第四章 同時代の知の巨人たち、もしくは知のはぐれものたち ● 吉本隆明 吉本の影響力は、やっぱり絶大だったね。でも、その理由というのは、ものすごく単純なことで、要するに若者はヒーローを求めていた、そういうことだよ。 ――それはまたわかりやすすぎるというか、身も蓋もない話ですね(笑) 身も蓋もない話だけど、でも、やっぱりそうとしか思えない。要するに何でもいい、長嶋でも力道山でもいいから、国民的ヒーローが欲しかったんだよ。まあ、これは私も三、四十歳になってわかったことなんだけどね。そういう意味で、吉本もその当時、若者のヒーローだったんだよ。 ちょうど今、私は産経で吉本の批判を書いているけど、信じられないことに、いまだに吉本の本は売れている。そりゃあ、昔に比べれば部数は落ちたけど、今は体が悪くてあまり書けないからかえって飢餓状態みたいなところがあるのか、ちょっとしたメモを引き延ばしたり、あるいは