膨大なデータや資料をもとにして、日本の現状を提示している。水道民営化の問題点などは、たいへんよく調査分析されている。ただ、若干過剰とも思える表現が散見されるのが気になった。 たとえば衰退する日本漁業では大規模化や株式会社化などが「官」の側から提案されているが、著者は「企業が守るのは、海でも地元でもなく、『株主』」「企業が自己都合で撤退し地方経済が崩れても、誰も責任を取ってなどくれない」と書く。労働基準監督署の業務を社会保険労務士(社労士)に民間委託する政府方針には「普段企業を守る立場の社労士が労働者の相談にのって、どれほど親身になれるだろう?」。 本書に通底しているのは、金もうけ的なものへの反発である。規制改革推進会議や国家戦略特区など、政府が推し進める規制緩和政策への嫌悪も感じ取れる。それはそれで理解できるのだが、現在の日本は内外環境の変化にどう対応するかということが、あらゆる分野で求め