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ブックマーク / booklog.kinokuniya.co.jp (23)

  • 『sketches』荒木時彦(書肆山田) - 書評空間::紀伊國屋書店 KINOKUNIYA::BOOKLOG

    →紀伊國屋書店で購入 「情緒不安定と詩」 このところ、ちょっとした詩のブームのようだ。一部の詩集は書店のいわゆる「陽の当たる場所」におかれるようになった。今まで何とも思わなかったものが、何かのきっかけで急にひりひりと感じられるということはたしかにある。こちらが情緒不安定になると、急にある種の言葉がおいしく感じられるのだ。 詩の言葉で、情緒は昂進する。詩で、情緒的になりたい欲のようなものが満たされる。でも、そうした「情緒」や「不安定」は詩が読まれる前から用意されてあったものなのかもしれない。それでいいのかなあ、何か違わないかなあ、という気もする。 そんなことを考えているときに、おもしろい詩集に出会った。荒木時彦『sketches』である。書店では依然として「陽の当たらない場所」にひっそりと置いてあった。一頁にひとつの断章という体裁で、10文字にも足りないごく短いものから、原稿用紙一枚分くらい

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  • 紀伊國屋書店ピクウィック・クラブのブログ フェア諸相「紀伊國屋カルチャー・トリップ-今読みたいSF100」号外

    こんにちは。ちょうどひと月ぶりの更新です。 今回の内容は大きくふたつ。いずれも以前このブログで取り上げたフェアのその後の展開についてです。 好評のうちに幕を閉じました「紀伊國屋カルチャー・トリップ-今読みたいSF100」の結果発表と、紀行文フェア第二弾「と!RAVEL Book Fair -異界探訪編-」の紹介をさせていただきます。 「紀伊國屋カルチャー・トリップ-今読みたいSF100」 さてこちらのSFフェア、当初は10月中頃までの開催予定だったところ会期を延長しての開催となりまして、つい先日10月いっぱいをもって終了いたしました。これまでのテーマを上回る人気に話題性もあったらしく、これもひとえに皆様のおかげです。たくさんのご来場ありがとうございました。 そして只今手元にあるのが、 このフェアの売り上げを記した極秘資料です。 既に紀伊國屋新宿店公式twitterアカウントにて、売り上げ

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  • 世界ランキング - 書評空間::紀伊國屋書店 KINOKUNIYA::BOOKLOG

    皆様大変長らくお待たせ致しました。 一時は永遠に続くかとも思われた集計もようやく終了し、 いよいよランキングを発表する準備が整いました。 集計方法は例によって文庫1冊=1ポイント、 単行1冊=3ポイントとしています。 初めての栄冠は誰の手に? さあ、今ここに、 ワールド文学カップ世界ランキングを公表致します! ワールド文学カップ世界ランキング 集計期間:4/1~5/17 【ワールド文学カップ世界ランキング】 第1位 130pt エロスの大国フランス 第1位 130pt 子ども心の国ドイツ 第3位 123pt 短篇小説ランドアイルランド 第4位 118pt 反逆の国アメリカ 第5位 117pt 狂気の温床フランス 第6位 110pt 笑いの帝王イングランド 第7位 107pt ウリポを生んだフランス 第8位 105pt バベルの図書館アルゼンチン 第9位 103pt 魔法の右足コロンビア

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  • 『魂(ソウル)のゆくえ』ピーター・バラカン(アルテスパブリッシング) - 書評空間::紀伊國屋書店 KINOKUNIYA::BOOKLOG

