先日、さる方より塚本邦雄の『良夜爛漫』を頂戴した。わたしが塚本邦雄の大のファンであると御存知で、永年架蔵されていた同書を惜しげもなく下さったのである。『良夜爛漫』は『定家百首 良夜爛漫』より巻頭の「藤原定家論」と跋文を省いた三百十部・限定版で、いずれも河出書房新社刊。『定家百首』は単行本も文庫版も持っているけれど、限定版の味わいはまた格別である。麻布のクロス貼函、表紙はインド産羊皮、見返は英国製コッカレル、背に題名の金箔押、本文は三色刷、天金。政田岑生装訂。別丁の和紙に毛筆で短歌一首と落款がある。 水無月の沖こそ曇れことわりも過ぎしことばの花實をつくし 編輯は日賀志康彦氏、すなわち歌人の高野公彦である。 塚本邦雄には夥しい数の限定版がある。通常市販されている歌集や評論集・小説集にも凝った装訂の本が多いが、さらにそれぞれに少部数の限定版がある。また、数十首を纏めた間奏歌集の殆どが限定版である