★名波弘彰他編『植民地主義とアジアの表象』(筑波大学文化批評研究会、一九九九)に収録された論文の「原稿」ですので、多少表現に異動があります。しばらくご了承願います。 日本の『闇の奥』 齋藤 一 (筑波大学文芸・言語学系助手) ナイジェリアの作家チヌーア・アチュベ以来様々な批判はあるにせよ、ジョゼフ・コンラッドの『闇の奥』(Joseph Conrad, 'Heart of Darkness', 1899)は優れた西欧植民地主義批判として読まれる価値はある。しかし、当たり前のことだが、『闇の奥』を西欧植民地主義批判として読むこと自体が必然的に植民地主義批判として機能するわけではない。この小説を優れた西欧植民地主義批判として賛美する植民地主義者は存在し得るからだ。『“よろしく彼等野獣共を根絶せよ”』という優れた旅行記兼植民地主義/ホロコースト批判を書いた、スウェーデンの作家スヴェン・リンドクヴィ