すごい深い溝。とても深い溝。自分と相手の間に横たわる絶望のようなもの。しかし個は絶望によって彩られ、絶望によって線引きされる。我と彼。我は彼を認識し、彼は我を認識する。我と彼は異なる個体であり、我は彼に伝えようとしたり、彼が我に伝えようとしたり、言語と身体を使って延々と、延々と内にあるものを交換する。その過程は魂で交尾していると言っていいような気がする。遺伝子を交換する代わりに自我意識の一部を交換するみたいな。そう交尾を繰り返すにつれて一体であるような感じはだんだん強くなるがある点で突然にこれ以上は交換できないことに気づく。それが断絶であるように思う。近づくことを願ってもそこは超えられないと悟ることは絶望である。多くの人を知る人ほどこの絶望の経験は深く、何度も何度もそれに傷つけられ、繰り返し繰り返し治りかけた傷口を抉られその傷はどんどん深くなり、いつか炎症を起こし膿を持って決壊し腐り落ちる