    →紀伊國屋書店で購入 「祝!復刊!」 改訂復刊に際し、言を極めて慶びたい。青春の書であって、ソウル・ミュージックのみならず、ポピュラー・ミュージック全領域における名著の改訂新版。買うべし、としかいいようがない傑作。音楽なしでは生きていけないような当の音楽好きを識別する試金石。やっぱり、ネイティブの人ならではの歌詞解説が良い。例えば、スモーキー・ロビンソンの有名なSo take a good look at my face….tracks of my tearsの部分の解説!この曲のメロディーを心に重ねながら、この部分を読んで感動できない人は音楽も詩も分からない人だ!と断言できる。 聞いてみたい気にさせる、という機能においても、書に勝る書物はない、と断言できる。改訂にあたって大幅に見直されたレコードガイドは、今回も極めて秀逸である。ノラ・ジョーンズを再評価し、アリーサ・フランクリンに辿り

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    inmymemory
    inmymemory 2008/09/19
    旧版は本棚に永遠に残り続けている
  • 高山宏の読んで生き、書いて死ぬ : 『シラーの「非」劇-アナロギアのアポリアと認識論的切断』青木敦子(哲学書房)

    →紀伊國屋書店で購入 「疾風怒濤」を思いきって「ゴス」と呼んでみよう ゲーテは尊敬するが、愛するのは誰かと言われればシラーである、というのがドイツ人の口癖だとはよく聞く話だが、一体、いま現在の日にとって古くて遠いドイツロマン派の劇作家・詩人・歴史家ヨハン・クリストフ・フリードリッヒ・フォン・シラー(1759-1805)が大文豪だったという「噂」を聞かされても、どんだけっ、である。硬直した社会への抵抗を熱く説く革命文学者と聞くだに、ださっ、である。「疾風怒濤」運動随一の担い手だそうだが、もう疾風怒濤なんて字も響きもなんだかキモッ、である。ケータイ小説こそ新時代文学の息吹などと、かの「ニューヨーク・タイムズ」までが珍妙に褒め讃える我々のブンガク状況の中で、浪漫派、浪漫主義は、完全に死語である。 ひとつには、いわゆる独文学の世界にレベルを保ちつつ啓蒙の気概をも持ち合わせた人物がいないこともある

    高山宏の読んで生き、書いて死ぬ : 『シラーの「非」劇-アナロギアのアポリアと認識論的切断』青木敦子(哲学書房)
  • 高山宏の読んで生き、書いて死ぬ : 『アルス・コンビナトリア―象徴主義と記号論理学』 ジョン・ノイバウアー[著] 原研二[訳] (ありな書房)

    →紀伊國屋書店で購入 『アムバルワリア』を読んだら次にすること チェスで人がコンピュータに勝てないと判ってからどれくらい経つか。感情や情念といった言葉を持ち出して、人にしか書けない詩があるという人々はなお多く、現に「詩」は相変わらずいっぱい書かれている。しかし、チェスの棋譜を構成していくのと同じ原理が詩をつくるとすれば、人は詩作でもコンピュータに勝てないことが早晩判るはずだ。そう考える詩学がある。チェスと詩学が全く違わないことを、作家ボルヘスは『伝奇集』中の有名な「『ドン・キホーテ』の作者、ピエール・メナール」に宣言した。 ニーチェが「感情の冗舌に抗して」成り立つとした文学観が存在するが、この言い分をキャッチフレーズに掲げたロマニスト、グスタフ・ルネ・ホッケの我らがバイブルたるべき『文学におけるマニエリスム』によれば、「マニエリスム」という文学観がそれで、読むほどに、ヨーロッパで成立した詩

    高山宏の読んで生き、書いて死ぬ : 『アルス・コンビナトリア―象徴主義と記号論理学』 ジョン・ノイバウアー[著] 原研二[訳] (ありな書房)
    inmymemory
    inmymemory 2008/03/25
    詩的象徴主義と記号論理学を通時・共時の両相で同列に論じた。詩と数学が重合→源泉がノヴァーリスのロマン派→源流がマニエリスム数学者ライプニッツの組合せ術→源流はホッケのマニエリスム文学史
  • 文筆家・近代ナリコの書評ブログ : 『ティファニーで朝食を』トル-マン・カポ-ティ 村上春樹訳(新潮社)

