呼び寄せる島 又吉栄喜さん[掲載]2008年3月23日[文・写真]中村真理子又吉栄喜さん(60)■人生を島という器に込め リゾートホテルのすぐ裏に祈りの場所がひっそりとある。手を合わせる人がいる。現在と過去が融合する沖縄。又吉栄喜(またよし・えいき)さんは浦添生まれ。「沖縄にはいろんなものがつまっている。子供の頃そばにあったのが米軍基地、戦時中の避難壕(ごう)、浦添グスク、サンゴ礁の海。自分の中に数百年の歴史があるように感じる」 96年に「豚の報い」で芥川賞を受賞した。どの作品にも少年時代の原風景がとけ込んでいる。「身近な体験が僕の小説のタネ」。沖縄から生まれたそのタネは神秘性を帯びて物語に不思議な世界観を与える。長編小説『呼び寄せる島』も沖縄らしい豊かな自然の残る離島が舞台だ。 主人公は脚本家志望の青年。生まれ故郷の島に戻り、民宿を始める。本心は宿泊客から奇人を探して脚本のモデルにしよう