棚部秀行*1「戦争の痛み書き続ける」『毎日新聞』2021年10月10日 台湾の作家、呉明益氏*2へのインタヴュー。 『眠りの航路』は日本を舞台にしている部分が多い作品です。(略)父が使っていた机の引き出しなどにあった遺品のなかで一番多かったのが、神奈川の海軍工廠で少年工をしていた時の写真でした。父は寡黙な人で、生きているときには写真を誰にも見せていなかった。父のその写真を見つけたことが、執筆の大きなきっかけになっています。 中盤まで書き終えたとき、私は父だけではなく、父の世代全体の人たちと対話しているように感じました。いろんな人へのインタビューも行ったので、集団的な記憶が作品になったと感じています。あの苦しみを分かち合えない、あの時代から抜け出せなかった人たちがたくさんいたんだと思います。今回「夢」という方法を使って、この世代が経験した痛みを共有できるかもしれないと考えました。たとえ1万分