    →紀伊國屋書店で購入 「ホリー、ホリー、ホリー!!!」 ここ数年の新訳ブームのなか、サリンジャー、フィッツジェラルド、チャンドラーらの「名作」を満を持してとばかりに訳出してきた村上春樹だが、なにより私が「村上訳」を願ってやまなかったのが書である。 「遠い声 遠い部屋」のアイダベル、「ミリアム」のミリアム、「誕生日の子どもたち」のミス・ボビット。あまりにも純粋、そのためになにかといきすぎでいびつ。だからこそ、途方もなく魅力的なカポーティ描く女の子たち。なかでも「ティファニー」のホリー・ゴライトリーはきわめつけのヒロインであり、私が小説のなか出会った人物のなかでも特別の存在である。だから、いつか彼女が、村上春樹の手によってあらわされる時がくればと待ちこがれていたのだ。 気まぐれに染めたまだらのショート・ヘアはくしゃくしゃ、体は子鹿みたいに細く、サングラスで隠した眼はやぶにらみがかっている。こ

    文筆家・近代ナリコの書評ブログ : 『ティファニーで朝食を』トル-マン・カポ-ティ 村上春樹訳(新潮社)
  • 文芸評論家・加藤弘一の書評ブログ : 『村上春樹短篇再読』 風丸良彦 (みすず書房)/『越境する「僕」』 風丸良彦 (試論社)

    →『村上春樹短篇再読』を購入 →『越境する「僕」』を購入 村上春樹は多くのすぐれた短編小説を書いているが、『若い読者のための短編小説案内』というを出していることからもわかるように、短編小説という形式の愛好者で、短編小説の技巧に意識的である。語り口が平明なので、小説をそれほど読んでいない人はただのおもしろい話と読み流してしまうかもしれないが、職業的に小説を読みこんでいる人間が読むと、どの作品も趣向が凝らされており、こう来たかとうならされる作品が多いのである。 風丸良彦氏の『村上春樹短篇再読』は村上の『若い読者のための短編小説案内』の向こうを張って書かれたで、15の章からなり、原則として村上春樹の一つの短編をとりあげ、一つのポイントに絞りこんだ読みをおこなっている。『若い読者のための短編小説案内』は大学の講義から生まれたが、書も「あとがき」に「大学の授業を想定し」と断り書きがあるように、

    文芸評論家・加藤弘一の書評ブログ : 『村上春樹短篇再読』 風丸良彦 (みすず書房)/『越境する「僕」』 風丸良彦 (試論社)
  • 書評空間:キノベス!2007

    年末恒例の「キノベス」。 '06年10月~'07年9月の新刊を対象に、紀伊國屋書店全社員に向け、“これぞと思う一冊”アンケートを実施。 550件の応募の中から、自他共に認める好きのスタッフ十数名による選考を経て、“紀伊國屋書店が選ぶ2007年のベスト30” が決定しました。 私たちがおすすめする30点を発表します! →bookwebで購入 (新潮社/税込1,575円) 叫びそうになった。しかし、喉の奥で詰まった。涙が浮かんだ。でも、流れ落ちはしなかった。そんな驚愕とやるせなさ。青空の下、誰のために駆け抜け、何のためにペダルに力を込めるのか。犠牲という存在に、それを乗り越えてゆくということに私たちは何かを感じずにいられない。 〔町店・酒井和美〕 何が起こったのかわからなかった。ラストに向かう手前、全ての真相、真意がわかった途端に、涙があふれ出た。読み返しながらも、泣きやむことが出来ず、か

