkojocho
    iinalabkojocho 2020/10/14
    今更だが日本でも電気痙攣療法は行われている。しかし東大病院の医師と話したところ「どうして良くなるのかはわからない8割は3ヶ月程度で戻ってしまう」とのことだった。大うつへの適用である。磁気もあるがまた今度
  • 『言論の不自由 香港、そしてグローバル民主主義にいま何が起こっているのか』強権化する大国中国と それに抗う若者たち - HONZ

    『言論の不自由 香港、そしてグローバル民主主義にいま何が起こっているのか』強権化する大国中国と それに抗う若者たち 2017年から香港特別行政区行政長官選挙を普通選挙で行うという約束を、14年に中国政府が反故にしたことに反発する市民らが行った抗議活動、「雨傘運動」は、日でも大きなニュースになった。この運動で中心的な役割を果たした組織が「学民思潮」だ。書はこの学民思潮のリーダーのひとり、ジョシュア・ウォン(黄之鋒)による著作だ。 彼の政治活動は14歳にして始まる。香港政府が導入しようとした「国民教育」という中国共産党のプロパガンダ教育制度に反対の声を上げ、11年に学民思潮を結成したのだ。結成の中心メンバーには日で有名なアグネス・チョウ(周庭)も含まれている。このときの抗議活動には10万人以上の市民が参加し、香港政府は「国民教育」義務化の無期延期を余儀なくされた。 書では、この若き民主

    『言論の不自由 香港、そしてグローバル民主主義にいま何が起こっているのか』強権化する大国中国と それに抗う若者たち - HONZ
    iinalabkojocho
    iinalabkojocho 2020/10/11
    読了した。政治過程に目覚める少年のところよりも、むしろ刑務所に入れられている下り、仲間への想いに感心した。非暴力なので香港内では力を持たないが海外ではスポークスマンとして有名なことも。
  • 『剱岳—線の記』古代日本のファーストクライマーを探せ! - HONZ

    新田次郎の『劒岳〈点の記〉』は、日露戦争直後の1907(明治40)年、前人未到とされ、また決して登ってはいけない山と恐れられていた北アルプスの剱岳(標高2999m)の登頂に挑んだ測量官を描いた山岳小説の傑作である。 物語は、設立間もない日山岳会との初登頂争いの形をとりながら進んで行く。 実際はこの登攀争いはフィクションらしいのだが、剱岳が当時、未踏峰とされていたのは事実だ。そして、日陸軍参謀部陸地測量部の柴崎芳太郎率いる測量隊が命がけの登頂に臨み、見事成功した。 ところが、彼らはそこで信じがたいものを目撃した。 山頂で彼らは、古代(奈良〜平安時代)の仏具を発見したのだ。 置かれていたのは、錫杖頭と鉄剣だった。錫杖頭とは、杖の頭部につける金属製の仏具である。振ると円環が触れ合って音が出る。山中で修行する山伏が携行しているものだ。柴崎隊よりもはるか昔に、剱岳の山頂にたどり着いていた者がい

    『剱岳—線の記』古代日本のファーストクライマーを探せ! - HONZ
    iinalabkojocho
    iinalabkojocho 2020/10/06
    まず購入した。調べ方に興味がある。
  • 『人新世の「資本論」』未来を構想する新しい思想の誕生! - HONZ

    この興奮が醒めないうちに書いておきたい。凄いを読んだ。 マルクスを現代にアップデートさせた研究で世界的な注目を集める俊英・斎藤幸平の『人新世の「資論」』である。 新書の世界には何年かに一度、画期的なが現れる。 物事の見方に新しい方向から光を当てたり、これまでにないアイデアを提示したりして、読者の世界の見え方を一変させてしまうようなだ。ここでは細かく挙げないが、好きであれば何冊も書名が思い浮かぶだろう。そうしたは、時に時代の空気をとらえたベストセラーとなり、あるいは長きにわたって読み継がれる名著となる。 書もそうした系譜に連なる一冊だ。今後、「新書大賞」や「紀伊国屋じんぶん大賞」などでは、間違いなく上位にランクインするだろう。のっけから「大風呂敷を広げている」と思われるだろうか?だが、書の内容を知れば、誰もが納得せざるを得ない。このにはそれほど重要なことが書かれている。 近

    『人新世の「資本論」』未来を構想する新しい思想の誕生! - HONZ
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    iinalabkojocho 2020/09/23
    読んでみたい。ただし脱成長コミュニズムはグローバルレベルで展開しないと意味ないかも。しかしコミュニティ依存型の政府はありうるんだよね。エッセンシャルワークの重視は実はそれ。自尊心と労働はリンクせねば。
  • 『「役に立たない」科学が役に立つ』 - HONZ

