<1>太陽がいっぱい(ハイスミス著/現在手に入るのは、佐宗鈴夫訳/河出文庫/903円) <2>見知らぬ乗客(ハイスミス著、青田勝訳/角川文庫/820円) <3>孤独の街角(ハイスミス著、榊優子訳/扶桑社ミステリー/品切れ) パトリシア・ハイスミスの翻訳を出せ、と私がしつこく書いたのは二十年ほど前か。 そのせいではなく、ある作品が日本でその年の人気一位になったので、一時的に人気が上り、ほぼ全作品が、角川文庫、河出文庫、扶桑社ミステリーと三つの文庫でならび、単行本も出た。 日本でハイスミス女史が有名なのは、ルネ・クレマン監督の「太陽がいっぱい」の原作者としてであり、アラン・ドロン、モーリス・ロネ、マリー・ラフォレの美男美女が複雑にからむストーリーとラストの衝撃で一九六〇年度の話題をさらった。 アンリ・ドカエの撮影もすごかったが、魚市場のシーンで流れるニーノ・ロータの音楽がすばらしく、パトリシア