  • 『ぼくの血となり肉となった五〇〇冊 そして血にも肉にもならなかった一〇〇冊』 立花隆 (文藝春秋) : 文芸評論家・加藤弘一の書評ブログ

    →紀伊國屋書店で購入 立花隆は週刊文春に五週間に一度「私の読書日記」を執筆し、五年おきに「読書日記」をまとめたを出版している。最初が『ぼくはこんなを読んできた』、次が『ぼくが読んだ面白い・ダメな』で、今回のは三冊目にあたる。 いずれのも後半が書評、前半は書き下ろしの読書論という構成だが、今回の前半部分は担当編集者との対談の体裁をとっている。立花の書庫兼仕事場であるネコビル(『ぼくはこんなを読んできた』参照)を案内しながら、一生のうちで一番勉強した無名時代に読んだを紹介していく趣向だ。 前の二冊の読書論もそれぞれおもしろかったが、今回はさらにおもしろい。対談なので話が思いもかけない方向に転がっていき、だけではなく立花の波瀾万丈の前半生や女性遍歴、取材の裏話や雑誌ジャーナリズムの実情がざっくばらんにに語られているのだ。 立花は文藝春秋社に入社後、「週刊文春」に配属され記者を二

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  • 『ソラリス』 スタニスワフ・レム (国書刊行会) : 文芸評論家・加藤弘一の書評ブログ

    →紀伊國屋書店で購入 スタニスワフ・レムの『ソラリス』はSFのみならず、20世紀文学の古典といっていいが、沼野充義氏によるポーランド語原著からのはじめての直接訳が2004年に国書刊行会の「レム・コレクション」の一冊として出版された。 この作品がはじめて日語になったのは1965年のことだった。早川SFシリーズから出た飯田規和訳で、『ソラリスの陽のもとに』という題名で親しまれた。わたし自身、飯田訳によってこの作品を知った。日語としてこなれた文学性ゆたかな訳文で、現在も文庫で入手可能だが、ロシア語からの重訳という根的な問題があった。 飯田訳が底としたロシア語訳にかなり欠文があるという話はSFファンの間では早くからささやかれていたが、原著がポーランド語という容易に接近できない言語だったために、しだいに尾鰭がついていった。タルコフスキーの映画が公開された頃には原著は邦訳の倍以上の長さがあると

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  • 『大失敗』 スタニスワフ・レム (国書刊行会) : 文芸評論家・加藤弘一の書評ブログ

    →紀伊國屋書店で購入 昨年亡くなったレムの最後の長編小説である。1986年に発表されていたが、原著出版21年たった今年、邦訳がやっと出た。 後期レムはメタ・フィクションに傾いていたが、この作品はばりばりのハードSFであり、あふれんばかりのアイデアを盛りこんでいる。 最初の章ではタイタンに着陸した宇宙飛行士が孤立した鉱山を救うために、モビルスーツに乗りこんで雪原を一人疾駆するが、間欠泉地帯で事故に遭い、あえなく死んでしまう。繁茂する樹木のように降り積もっていく雪の描写が幻想的だ。並のSF作家だったら、この章の材料だけで長編を一冊書くところだ。 次の章では舞台は恒星間宇宙船に移り、一度死んだ宇宙飛行士が蘇生術を受けて甦える。宇宙船はタイタンの軌道上で建造され、他の文明を探す旅に出るが、太陽系脱出速度に加速する際にはタイタンを燃やしてブースターにしている。このあたりの技術考証はレムである。 冷凍

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  • 『高い城・文学エッセイ』 スタニスワフ・レム (国書刊行会) : 文芸評論家・加藤弘一の書評ブログ

    →紀伊國屋書店で購入 レムの自伝『高い城』に10編のエッセイをくわえたで、「レム・コレクション」独自の編集である。 まず『高い城』だが、自伝といってもギムナジュウムまでで、普通の自伝を期待すると肩すかしをくらわされる(普通の自伝を読みたい人にはエッセイ編におさめられている「偶然と秩序の間で」が用意されている)。 しかも、時代的背景はいっさい無視して、もっぱらオモチャ中心に子供時代の思い出を語っているのである。科学者にして強靭な思索家というレムのイメージからはかけ離れた内容だが、分解魔として物に固着するあたり、レムらしいといえばいえる。 物に固着した書き方はナボコフの自伝『記憶よ、語れ』に一脈通じるところがある。両者とも裕福な家庭に生まれ、ハイカラな物に囲まれて育った点が共通する。 裕福とはいっても、レムの父親は耳鼻咽喉科の町医者であり、家も六部屋のアパートメントで、ナボコフのような大邸宅