    作者:エイブラハム・フレクスナー ,ロベルト・ダイクラーフ 出版社:東京大学出版会 発売日:2020-07-29 このたび東京大学出版会から刊行された、エイブラハム・フレクスナーとロベルト・ダイクラーフ著『「役に立たない」科学が役に立つ』を読み、期待していた以上に深く考えさせられ、また心を動かされました。 著者の二人は、プリンストン高等研究所を可能にした初代所長(フレクスナー)と、現所長(ダイクラーフ)です。 初代所長であるフレクスナーは、なにしろアインシュタインやフォン・ノイマンをはじめ、綺羅星のような科学者たちの居場所であった高等研究所が創設されるにあたって決定的に重要な役割を果たした人物なので、わたしのように長年ポピュラー・サイエンス系の翻訳をやっている人間にとってはある種の有名人です。その彼の有名なエッセイが日語で読めるようになるというので、刊行を心待ちにしておりました。 フレク

    『「役に立たない」科学が役に立つ』 - HONZ
    iinalabkojocho
    iinalabkojocho 2020/08/05
    申し訳ない。この本は興味深いが、この評者の方の文章はかなり悪文-繰り返しや表現のせいでよみづらい-ではないかと感じました。すいません偉そうに。
  • 『謎のアジア納豆』 - HONZ

    書店で書を手にとって、巻頭パラパラと数ページめくってからこの解説文で概要を知ろうとする人も多いと思うので、まず結論から言う。 このは傑作だ。あなたの納豆観を覆し、しかも納豆を入り口にアジア中の辺境民族文化の旅へと誘い、さらに現代におけるディープな旅とは何か?という問いかけまでが含まれている。「買おうかな?どうしよっかな?」と悩んでいる暇はない。今すぐレジに持っていって納豆をべながら書を貪るように読まれたい。以上終わり! …というのは解説文としては不親切なので、数ページもらって書の魅力、そして納豆文化の魅力についてガイドしようと思う。申し遅れたが、僕は発酵文化の専門家として、世界各地の不思議な発酵や微生物を訪ねてまわるのを生業としている。文中の著者の問いかけに僕なりに答える形式で、の理解をさらに深める手伝いができれば幸いだ。(ちなみにここから先はネタバレを多数含むので、もう絶

    『謎のアジア納豆』 - HONZ
    iinalabkojocho
    iinalabkojocho 2020/06/11
    大豆と菌で作ったものはOS。ちぃ、覚えた。
  • 『下級国民A』格差社会が生み落とすもの、美しい国の不都合な真実 - HONZ

    書は62歳で「住所不定無職」の新人作家として鮮烈なデビューを果たした作家、赤松利市が経験した、東日大震災の復興事業に関するルポルタージュだ。 著者、赤松は35歳で起業し、一時は年収2000万円を超えていた。しかし、ある事情により会社は倒産。以後、厳しい生活を強いられる。 そんな折、東日大震災が発生。土建業を営む知人の社長から相談を受ける。震災後の復興バブルに乗るべく専務である息子を東北に派遣するので、「営業部長」となって同行してほしい、儲けが出れば半分は赤松の取り分にするという内容だ。土木業は未経験だが、儲けを出せば利益の半分を手にできる。人生逆転のチャンスだ。そう思い仕事を引き受ける。 だが、そのもくろみはすぐに崩れさる。復興バブルに便乗するべく東北に集った零細企業たちが、大手ゼネコンのように現場全体を請け負うことは不可能だ。零細企業は、大手が請け負った現場に作業員を派遣する、人工

    『下級国民A』格差社会が生み落とすもの、美しい国の不都合な真実 - HONZ
    iinalabkojocho
    iinalabkojocho 2020/04/04
    自由主義のアメリカと社会福祉国家のダメなとこを合わせた日本。舵を取り直さないとおかしさに拍車かかるでよ。
  • 『孤塁』初めて語られた双葉郡消防士たちの「あの日」 - HONZ

    あの日、あなたはどこで何をしていただろうか。 2011年3月11日、福島県双葉郡では、多くの学校で卒業式が執り行われた。子どもたちは通い慣れた校舎に名残惜しさを感じながら、未来への希望に胸を膨らませていたに違いない。だが14時46分、巨大地震がこの地を襲った。 書は、双葉郡の消防士たちが初めて「あの日」について語ったノンフィクションである。震災について書かれた多くのノンフィクションの中でも出色の一冊だ。 書の優れている点。それはプロフェッショナルの証言に基づいているところだ。私たちは現実を見ているようで、案外見ていない。事故現場の取材で目撃者に話を訊くと、「とにかく驚いた」とか「ドカーンと音がして気がついたら倒れていた」とか、目の前で起きたことを描写するのではなく、単なる感想や擬音で雰囲気だけを伝えるケースがよくある。無理もない。私たち素人は、想定外の出来事を前にすると動転してしまうの

    『孤塁』初めて語られた双葉郡消防士たちの「あの日」 - HONZ