→紀伊國屋書店で購入 「情緒不安定と詩」 このところ、ちょっとした詩のブームのようだ。一部の詩集は書店のいわゆる「陽の当たる場所」におかれるようになった。今まで何とも思わなかったものが、何かのきっかけで急にひりひりと感じられるということはたしかにある。こちらが情緒不安定になると、急にある種の言葉がおいしく感じられるのだ。 詩の言葉で、情緒は昂進する。詩で、情緒的になりたい欲のようなものが満たされる。でも、そうした「情緒」や「不安定」は詩が読まれる前から用意されてあったものなのかもしれない。それでいいのかなあ、何か違わないかなあ、という気もする。 そんなことを考えているときに、おもしろい詩集に出会った。荒木時彦『sketches』である。書店では依然として「陽の当たらない場所」にひっそりと置いてあった。一頁にひとつの断章という体裁で、10文字にも足りないごく短いものから、原稿用紙一枚分くらい