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  • 『世界は村上春樹をどう読むか』 国際交流基金:企画/柴田元幸・沼野充義・藤井省三・四方田犬彦:編 (文藝春秋) : 文芸評論家・加藤弘一の書評ブログ

    →紀伊國屋書店で購入 国際交流基金は2006年3月に、世界16ヶ国から村上春樹の翻訳者19名を招いて、「村上春樹をめぐる冒険―世界は村上文学をどう読むか」というシンポジュウムとワークショップをおこなったが、書はその記録である。 シンポジュウムというと難しそうだが、村上春樹という神輿をかついでワッショイワッショイやっているお祭りである。神輿の担ぎ手が国際的であり、しかも女性が多いところが村上春樹的だ。村上春樹人が出てきていないという点もすこぶる村上春樹的である。 参加者はヨーロッパが多いが、の売行は東アジアが飛びぬけて多いようだ。人口が多いこともあるが、1980年代から紹介が進んでいることも大きいだろう。最大の市場である中国語圏からは中国台湾、香港にくわえて、マレーシアの華人と四人が来日している。 村上春樹が世界的なブームになっていると聞くと、最初から売れていたような印象を受けるが、

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  • 『ハルキ・ムラカミと言葉の音楽』 ルービン (新潮社) : 文芸評論家・加藤弘一の書評ブログ

    →紀伊國屋書店で購入 『ねじまき鳥クロニクル』の英訳者であり、『世界は村上春樹をどう読むか』にも参加しているジェイ・ルービン氏による格的な村上春樹論である。表題は軽めだが、中味はオーソドックスな伝記批評であり、アメリカの文学研究の水準で書かれている。 日では夥しい村上春樹が出ているが、その多くはマニアックな蘊蓄であったり、コジツケだらけの謎解きであったりして、最後まで読みとおせるものはあまりない。書は数少ないまっとうな村上春樹研究書の一冊であり、もし村上春樹で卒論を書くつもりなら、このは絶対に外すことができない。 伝記については、作家として成功して以降について、特に村上の海外生活について、類書にはない事実を伝えてくれている。村上人と個人的親交があることはもちろんだが、アメリカの大学人として日ではわかりにくいアメリカの大学事情に通じている点も見のがせない。 書でもう一つ見

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  • 『村上春樹のなかの中国』 藤井省三 (朝日選書) : 文芸評論家・加藤弘一の書評ブログ

    →紀伊國屋書店で購入 著者の藤井省三氏は中国語圏の現代文学を専門とする研究者で、『世界は村上春樹をどう読むか』の編者の一人でもある。現在、中国語圏の日文学者とともに東アジアにおける村上春樹受容を共同研究しているということで、その成果の一端は同書でふれられていたが、もっと知りたいと思っていたところに書が出た。 書は六章立てだが、おおよそ二つの部分にわかれる。村上春樹のなかの中国を論じた第一章と第六章、、中国語圏のなかの村上春樹を論じた第二章から第五章である。 村上春樹が日の近代史、中でも中国侵略の過去にこだわりつづけていることはつとに指摘されていることで、わたし自身、「ムラカミ、ムラカミ」(「群像」2000年12月号)という試論でふれたことがある。 著者は魯迅の「阿Q正伝」と「藤野先生」を光源に、初期三部作に一貫して登場する三人のうち、ジェイが昭和初年生まれの中国人であり、最初の短編

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  • 文芸評論家・加藤弘一の書評ブログ

    加藤弘一 (かとう・こういち) 文芸評論家 1954年埼玉県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。文芸評論家。現在、東海大学文学部文芸創作科講師。 石川淳と安部公房に傾倒し、目下、安部公房論を準備している。 1995年から、イ ンターネットで文芸サイト「ほら貝」を主宰。 http://www.horagai.com 著書に『石川淳』(筑摩書房)、『電脳社会の日語』(文春新書)、『図解雑学 文字コード』(ナツメ社)がある。 →紀伊國屋ウェブストアで購入 これも2012年に出た未来予測である。個人が書いているだけに今回とりあげた三冊の中では読物として一番面白かったが(翻訳も一番こなれている)、バイアスも大きそうである。 著者のヨルゲン・ランダースは物理学者だったが、1972年に出た未来予測の嚆矢というべき『成長の限界 ローマ・クラブ「人類の危機」レポート』のコンピュータ・シミュレーションを担当

  • 書評空間:キノベス!2005

    →bookwebで購入 (角川書店/1,785円/4048736116) 「やはり活動家・上原一郎は只者ではなかった!」息子の二郎ならずともそう叫びたくなる父の破天荒ぶりには脱帽する。だがラストシーンは「やはり父・上原一郎は偉大だった」と言わしめるくらいの男気と家族愛が強く私の胸を打ちつけた。 【吉田 稔・新宿南店】 「父は元過激派だ。」それが自分の父親だったら?そんなのは絶対にイヤだ!でも友達の父親だったらすごくイイ!東京、そして西表島を舞台に友情と家族愛を綴りつつ、著者お得意のドタバタ(喜!?)劇も健在。読後に古い友人に手紙でも書こうかと思わせる一冊。 【森 弘光・西神店】 キノベス! 2005 トップページへ →bookwebで購入 →bookwebで購入 (扶桑社/1,575円/4594049664) 何の為に生きるのか?愛する為に生きている。どこにでもいるフツーのオカンの話です。

  • 書評空間:キノベス!2006

    年末恒例の「キノベス」。 '05年9月〜'06年9月の新刊を対象に、紀伊國屋書店全社員に向け、“これぞと思う一冊”アンケートを実施。 600件の応募の中から、自他共に認める好きのスタッフ十数名による選考を経て、“紀伊國屋書店が選ぶ2006年のベスト30” が決定しました。 私たちがおすすめする30点+番外編11点を発表します! →bookwebで購入 (早川書房/税込1,890円) 読み終えて、書店員としてこのをどう伝えればいいのだろう、と思った。端正で、後書きにもあるとおり抑制の利いた文章。しかし語られる物語は、なんとも苛烈で、想いに満ちている。主人公の職業「介護人」とは何かは、あえて言うまい。このような職業を、世界を、物語を産み出されては我々にはそれを味わうしかないのではないか。 (朝加昌良・神戸店) 打ちのめされた。ラスト30ページの重さと言ったらない。明かされる残酷な真実。「特

  • 書評空間:高山宏の読んで生き、書いて死ぬ

    高山宏 (たかやま・ひろし) 1947(昭22)年生まれ。1974年東京大学大学院人文科学研究科修士。批評家。翻訳家。 2008年4月より明治大学国際日学部教授。長年、無目的・快楽的に蓄積してきた知識の整理と、発信型カリキュラムへの編成・伝習という、なにやら明治啓蒙家的な意欲が湧くのも、「明治」へ行ったせい? 5月24日(土)新学部開設記念講演会で喋る。来れよ。 また、4~8月の第2土曜日・15時~16時半・稲城市地域振興プラザ会議室にて、「江戸の美術を新しく観る!」開講中。照会・申込はいなぎICカレッジまで。 やっと十年待望のまとまった暇がとれたところで、執筆・翻訳に戻る。乞う御期待。 2008年6月に『新装版・アリス狩り』『アリスに驚け』(青土社)刊行予定。翻訳はS.シャーマ『レンブラントの目』(河出書房新社)、B・M・スタフォード『実体への旅』『象徴と神話』(産業図書)などを予定。